第157回「共助の国(第8話完結)」

このコラムについて

日本でビジネスを行う。それは「日本人相手に物やサービスを売る」という事。日本人を知らずして、この国でのビジネスは成功しません。知ってそうで、みんな知らない、日本人のこと。歴史を読み解き、科学を駆使し、日本人とは何か?を私、泉一也が解き明かします。

第7話のお話。共助(ともすけ)が本隊に突撃しジジョロンの注意を引いているその隙に、子供の一行は、想定外のジャオの妨害をヤサカニの聖玉の助けを得て乗り越え、ついに「本」をジジョロン本拠地の地下石櫃に封印した。大地震が起こりジジョロンの本拠地と本隊は壊滅。すべてのミッションを果たした共助の一団と子供の一行は無事に日ノ本の国に帰還した。

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日ノ本の国では共助と子供達を迎え入れ、盛大な祝宴が続いた。共助は正式に日ノ本の王となりキョウジョを中心とした国づくりを始める。心柱の復活である。並行して共助はジジョロンとの戦いで共にした国々とキョウジョ連合をつくり、各国代表と世界の平和と協力を約束する協定を結んだ。

協定を結んだ日、各国の代表が世界に向けてスピーチをした。世界が一つになったことを示す素晴らしい内容で、後々世界各国の学校の教科書になった。

子供たちはそれぞれの家に帰り、日常生活が戻る。その前に一つ大事なイベントが残っていた・・それは「ヤタキョウ」を神社に返すこと。子供達が元々置かれていた神棚にヤタキョウを祀ろうとしたとき、一人がその横に赤く光る玉を目にした。

「あれ?こんな玉あったっけ?」。子供の一人が持っていた「ヤサカニ」も一緒に光っていた。それぞれが呼応するように。よく見るとヤサカニと色は違うが同じ形(胎児の形)をしていた。その赤い玉にヤサカニを近づけると、ジグゾーパズルのピースのようにピッタリとハマった。

その瞬間、二つの玉は一つの玉になった。その統合された形は、日ノ本では昔から伝わる「タイキョク」と言われている模様であった。子供たちは一瞬にしてその模様の意味を理解し、なぜか涙が溢れ出てきた。

言葉にするとこうだ。「陰と陽や+―といった対(つい)となる極があるからこそ豊かであり、その豊かさを生み出すのは、両極の理解と受容、そして両極が交互に循環することから生まれる」

ジジョロンという存在が復活したことで、分断していた世界は一致団結し、結果、平和と協力の世界を作る事ができた。子供たちは旅の中で出会った敵や味方、困難な問題や達成の喜びからキョウジョを学ぶ事ができた。

この学びは次の子の世代へと代々受け継がれていくだろう。いつしか受け継がれなくなった時、再びジジョロンが現れ、大きな困難を世にもたらす。そしてキョウジョの出会いと学びを通して、タイキョクの世界を再び生み出すのだ。

(おわり)

J・R・R・トールキンに捧ぐ。

 

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著者情報

泉 一也

(株)場活堂 代表取締役。

1973年、兵庫県神戸市生まれ。
京都大学工学部土木工学科卒業。

「現場と実践」 にこだわりを持ち、300社以上の企業コーチングの経験から生み出された、人、組織が潜在的に持つやる気と能力を引き出す実践理論に東洋哲学(儒教、禅)、心理学、コーチング、教育学などを加えて『場活』として提唱。特にクライアントの現場に、『ガチンコ精神』で深く入り込み、人と組織の潜在的な力を引き出しながら組織全体の風土を変化させ、業績向上に導くことにこだわる。
趣味は、国内外の変人を発掘し、図鑑にすること。

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