第336回「二極化する新入社員の未来」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第335回「給与アップ交渉代行サービス」

 第336回「二極化する新入社員の未来」 


安田

パナソニック、富士通がジョブ型採用に移行していますね。移行すると同時に初任給を見直そうという動きで。

石塚

初任給が一律なのは「おかしいんじゃないか」っていうね。当然のことですよ。人によって経験も能力も違うんだから。

安田

初任給が横並びという時代は終わりますか?

石塚

完全には終わらないけど半々ぐらいになるんじゃないかな。スキルが見込める人は個別設定にして、そうじゃない何のスキルもない人は23万5000円スタートでお願いしますって。

安田

スキルゼロの新卒でも初任給30万が当たり前になると言われてますけど。

石塚

異常ですよ。今はポテンシャル採用もそこに入っちゃってるから。

安田

いずれは2つに分かれていくと。

石塚

そう思います。学生諸君にちゃんと聞いてほしいんですけど、これ20年後には立場が逆になるから。その時の優秀な新卒を採るためにあなたのポジションが犠牲になりますよって。

安田

ジョブ型雇用では報酬が高いぶん要求も厳しくなるでしょうし。解雇規制も緩やかになってきてますよね。

石塚

そういう事例が増えてきましたね。ただこういう人たちって、どこ行っても食っていけるスキルが身に付きやすいし、フリーランスになっても成功しやすいんじゃないかな。

安田

人によるでしょうけどね。

石塚

人によるでしょうけど。

安田

いずれにしても初任給は2局化するという予想ですね。人によっては40万円くらい出す会社もあるけど、普通のスキルの人は23〜24万くらいに落ち着いていく。

石塚

それくらいなら「採ってから教えようか」って会社もありますから。

安田

スキルではなく持っている素質だけでも高くなったりしますか?

石塚

あり得るでしょうね。プロ野球を見ても新人選手の年俸は全員違うじゃないですか。ドラフト一位から育成まであるわけですから。

安田

素質もスキルもない人は育成枠みたいなものですか。

石塚

そう。背番号も3桁だし、給料も安いっていう。23万とか正直もらいすぎなぐらいで。だって何にもしないんですから。

安田

ほんとですよね。逆にピカイチの才能であれば初任給50万円もあり得ますか?

石塚

それこそ初任給から1000万、2000万出してもいいんじゃないかなって僕は思います。

安田

自分で会社を作って成功させたような人だったら、それぐらいの価値はありますよね。

石塚

だって大企業なんて大したことないおじさんでも1000万もらってるわけで。社歴がただ長いってだけで。

安田

たとえば高専卒とかはどうなるんでしょう?今は大卒より給料が安いわけですよ。だけど大卒よりよほど使える即戦力の高専っていますよね。

石塚

いますね。ただそういう人たちは今で採用するのがすごく難しいです。ものすごい求人倍率なんで。初任給が高い会社もいっぱいありますよ。

安田

大卒と逆転することもありますか?

石塚

もう既に起こりつつありますね。大卒も専門卒も高専も2極化していて、即戦力で通用するスキルを身につけている人はかなり高いです。

安田

なるほど。そこも2極化なんですね。

石塚

当然です。声を大にして言いたいのは、いわゆるMARCH、関関同立クラスの、いわゆる一流大学の学生。ここに合格したら「やった。これでもう大丈夫だ」って思ってるじゃないですか。

安田

学歴だけで「そこそこいい会社」に入れてしまう学校ですよね。

石塚

そう。だけど文系はこれから行き場がなくなる。

安田

え!行き場がなくなる?

石塚

だってホワイトカラーがどんどん要らなくなっていくし、どうせ大学で勉強なんてしてないし。

安田

せっかくいい大学に入って高い学費も払っているのに、見返りがないと。

石塚

そう。だからさっさと見切りつけて、大学なんか中退して、現業とか技術職に就職した方が食える。そっちの方が給料も高いから。

安田

中退でもOKなんですか?

石塚

もう関係なくなるでしょうね。実は中退で成功した人ってたくさんいるんですよ。大橋巨泉とかタモリとか野坂昭如とか永六輔とか。みんな早大中退ですよ。

安田

そうなんですね。

石塚

これからの時代はもう卒業なんて関係なくなる。ある意味夢のある時代ですよ。

安田

逆に、いい大学を出たからといって、食える保証はないと。

石塚

そう。だから受験勉強なんかしてる場合じゃないよって、高校生に言いたい。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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