地元国立大学を卒業後、父から引き継いだのは演歌が流れ日本人形が飾られたケーキ屋。そんなお店をいったいどのようにしてメディア取材の殺到する人気店へと変貌させたのかーー。株式会社モンテドールの代表取締役兼オーナーパティシエ・スギタマサユキさんの半生とお菓子作りにかける情熱を、安田佳生が深掘りします。
第26回 値上げは、経営者が独断で決めるべき?

前回は「値上げ」についてお話しましたね。それについて私が以前から疑問に思っていることがあって、それは「なぜ社員たちは値上げに反対するのか」ということです。

そうなんですよ。だから反対する意味がわからないんです。ちなみにスギタさんのお店では、社員さんから値上げを嫌がる声が上がったりはしませんか。

ふ〜む、やっぱりそうなんですねぇ。でもますます意味がわかりませんよ。値上げして失敗している会社ならまだしも、スギタさんのところは値上げをすることでこれだけ大きな成功をしているわけじゃないですか。

ああ、それもあると思います。実際僕たちにとっては、自分が作ったケーキやパンが残らず全部売れてくれるのが一番の喜びなので。もちろん僕は経営者でもあるので、利益のこともちゃんと考えないといけないわけですけど。

僕としてはとにかく「適正価格」で売りたいんですよ。それに必ずしも「安いから売れる」わけでもないと思っていて。実際自分がお客さんとしてお店に行った時は、「安いから買おう」ではなく、「美味しそうだから買おう」となりますし。

ああ、確かにそうかもしれない。実際パン屋さんを始めた頃は「高くしたら売れないかも」という感覚に囚われていたので。

いやいや、それはもう単純に「利益が出なかったから値上げせざるを得なかった」だけで(笑)。もう少し丁寧に言えば、「こんなに忙しく働いてるのに、全然利益が出ない。これはきっとやり方がおかしいんだ」って気づいたと言いますか。

はい。そして、値上げするんであれば、その分もっと品質を良くして、どんどん美味しくしていこうと思ったんです。結果的に売り上げもアップしたし、社員にも利益を還元できた。そこに大きな充実感がありましたね。

いやぁ、素晴らしいですね。私も多くの経営者さんに「値上げしましょう」って提案するんですけど、多くの方がその場では「わかりました、やります!」っていうのに、結局「やっぱりやめます」っていう方が多くて。

もちろん、オーナーシェフのお店と一般企業とでは感覚が違うのかもしれませんが、社長は社員の言うことを聞いたり社員を説得したりするんではなくて、「これはこの価格で出すんだ」って決めてしまうべきだと思います。

ええ。だからこそ、経営者が「値上げをする」ことをしっかり決めて示していくしか方法はないのかな、と。そうすることで生産性が高まって、給料も上がるんだよ、ということをしっかり伝えてあげる。そうすれば納得感も出てくると思います。
対談している二人
スギタ マサユキ
株式会社モンテドール 代表取締役
1979年生まれ、広島県広島市出身。幼少期より「家業である洋菓子店を継ぐ!」と豪語していたが、一転して大学に進学することを決意。その後再び継ぐことを決め修行から戻って来るも、先代のケーキ屋を壊して新しくケーキ屋をつくってしまう。株式会社モンテドール代表取締役。現在は広島県広島市にて、洋菓子店「Harvest time 」、パン屋「sugita bakery」の二店舗を展開。オーナーパティシエとして、日々の製造や商品開発に奮闘中。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。