泉一也の『日本人の取扱説明書』第102回「男女の国」

泉一也の『日本人の取扱説明書』第102回「男女の国」
著者:泉一也

このコラムについて

日本でビジネスを行う。それは「日本人相手に物やサービスを売る」という事。日本人を知らずして、この国でのビジネスは成功しません。知ってそうで、みんな知らない、日本人のこと。歴史を読み解き、科学を駆使し、日本人とは何か?を私、泉一也が解き明かします。

A ねえ、これからどうやって私たち生きていこうかしら。
B そうだな。私も全くどうしたものか、わからんのよ。

これを、英語に訳しなさい。

グーグル先生、お願いします。

A Hey, How can we live from now on?
B Well, I don’t even know what’s going on.

さすがグーグル先生。素晴らしい翻訳です。
でも、大きなミスがあります。

日本語ではAとBどちらが女性か男性か(女性的か男性的か)わかるのですが、翻訳したものではちっともわからないのです。

日本語の特徴に気づいただろう。男性的・女性的表現があるのは日本語の特徴であり、他の言語にはほとんどないそうだ。表現できる世界が多いということは、それだけ日本語が表現力豊かな言語であるということ。

ビジネスでは英語が共通言語になりつつあるが、それは効率・競争・目標達成といった男性的な部分が多いので、英語の方がスムーズにいく。逆に日本語の豊かさはビジネスでは利用価値が少なく、邪魔な存在となりやすい。「いつもお世話になります」は本来ビジネスに不要である。

小さな子供の頃から英語を教えるというのは、ビジネス戦士への道を歩ませていることになるが、親は氣づいていない。これからの時代は英語がないと始まらないとか、子供のためとかいっているが、どんな時代になるいうねん!あんた占い師かそれとも未来学者か。子供のためじゃなくあんたのためやろがと言いたい。

日本語は表現が豊かな分、女性的表現が好きな男性(生物学的な)は日本では差別されやすい。一昔前は「オトコ女」や「ホモ」といわれてからかわれた。逆もまた然り。最近はLGBTQといった価値観が広まったことで、だいぶんと緩和されたが、差別観は世界と比べるとまだまだ大きいといえるだろう。これは日本語の陰の部分である。

陽の部分は、男性的・女性的な表現が豊かにできるので、それだけこの世界の豊かさを知れる。男女という2つの性質から生まれる美しさ、奥深さ、喜び、悲しみ、弱さ、汚さがたくさん感じ取れるのだ。

男女という2つの軸があることで、世界は直線から平面になり次元が変わる。日本語は直線世界ではなく平面世界を作っていて、それを巧みに操ることができれば、大きな平面の世界を自由に動き回ることができる。直線だとレールの上に乗るしかない。

歌舞伎をはじめとした伝統的な演劇には「女形(おんながた)」がいて、男性が女性を演じるのだが、かの親父臭い梅沢富美男は女形であった。彼の表現力の豊かさは、TV番組のプレバトを見れば一発でわかる。逆もまた然りで、宝塚の男役スター天海祐希さんや真矢ミキさんからも表現力の豊かさを感じないだろうか。

効率・競争・目標達成の男性的ビジネス世界という直線上に生きるのならこのままでいいが、もし平面世界を作り出すのであれば、男性的ビジネス世界の中心にいる親父たちが女形を経験する必要がある。

と男臭い親父たちを見ているとこのごろつくづく思うのよ。あなた、私のこの感じわかってくれる?

著者情報

泉 一也

(株)場活堂 代表取締役。

1973年、兵庫県神戸市生まれ。
京都大学工学部土木工学科卒業。

「現場と実践」 にこだわりを持ち、300社以上の企業コーチングの経験から生み出された、人、組織が潜在的に持つやる気と能力を引き出す実践理論に東洋哲学(儒教、禅)、心理学、コーチング、教育学などを加えて『場活』として提唱。特にクライアントの現場に、『ガチンコ精神』で深く入り込み、人と組織の潜在的な力を引き出しながら組織全体の風土を変化させ、業績向上に導くことにこだわる。
趣味は、国内外の変人を発掘し、図鑑にすること。

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