最適な顧客量

出来ることなら誰しも有名大企業に就職したい。
福利厚生は充実しているし、生涯年収には億単位の
差があるし、社会的信用やステータスも格違いだ。

そこに入れない人たちが中堅企業に流れ、
さらに中堅企業にも入れない人たちが
中小企業へと流れ込んでいく。
マクロ的に見ればこの図式は間違いではない。

わざわざ条件の悪い会社に
就職したい人など稀なのである。
結婚に例えるなら、稼ぎが良く、見栄えも良く、
性格も穏やかな男に女性人気が集まるということ。
これも当然の帰結である。

稼ぎが悪く、性格が粗暴で、見てくれの悪い男を、
わざわざ選ぶ女性などいるはずがない。
ところが現実とは面白いもので、
明らかにこの逆の現象があちこちで起きているのである。
一体どういうことなのか。

なぜこんなに性格のいい、美しい女性が、
こんなつまらない男と付き合っているのだ。
本人にとっては大きなお世話であるが、
同じ男としてつい文句を言いたくなってしまう。

いや、文句というよりは愚痴だろう。
だったら俺も・・・と言いたいところだが、
現実はそんなに甘くはない。
大して変わらない男なのにあちらには美女、
こちらはずっとひとり。
その差を生み出しているのはフォーカスである。

つまらない男と美人が付き合う理由は、
彼女にとってその男がつまらなくないからである。
稼ぎがいいわけでもない。見てくれも普通。
いや、俺の方がマシ。運動ならきっと負けない。

こんな男のどこがいいんだ、という時のフォーカスと、
彼女が彼氏を見るときのフォーカス。
それは別物なのだ。

稼ぎが悪く、性格が暗く、
容姿も悪い“から”好きになったのではない。
稼ぎが悪く、性格が暗く、
容姿も悪い“けど”好きになった。
つまり見ているポイントが違うのだ。

じゃあ、そのポイントとは何なのだ。
納得が行くように説明してくれ、
と言いたい気持ちは分かる。
だがそれを説明することは不可能だ。
いや説明しても理解できないだろう。

すごく笑顔がチャーミングだとか。
物思いに耽る横顔が素敵とか。
彼女にとってはそれが重要なのだ。
結婚は一人としかできない。
中小企業は少数しか採用しない。
だから一般的な評価などどうでもいいのである。

自分の商売において獲得したい顧客は何人なのか。
そこから逆算する。
1000人中たったひとりだけが響いてくれるように、
商品をフォーカスする。
最適な顧客量を決して見誤らないこと。
そこが成否を分ける境目だ。

 

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