この対談について
国を動かす役人、官僚とは実際のところどんな人たちなのか。どんな仕事をし、どんなやりがいを、どんな辛さを感じるのか。そして、そんな特別な立場を捨て連続起業家となった理由とは?実は長年の安田佳生ファンだったという酒井秀夫さんの頭の中を探ります。
今までも何度か話に出た「首相公選制」について、今日は詳しく聞いていきたいと思うんですけど。
アメリカの大統領制のように、「国のトップは国民の直接投票で決めようよ」という考え方ですね。
そういう選択肢があってもいい気がするんですけどね。日本で実現する可能性はないんでしょうか?
うーん、まぁ、実現するには憲法改正が必要ですから。
政治家の3分の2が賛成しないといけないんでしたっけ。
衆参それぞれで3分の2以上の賛成を得ることが第一ステップで、それができたら国民投票に進んで、そこでさらに国民の2分の1の賛成を得る必要があります。
笑。ただ、首相公選制に近いようなことは、近い将来あるんじゃないかなって気はしますけど。
例えば自民党の総裁選挙も、昔は自民党内の一部の有力者が内々で決めていたわけです。でも今はちゃんと全国の党員で選挙をしますよね。
ああ、なるほど。党員に限定されてはいるけど、総理を直接選挙で選んでいると。
ええ。力がある人が新党を作れば、数年前の東京都知事選の小池百合子さんのように、都議会選挙の第一党を取れちゃったりもする。
確かに、そういう意味では知事選とかは今も公選制ですよね。その結果、芸能人が知事になったりもする。「首相公選制が実現したらビートたけしが総理大臣になる」なんて話もありましたけど。
可能性は否定できないですけどね。それこそウクライナはコメディアンが総理になったわけですから。
そうか、あり得ない話ではないと。
ええ。ただ大事なのは仮にビートたけしさんが総理になられたとして、やりたい政策があるかどうかですよね。何もなかったらたけしさんを動かしている人が事実上権限を持つことになるので。
なるほど。それだと今までとあまり変わらない気がしますね。
そうですね。だから芸能人が首相になったところで、その人が「俺は誰になんて言われようと核兵器のボタンを押すんだ!」みたいな超狂った人じゃない限り、現実は大して変わらない気がするんです。
それはそうなのかもしれません。でも、仮に大した変化がないとしても、国民が自分たちで国のトップを選ぶということを繰り返すことで、意識が育つ部分もあると思うんですよ。
それは仰るとおりです。実際、トップが変われば国は変わりますからね。地方だけでは変わらないことも、全国で一気に変えるとなればインパクトありますし。
そういう意味では、仮に政治家の3分の2が賛成して国民投票まで行ったら、賛成が過半数に達するような気もするんですけど。
ええ、大体のイシューで2分の1が取れると思います。
そうですよね。そうなるとそちらに進まないのは、首相公選制にしたくない政治家の方が多いってことなんですか?
ですよね。若手の議員さんに聞いたら、「私は賛成ですよ」って皆さん言うんです。それなのに議題にもあがらないのはなぜなんだろう……
確かに、言われてみればリアルにそういう議論になったことはないですね。
「自分が当選したら必ず首相公選制に一票入れる」と約束した人だけのネットワークを作って、それを掲げて選挙に臨んだらどうなんでしょう。「トップを国民の手で決めようよ」と言っているわけで、けっこう大きなインパクトがあると思うんですけど。
事実上の新党構想ですよね。維新の橋下さん時代にそういう感じのことをしてました。
そうですよね。なんで他の政党はそうしないんでしょう。
うーん、そこまで大きなインパクトだと思っていないのか……ただ、橋下さんぐらい力のある人が首相公選制を掲げたら、自民党は反対するかもしれませんね。負けちゃうから(笑)。
ああ、なるほど(笑)。要するに、首相公選制を導入するより、今まで通りのやり方の方が嬉しい人がいるわけだ。
そういう線で首相公選制が進まないというのはあるかもしれないですね。ちょっと話が逸れるんですけど、ある小説に「日本復活の日は愛子さまが天皇陛下になられて、芦田愛菜が総理大臣になる日だ」っていう話があって(笑)。
なるほど、面白いですね(笑)。
芦田愛菜さんにテレビで「総理は国民1人1人が選ぶ方がいいと思うんです」なんて話してもらって。
いいですねぇ。いやぁ、令和の卑弥呼ですよ(笑)。
ちゃんと若い子向けの政策をやりますって言っても、芦田愛菜さんが言えば、お年寄りも聞いてくれるんじゃないかと思いますし(笑)。
確かに。全年齢層に人気がありますからね。
それにずっと我々が言っている「若者に優しい政治」をしなきゃっていうスローガンにぴったりのイメージなので。
演技力も申し分ないわけで、各国の人々にもうまく自己アピールできますし、完璧ですね。その時代まで待とうかな(笑)。
それまで生きていたいですね(笑)。
対談している二人