第340回「サイゼリヤの凄さについて」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第339回「早期退職は実力を見極めてから」

 第340回「サイゼリヤの凄さについて」 


安田

サイゼリヤが過去最高益ですって。

石塚

サイゼリヤはメニューを絞って「低価格でおいしい商品」を出し続けるてるんですよ。だからお客さんの評判も良くって。

安田

お客さんの中には「メニューが減りすぎだ」っていう人もいるみたいです。

石塚

コストアップの中でこの価格を維持してくれるんだから、企業努力として拍手すべきですよ。

安田

サイゼリヤはこの先も安さに振り切って勝負していくんでしょうか。

石塚

もちろんそうでしょう。サイゼリヤはそのポジションの勝者で、他社が脅かすのは難しいぐらいレベルが高くて手のかかることやってます。

安田

「値段を上げてもいいからメニュー数や味を維持してほしかった」という人もいますけど。

石塚

実際そういう戦略を取ってるファミレスは多いんですが、業績は軒並み良くないですね。サイゼリヤのように思いっきり安い路線で行くか、ロイヤルホストみたいに「高いけど、その分ファミレスの中で飛び抜けておいしい」という方向に行くか。

安田

中途半端はもう無理だと。

石塚

中間は生き残れないでしょうね。低価格で面を取る戦略って大企業にしかできないわけですよ。サイゼリヤは飲食のユニクロみたいな会社なわけですよ。

安田

なるほど。

石塚

サイゼリヤがすごいのは原材料確保のために現地で工場を作って製造までやってること。ただ単に料理を提供するだけじゃなくメーカー機能も取り込み始めてる。

安田

実は利益の大半を海外で稼いでいるらしいですね。

石塚

これだけの価格の安さでこの味でっていうと、海外では人気出ますよ。ワインが100円ですからね。びっくりしますよ。

安田

え!ワイン100円なんですか?

石塚

サイゼリヤは日本で1番イタリア産ワインを買い付けてる会社なんです。

安田

なんと。

石塚

もう半端ない量を買うからそれが実現できる。つまり大企業だからこんなビジネスができるわけです。

安田

中小企業は絶対に真似しちゃいけないですね。

石塚

規模が伴わないと絶対に無理ですね。ちなみにサイゼリヤは海外が利益のメインではあるんですが、国内店舗も2000店まで増やす計画です。今1000店舗ちょいらしいですけど。

安田

質と価格を維持しようと思ったら規模を拡大していくほかないと。ユニクロと同じですね。

石塚

もうこれは避けて通れないってことですよ。

安田

薄利多売を徹底するってことですか。

石塚

その通りです。だからサイゼリヤって根強いファンがいるんですよ。2人でランチ食べても1000円でいけたりするし。

安田

手取り収入が減ってる日本人には嬉しいですよね。

石塚

そういう層が日本人には多いじゃないですか。なかなか支出が厳しいけど「たまにはイタリアンを食べたいよね」っていう時にサイゼリヤに行く。そこのマーケットの1番手ですよ。

安田

サイゼリヤってもっと日常使いする店だと思ってました。毎日行ってご飯を食べるとか。ミーティングでお茶する時とか。日常の中にあるファミレスって感じ。

石塚

安田さんは都心に住んでるからだと思います。郊外のサイゼリヤはそんな感じじゃないですよ。

安田

そうなんですか。

石塚

郊外のサイゼリヤはハレの日にも行く場所です。それなりに美味しいし、ドリンクバーも色々あるし、絶妙なバランス感ですよ。

安田

これだけファン層が定着してるってことは、値段の割には美味しいってことでしょうね。

石塚

そう。サイゼリヤの創業者曰く「美味しいから売れるんじゃない。うちの店は売れてるから美味しいんです」っていう。

安田

なるほど。まさにユニクロと同じですね。これを維持し続けるためにはユニクロと同じように世界のサイゼリヤを目指すしかない。

石塚

おっしゃる通り。

安田

世界中で「イタリアンを安く美味しく食べるんだったらサイゼリヤ」と言われるように。

石塚

そこを狙ってるでしょうね。実は恐ろしい会社なんですよサイゼリヤは。

安田

聞けば聞くほど凄いですね。

石塚

東京理科大学を中退した二十歳そこそこの若者がレストランを始めて。それが40年でこんなになるってのは本当すごいですよ。

安田

最初からここを目指していたんでしょうか。

石塚

僕はそう思います。「このマーケットの王者になる」って決めてたんでしょうね。サイゼリヤはそのためにあらゆる工夫をしてる。

安田

もはや国内にライバルはいませんか?

石塚

ライバルになるとしたら別業態でしょうね。「コンビニで買ってくる」「業務スーパーで買って温めるだけ」という層。外食の最大の脅威って家でご飯を食べることなので。

安田

確かに。それに匹敵するぐらいの価格ですもんね。サイゼリヤって。

石塚

価格にものすごくこだわってるし、価格の割にはちょっと感動があったり、美味しさがあったり。飲食店には家ご飯にはない活気や楽しさもあるから。この勢いは続くと思います。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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