小さなブルーオーシャンに出会う旅 第16回「生き残れたのは小さなブルーオーシャンを貫いたから?」

このコラムについて

小さなブルーオーシャン?
何だかよく分からないよ。ホントにそんなので商売が成り立つの?

と思っている方は多いのではないでしょうか。何を隠そう私もそのひとりでした。私は人一倍疑り深い人間なのです。そこで・・・私は徹底的に調べてみることにしました。小さなブルーオーシャンなんて本当にあるのか。どこに行けば見られるのか。どんな業種なら可能なのか。本当に儲かっているのか。小さなブルーオーシャン探求の中で私が見つけた答えらしきもの。それはきっとみなさんにとっても「何かのヒント」になるはずです。

第16回「生き残れたのは小さなブルーオーシャンを貫いたから?」


現在のように大型商業施設がない頃、まだ物を購入するのが個人商店であった頃、各地域に商店街が賑わっていた頃、肉屋や魚屋、八百屋に混じって、なんだかゴチャゴチャしたお店、まさに現在のドン・キホーテの店舗が小さくなったようなお店があったのを覚えていますか?(あるいは知っていますか?)
店先には、箒やちりとりが並び、中に入るとヤカンだったり、タワシだったり、あるいはドリフターズの「8時だョ!全員集合」で使われていた、故・志村けんさんや加藤茶さんの頭に「ガン!!!」と落ちてくるタライなんかが所狭しと置いてあるお店。そう「金物屋さん」。現在は、ほとんど見かけることがなくなりました。昔、金物屋さんで買っていた商品は百均やホームセンターで買うことがほとんどなんでしょうね。

●●に特化した金物屋さん。特定の人からは注目されています。

千歳烏山駅から少し歩いた路地裏にそのお店はあります。
その名も「児玉金物店」さん。前述した、いわゆる金物屋さんです。
需要がなくなり、街中から淘汰されてしまった金物屋さんなのに、「児玉金物店」さんはある特定の人たちから絶大な人気を誇り、全国から注目され、地方からも注文されるという金物屋さんなのです。では、誰に対して、何を売っているのか?

実は、左官職人さんたちに対して、「左官鏝(コテ)」というものを販売しています。
取り扱っているのは左官鏝(コテ)のみ。店内には所狭しと左官鏝(コテ)が置いてあり、常時約800点の左官鏝(コテ)があるそうです。
左官鏝(コテ)にそんなに需要があるのかしら?とも思うのですが…

そもそも左官とは、建物の壁や床、土塀などを、鏝(コテ)を使って塗り仕上げる仕事のことです。ただし、この仕上げにはさまざまな方法があるらしく、日本独自のものから、洋風であったり、日本らしさと欧米のモダンスタイルを兼ね備えた和モダンであったり、あるいは私たちの見えない隙間部分にもあったりするらしく…。それぞれで使用する鏝(コテ)が違うんだそうです。奥深いですね(笑)。

小さなブルーオーシャンを生み出しているものは何なのか?

1963年創業の児玉金物店さん。今年で57年という長さです。
前述bした通り、多くの金物店が姿を消していく中で、全国の左官職人さんたちから注目され、地方からも注文されています。そのわけは、左官鏝(コテ)に特化し続けたことでしょう。さらに言えば、児玉金物店さんの店主である児玉昭三社長は現役の鍛冶職人らしく、左官鏝(コテ)の修理も手掛けているとか。
職人さんはその道のプロフェッショナルです。当然のように道具にもこだわりを持った強者ばかりだと思います。壊れたらすぐに買い換えてしまう時代ですが、職人さんたちの要望やこだわりにも応えられる、そんな人や場所であれば、職人さんたちが見過ごすわけもなく、口コミも自然に発生することでしょう。
児玉金物店さんにはホームページはありません。まぁ、左官職人さんにだけ知ってもらえばいいわけですから、全世界に発信するホームページやSNSなどは必要ないのでしょうね。私たちには知られない、知らない世界。しかし、その道のプロフェッショナルは絶対に知っている世界だからこそ、強いのだと思います。

 


佐藤洋介(さとう ようすけ)
株式会社グロウスブレイン 代表取締役

大学(日本史専攻)を卒業後、人材コンサルティング会社に16年間勤務。ソフトウェア開発会社、採用業務アウトソーシング会社、フリーランスを経て、起業。
中小企業の人材採用、研修に携わる一方で、大学での講義、求職者向けイベント等での講演実績も多数。人間の本質、行動動機に興味関心が強い。
国家資格キャリアコンサルタント、エニアグラムファシリテーター、日本酒ナビゲーター。

 

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