第200回「日本劣等改造論(32)ファイナル」

このコラムについて

日本でビジネスを行う。それは「日本人相手に物やサービスを売る」という事。日本人を知らずして、この国でのビジネスは成功しません。知ってそうで、みんな知らない、日本人のこと。歴史を読み解き、科学を駆使し、日本人とは何か?を私、泉一也が解き明かします。

 ― 場に答えがあるかも、いや、ある(後編)―

万葉集にある名もなき防人(さきもり)の歌

「父母が 頭かき撫で 幸くあれて 言いし言葉ぜ 忘れかねつる」
ちちははが あたまかきなで さくあれて いいしけとばぜ わすれかねつる

故郷を離れた遠い地の先で、命を張って国を守る。そんな防人が父母を懐かしむ歌であるが、親子の愛をこの歌から感じるだろう。

我々が住むこの日本は先人たちが生きた証がたくさん残っていて、その証によって豊かに生きることができている。この30年ぐらい経済的には成長をしてないが、表現の自由も職業選択の自由もあり、医療に教育に福祉に充実している。

早朝には250円で美味しい朝定食があり、寒い深夜にはコンビニで温かいおでんも買える。犯罪率は世界的に見ても低く、女性が夜道を一人であるけるような平和な毎日がある。戦争に駆り出されて命を失う人もおらず、この素晴らしき豊かさは誰が作ってきたのだろうか。

日本はこの防人の歌にあるように、次世代の人が幸せになるようにといった親の愛と、その愛を受けた子の関係が何百世代に渡って続いてきた。その連鎖が連綿と続いてきたから、今の豊かさがある。その連綿と繋がった豊かさを得ていると知った人は、次の世代へこの恩をつないでいく。

22歳の私は「場」を物理的な現象でしか見ることができなかったが、1995年の1月17日に故郷の大崩壊を見て、大きな勘違いであることを知った。「場」とは先人たちの想いが連綿と続いている想いの連続時空帯であったのだ。故郷の馴染んだ風景を失って初めて目覚めたのだが、それからは目覚めたことを行動にちょっとずつ移してきた27年間だった。

場に答えがあるかも?といった私の直観は、今や、間違いなく「ある」に至った。それは、仮説と検証のサイクルを27年間回し続けて得た「身体知性」がそれを教えてくれる。

もう一度、足元にある場からスタートしてみたい。終わりは始まりだからこそ、連綿と続くのであって、新たなスタートをどこに設定するのかが大切だろう。そのスタートとは、知識社会のオフィスに絶対にあってはならないもの「土」である。

世界一豊かだと言われる土とは、チェルノーゼム(黒土)であり、肥沃さでは土の皇帝と言われている。そのチェルノーゼムはウクライナにあり、今は世界の皇帝国とロシアの皇帝的人物がぶつかる戦場と化している。ウクライナとロシアは、小麦の輸出量は世界の30%を締めていて、さらに蕎麦にいたっては日本はロシアからの輸入に頼っている。

小麦と蕎麦は、日本のうどん・蕎麦・天ぷらといった食文化に通じており、今やパンも日本独自の文化となっている。

ウクライナ危機は、食糧危機でもある。日本は食料自給率38%といっているが、化石燃料を海外に委ねている日本は、そこからできる化学肥料に農薬に、トラクターの燃料、脱穀や製粉する動力源は、海外に依存していると考えれば、食料自給率はほぼゼロだ。もし世界大戦となったとき、助けてくれる国はどこにもない。

連続時空帯としての日本という場を次世代につなげるには、今何をすればいいかが見えてくるだろう。そして、この日本人の取扱説明書は200号をもって終わるが、新たな時空間にこの続きを委ねたい。

(終わりに)

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著者情報

泉 一也

(株)場活堂 代表取締役。

1973年、兵庫県神戸市生まれ。
京都大学工学部土木工学科卒業。

「現場と実践」 にこだわりを持ち、300社以上の企業コーチングの経験から生み出された、人、組織が潜在的に持つやる気と能力を引き出す実践理論に東洋哲学(儒教、禅)、心理学、コーチング、教育学などを加えて『場活』として提唱。特にクライアントの現場に、『ガチンコ精神』で深く入り込み、人と組織の潜在的な力を引き出しながら組織全体の風土を変化させ、業績向上に導くことにこだわる。
趣味は、国内外の変人を発掘し、図鑑にすること。

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