第269回「ビッグモーターの最終章」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第268回「中国人が動かす日本の経済」

 第269回「ビッグモーターの最終章」 


安田

ビッグモーターへの繋ぎ融資が銀行に断られましたね。なんと90億円。

石塚

まあ当然でしょう。回収の見込みも立たないし。

安田

資金繰りが厳しいということで、現場には「これだけ売らないともう給料の補填はできない」って通達が来たそうです。

石塚

これは、かなりの社員が「まだ洗脳されてる」ってことの証ですよ。

安田

まだ洗脳されてますかね。

石塚

もっと辞めると思わなかったですか? まだ5分の4ぐらい残ってるじゃないですか。

安田

それは給料を補填してるからじゃないですか。売れていた時の給料をそのまま払い続けてるらしいですよ。

石塚

それが切れたら辞めるんだろうか。

安田

普通に考えたら辞めるでしょう。貰えるものはもらいつつ転職活動してますよ。

石塚

なるほど。まあ、それなら納得ですけど。

安田

8割の社員が残るほど洗脳が効いてるとは信じがたいです。

石塚

じゃあ安田さん説としては、金の切れ目が縁の切れ目だと。

安田

現場に送ったメールがこうやって表に出てくるわけで。洗脳が効いてない社員もいるという証拠ですよ。

石塚

それでも効き続けるのが洗脳だと僕は思うんですけどね。

安田

現実問題として、数字を上げる支店と上げない支店が極端に分かれているみたいです。

石塚

そこが洗脳の分かれ目かもしれませんね。

安田

興味本位で車検に出した人が「ひどい対応だった」と書き込んでました。お店もガラガラで、愛想も悪いって。洗脳が効いているかどうか分かりませんが、お客さんに対するサービス精神は全くないみたいです。

石塚

逆に呪縛が解けて、静かな復讐として「もらうものだけもらって、次が決まったらさっさと辞めるぜ」みたいな社員が大多数かもしれませんね。

安田

私はそっちが大多数だと思います。残るのはせいぜい3割ぐらいじゃないですか。逆に8割も残られたら困ると思う。整理解雇にお金がかかるし。

石塚

キャッシュだけはめちゃくちゃ持ってますからね、この会社。

安田

確かに400億円のキャッシュがあるそうです。だけどそのうち90億円が無くなりました。この先どんどん借り換えの時期が来るでしょうから、余裕はないと思いますよ。

石塚

会社になくても創業家が持ってるから。

安田

そんなに持ってますかね。

石塚

創業家は溜め込んでいるので。ただこれって保険金請求詐欺じゃないですか。

安田

ですよね。

石塚

もし正式に保険金詐欺として代表が逮捕されるようなことになったら、それはもう従業員の見限りも早いだろうし、この後は加速してくると思いますね。

安田

逮捕されようがされまいが厳しい気がしますけど。やっぱり銀行が資金を繋いでくれないと。上場企業じゃないし。

石塚

資金調達をどうするかでしょうね。

安田

風評を考えると銀行もお金を出せないと思うんですよ。ここまで有名になっちゃうと。

石塚

そうでしょうね。

安田

創業家もそんなにお金を貯め込んでいるのかどうか。上場していれば配当で貯まりますけど。非上場で税金払って残るお金なんて限られてると思いますけど。

石塚

まあ確かにね。何百億と手元に残そうと思ったら、その何倍もの報酬を取らないといけないわけだから。

安田

現実的にそんなの無理じゃないですか。

石塚

じゃあ安田さんの見立てでは、そんなに創業家は持っていないと。

安田

せいぜい数十億ってとこじゃないですか。

石塚

なるほど。そうすると1回の借り換えやったら終わりってことですね。

安田

自分たちで事業を続けていく気がなければ、もう身銭なんて切らないでしょう。

石塚

創業者は売ることを考えてるでしょうね。

安田

売れるんですかね。

石塚

投資ファンドを1回噛ませて、プロ経営者を連れてきて、綺麗にさせてからどっかに売却する形でしょう。

安田

だから外資のコンサル会社が入ってるわけですか。売却前提で。確かに外資はこういうの気にしないですもんね。

石塚

しないしない。要は金になればいいんだから。綺麗に消毒、殺菌して終わりですよ。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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