第129回「95%も減少した産業を復活させようとする小さなブルーオーシャン」

このコラムについて

小さなブルーオーシャン?
何だかよく分からないよ。ホントにそんなので商売が成り立つの?

と思っている方は多いのではないでしょうか。何を隠そう私もそのひとりでした。私は人一倍疑り深い人間なのです。そこで・・・私は徹底的に調べてみることにしました。小さなブルーオーシャンなんて本当にあるのか。どこに行けば見られるのか。どんな業種なら可能なのか。本当に儲かっているのか。小さなブルーオーシャン探求の中で私が見つけた答えらしきもの。それはきっとみなさんにとっても「何かのヒント」になるはずです。

「95%も減少した産業を復活させようとする小さなブルーオーシャン」


「日本の経済成長を牽引してきた重要な基幹産業に一体何が…」

シルク、絹。
“繊維の女王”とも呼ばれる
この糸は、かつて日本の総輸出品目の中で
常に第一位、輸出の花形であり続けました。
そこで得た外貨で鉄道や重工業の施設や備品、
工業製品の原料輸入の支払いをし、
日本の近代化は成し遂げていったのです。

しかし化学繊維の登場や中国産との価格競争に
敗れて衰退。
現在では最盛期の生産量の約95%減。
国産絹織物に占める国産原料生糸は
2%程度にすぎないといいます。

この衰退産業に参入し、
わずか7年で業績を上げ続けている
会社があります。

ユナイテッドシルク株式会社。
愛媛県今治市の会社です。

衰退産業で業績を上げていると聞くと、
「何をしているんだろう?」
と気になりませんか?

おそらく、シルク、絹と聞いて
考えるのは、繊維素材でしょう。
では繭から生糸を作って売っているのでしょうか?
あるいは、その生糸を使って、新しい織物でも?
もしくは織物から奇抜な洋服でも作っているのでしょうか?

ユナイテッドシルク株式会社では、
全く違う視点からシルクの可能性を見出し、
ビジネスにしているのです。

まずは食品。
シルクは良質なたんぱく質だそうです。
地球に優しい新しいたんぱく源として、
食品の原料として販売。

さらにシルクの主成分は
18種類のアミノ酸で構成されており、
人の肌の構成とほぼ同じだそう。
そこで、化粧品の原料として販売。

また、衣料用の繊維としてのみではなく、
傷を縫う外科用縫合糸としても
実際に医療現場で利用されているそうで、
フィルム状、ナノファイバー、スポンジ状にすれば、
バイオマテリアルとして再生医療用の材料となる。
皮膚や骨の再生、角膜、血管、心臓の治療に
役立てることができるわけです。
そこで、医療品の原料として販売。

もう一つ注目したのは「きびそ」という
蚕が繭をつくるとき、
最初に吐き出す絡まった束状の糸。
普通は使用されず捨てられてしまうものだそうですが、
これを活用してタオルやスカーフ、
ボディーケア商品などに加工した商品も生み出したのだとか。

さらにさらに、今後はワクチンを作ることも
視野に入れているんだそうです。
こんなにも可能性って広がるんですね。

社長の河合崇氏は(47)は起業の際
「衰退産業をいまさら」と言われたそうです。
しかし、可能性を信じ、研究、努力をした結果
これまでの衰退産業を違う形で復活させて
きているようです。
というか、これはもう新しい産業なのでは
ないでしょうか。

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ユナイテッドシルク株式会社
〒790-0004 愛媛県松山市大街道三丁目2番8号
URL https://united-silk.co.jp/
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佐藤 洋介(さとう ようすけ)
株式会社グロウスブレイン 代表取締役

大学(日本史専攻)を卒業後、人材コンサルティング会社に16年間勤務。ソフトウェア開発会社、採用業務アウトソーシング会社、フリーランスを経て、起業。中小企業の人材採用、研修に携わる一方で、大学での講義、求職者向けイベント等での講演実績も多数。人間の本質、行動動機に興味関心が強い。
国家資格キャリアコンサルタント、エニアグラムファシリテーター、日本酒ナビゲーター。

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