このコラムについて
小さなブルーオーシャン?
何だかよく分からないよ。ホントにそんなので商売が成り立つの?
と思っている方は多いのではないでしょうか。何を隠そう私もそのひとりでした。私は人一倍疑り深い人間なのです。そこで・・・私は徹底的に調べてみることにしました。小さなブルーオーシャンなんて本当にあるのか。どこに行けば見られるのか。どんな業種なら可能なのか。本当に儲かっているのか。小さなブルーオーシャン探求の中で私が見つけた答えらしきもの。それはきっとみなさんにとっても「何かのヒント」になるはずです。
第19回「合理化の真逆で全国50%のシェアを誇る中小企業の小さなブルーオーシャン」
最近は多くの人が自炊をしたり、テイクアウトを堪能したりしているようです。
私も料理が趣味なので、暇があると一日中、キッチンにいることがあります。
ところで、最近、スーパーやコンビニに行くとある食べ物が増えたように感じるのです。
それは…
太巻き!
子どもの頃、母に太巻きを食べたいというと、面倒だ、と言っていましたが…。
確かに自分で太巻きをつくろうとすると手間がかかる。
数年前から、関東でも節分に恵方巻きを食べるようになりましたが、
今のように、太巻きがある感じはしませんでした。
さらにバリエーションも豊富になった気がしますが…、私だけでしょうか?
全国シェア50%。黒子に徹する中小企業が太巻き業界を変えた!
今回、紹介する企業は大分県にある「株式会社吉田喜九州」さま。
“よしだききゅうしゅう“と読むそうです。
いまから25年前の1995年に、
大分県由布市という大分市街から車で30分のところに、
この吉田喜九州さまは設立をしたそうです。
京都の老舗玉子焼きメーカーからの暖簾分けで創業し、
その玉子焼き製造技術を受け継いだということで、
もともとは「玉子焼きメーカー」だった、ということですね。
その玉子焼きの製造技術を使って生み出した製品。
それが、現在、全国50%のシェアを誇る大ヒット。
巻芯
です。
なんじゃ、そりゃ?と思った人もいると思いますので、
少し解説すると、巻芯とは太巻きの芯、つまり、中に入る具材のこと。
薄焼きのタマゴに、カンピョウやデンブ、キュウリなどなどが包まれて、
一本にまとまっています。
これを、スーパーの店員さんや仕込む人たちが
酢飯の上に乗せ、野菜やそのほかの具材と一緒に巻くだけで、
太巻きが完成するという、超便利な業務用食べ物です。
全国展開する大手スーパーやホテルのビュッフェなどが
吉田喜九州からこの巻芯を購入し、全国シェアは実に50%以上になるそう。
小さなブルーオーシャンを生み出しているものは何なのか?
この巻芯に着目し、商品化した、というのも小さなブルーオーシャンなのかもしれませんが、今回、私が目をつけたのはこの巻芯の製造過程です。
この巻芯は「業務用食品」という部類です。
全国50%ものシェアを取っているわけですから、
出荷される本数(?)も多いでしょう。
合理化、効率化、工場での生産ライン…と考えがちなのですが、
吉田喜九州さんでは、なんと、全てが「手作業」です。
約20名の女性従業員の方々が超ハイスピードな手作業で
大量の巻芯を作っているというのです。
カニカマ、かんぴょうなどを一人ひとりが
手作業で、巻き簀に置かれた薄焼き玉子に丁寧に配置していくそうで…
巻き簀に、薄焼きのタマゴを敷く担当の方は、
束になった薄焼き玉子から1枚1枚取らなければならない。
そこで…
親指と人差し指の爪を伸ばしているとのこと!
あえて爪を長くし、
薄い、薄焼き玉子を掴みやすいようにしているんだそうです。
まるで、職人のよう!
吉田喜九州さんの男女比は2:8で圧倒的に女性が多い会社らしく、
働くママさんたちを応援したいという社長も
はっきりと「女性の活躍を応援します!」と宣言もしています。
女性の働き方でも、様々な工夫をしているようです。
どんなに手間がかかろうとも、
こうした女性の細やかな作業や丁寧な仕事が
小さなブルーオーシャンになっているのではないかと思うのです。
佐藤洋介(さとう ようすけ)
株式会社グロウスブレイン 代表取締役
大学(日本史専攻)を卒業後、人材コンサルティング会社に16年間勤務。ソフトウェア開発会社、採用業務アウトソーシング会社、フリーランスを経て、起業。
中小企業の人材採用、研修に携わる一方で、大学での講義、求職者向けイベント等での講演実績も多数。人間の本質、行動動機に興味関心が強い。
国家資格キャリアコンサルタント、エニアグラムファシリテーター、日本酒ナビゲーター。