この対談について
株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。
安田
突然ですが鈴木さん、日本一社長が多く住んでいる場所ってどこだと思います?
鈴木
日本一社長が多い場所? うーん…東京のどこかの区なんじゃないですか?
安田
港区なんですって。なんと区民の6人に1人が社長らしいですよ。
鈴木
え、そんなに?! まあ確かに言われてみれば、東京の港区って成功者が住んでいるイメージがあるかもしれない(笑)。
安田
笑。でもね、そもそも社長って誰でもなれるじゃないですか。特別な資格もいらないし、誰かの許可がいるわけでもない。本人が希望さえすれば、明日からだって「社長」になれるんですよ。
鈴木
確かにそうですね(笑)。
安田
本当は資格が必要なんじゃないかと思うポジションはいろいろありますが、中でも楽に手に入るのは「社長」と「人の親」だと思っていまして。どちらも相応の能力がないとやっちゃいけないポジションのはずなのに、誰でも簡単になれちゃうという。
鈴木
まあそう言われればそうですけど(笑)。ただどちらも、なった後が大変ですよ。
安田
同感です(笑)。でも日本人って「肩書」が好きじゃないですか。例えば「大卒」という肩書をもらうために、高い学費を払ってでも多くの人が大学に行くわけです。
鈴木
肩書を買おうとしているようなもんですね(笑)。
安田
まさに仰るとおりです。実際大学に行くにはすごくお金がかかる。最低でも数百万、下手したら1000万円を超えることもあるわけです。ところが「社長」という肩書を得るには、ほとんどお金がかからない。
鈴木
あぁ、確かに!
安田
だから私は「持ってて損がない肩書No.1=株式会社の代表取締役」だと思うんですよ。
安田
でしょ? かかるとしてもせいぜい決算費用くらい。「大卒」の肩書を買う費用に比べたら微々たるものですよ。それなのになぜ日本人は「社長」になろうとしないんでしょうね?
鈴木
それはやっぱり「大変そう」って思っているからじゃないですか?
安田
でも多くの日本人は何百万円も借金して「大卒」の肩書を得ているのに、リスクが大きそうだからと株式会社1つ立ち上げられないのって、不思議でしょうがないんですよ。
鈴木
大学だと「大学在学期間」の様子がある程度想像できるからじゃないですかね。カリキュラムも決まっているし、数年後にどうなっているかの予測が立てやすいといいますか。でも社長になってしまうと、不確定要素だらけで数年後どころか数ヶ月後のことすらわからないわけで。
安田
なるほど。まぁ私は別に、必ずしも社長になったなら相応に大きな事業をするべき、と言っているわけじゃないんです。なんなら、会社員として働きながら副業で社長業をやったっていい。だから大企業で出世コースを歩めるエリート以外は、皆とりあえず社長になっておけばいいのになと。
鈴木
とりあえず社長…(笑)。そういえば以前、安田さんはご自分のお子さんに会社をプレゼントするって仰っていませんでしたっけ?
安田
そうなんですよ。子どもが10歳になったら、子どもを社長にした会社を作ってあげようかなと考えています。何の会社かとか資本金をいくらにするとか細かいことはまだ考えていませんが、とりあえず作って渡してみようかな、と。
鈴木
面白いことを考えられますよね(笑)。でも確かに所得税とか社会保険料とか、「法人」を持っていることでいろいろとリアルに学べそうです。
安田
そうそう。しかも、何か面白い商売を思いつくまで何もしなくたっていい。それでいて「社長」は名乗れるわけで、こんな得なことはないと思うんですけど(笑)。
鈴木
確かに。よくわからん大学の「大卒」という肩書を得るよりも、よっぽど価値が高いかもしれない(笑)。
安田
でしょう? ちなみに私は『安田佳生事務所』という株式会社をやっているんですが、日本人全員、自分の名前がついた株式会社を持てばいいと思っているんです。それでサラリーマンとして働くのではなく、自分の会社として就職先と契約し、売上にしちゃえばいいんじゃないかなと。
鈴木
なるほどなるほど。そうすればいろんなことが経費で落ちますね。
安田
そうそう。会社員のままだと、せっかく出世して給料が増えても、税金や社会保険料も高くなってしまう。でも自分の会社だったら、あえて給料は抑えて経費としてやっていくこともできるので。
鈴木
確かに、サラリーマンよりは格段にできることが増えますよね。税金対策もできるし。
安田
そうそう。こんなにいいことづくめなのに、なぜ社長になる人が増えないんでしょうねぇ。
鈴木
でももし日本人全員がサラリーマンじゃなく社長になってしまったら、国の税収もガクッと減りそうですよね。そうなるときっと、国も法律を変えてきちゃうんじゃないかな(笑)。
安田
あぁ確かに…。ということは、あんまり社長は増やさない方が、今社長をやっている我々にとっては好都合なのかもしれないですね(笑)。
鈴木
そうそう(笑)。世の中、知っている人だけが得するようにできていますから(笑)。
対談している二人

鈴木 哲馬(すずき てつま)
株式会社濃飛葬祭 代表取締役
株式会社濃飛葬祭(本社:岐阜県美濃加茂市)代表取締役。昭和58年創業。現在は7つの自社式場を運営。
