第38回 採用は「年代別レイヤー」で考える

この対談について

住宅業界(新築・リフォーム・不動産)の「課題何でも解決屋」として20年以上のキャリアを持つ株式会社ランリグが、その過程で出会った優秀な人材を他社に活用してもらう新サービス『その道のプロ』をスタートしました。2000名以上のスペシャリストと繋がる渡邉社長に、『その道のプロ』の活用方法を伺う対談企画。

第38回 採用は「年代別レイヤー」で考える

安田
前回、「新卒は期間を決めて雇用した方が採用率が上がる」というお話をしましたね。仮にそれが実現した場合、採用した新卒の多くが20代のうちに辞めていくことになるわけで、「それじゃ30~40代の中間層が作れないじゃないか」という心配も出そうです。

渡邉
確かにそうですね。とはいえ、逆に言えば他の会社から20代後半のプチ経験者が市場に出回るようになるわけで、そこを中途で狙っていくことはできそうです。さらに時間が経てば、3社目4社目の転職先を探している人も出てくるわけで。
安田

私もそういうイメージなんです。つまり新卒の雇用期間を決めることで、中途採用もやりやすくなっていく。


渡邉

そうなれば求人広告の内容も変わってきそうですよね。「次の5年間はこんなスキル習得に使いましょう。そして5年後にはこんな転職を」みたいな。

安田
いいですねぇ。すごく今っぽいと思います。

渡邉
とはいえ、優秀な30代40代を採用するのは難しいでしょうね。優秀であればあるほど、相応の給与や待遇を与える必要があるわけですから。
安田
確かにそうなんですよね。「二刀流が完成した大谷選手」だって、ドジャースのようなお金を持っている球団しか採れなかったわけですから。まぁ、お金のかかる30代40代を過ぎて、50〜60代になるとちょっと変わってくるとは思うんですけど。

渡邉
ああ、なるほど。「居心地の良い環境」とか「後輩を育成したい」とか、金銭的なもの以外を求め始める世代ということですね。
安田
そうそう。つまり、20代の未経験者と50~60代は、中小企業でも採用はできると思うんです。だけど30~40代で本当に優秀な人を正社員で採用するなら、年2000万円とか3000万円とか払う覚悟がないと難しい時代になってくる。

渡邉

3000万ですか……確かにそれだけ出したら超優秀な人も採用できそうですけど、会社側のお金がもたないんじゃないですかね(笑)。過剰資金をいっぱい持っている大手企業ならまだしも。

安田
そう、だから難しいんですよ。そして優秀な30代40代はそのことに気付いているので、大手におさまるか、あるいはフリーになって業務委託として仕事を受けていくことになると思います。

渡邉
僕もそこは同意見です。私たちがやっている『その道のプロ』事業でも、「もはや会社に所属する意味がない」と言ってフリーになっているプロ人材が大勢いますし。マーケットとしても、30代40代のプロ人材へのニーズは高まり続けています。
安田
効率よくマルチに仕事ができるような人は、複数の会社と契約した方が収入は上がりますからね。そしてそういう人って、そもそも安定を目指していなかったりする。これは強いですよ。
渡邉

確かに。そう考えると「優秀な人材」についての受け止め方も変わってきましたね。昔は辞める人より残る人の方がレベルが高いというのが常識でしたし、「フリー」というとなんとなく腰が軽いイメージがありましたけど。

安田
若くて優秀な人材が会社を辞めるようになったのが大きいですよね。そしてこの流れは今後ますます加速するはずです。逆に言えば、企業側は採用について、より戦略的に考えていく必要がある。「人を採用してどう利益を上げていくか」を真面目に考えていかないと。

渡邉
ええ、仰るとおりです。「適当に採用して、言った通りの仕事をさせたら利益が残る」という図式はもう成り立たない。物価の高騰もあって、売上が増えたとしても利益が残らなくなってきていますし。
安田

そうですね。ごく単純に、今までと同じ給料では生活が苦しくなっている。それを受けて大手が一気に10万円近く初任給をアップして、優秀な人材を集め始めていると。


渡邉
そうなると、人件費を上げられない中小会社は生き残るのが難しいですよね。たとえば住宅業界だと、中小の住宅メーカーは「安さ」で売ってきたところがあるんですが、人件費を上げたら商品価格も上げざるを得ない。でもそうしたら強みがなくなって売れなくなるというジレンマがある。
安田

「安さを売りにする」という戦略自体に限界が来ているんでしょうね。やはり「多少高くても欲しい」と思ってもらえるような付加価値を見つけていかなと。


渡邉
まさにそうですね。しっかり商品を作り込んで、そして怖がらず値上げをしていくしかないと思います。

対談している二人

渡邉 昇一(わたなべ しょういち)
株式会社ランリグ 代表取締役

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1975年、大阪市に生まれる。大学卒業後、採用コンサルティング会社ワイキューブに入社。同社の営業、マーケティングのマネージャー、社長室長及び、福岡などの支店立上げを担当し、同社の売上40億達成に貢献した。29歳の年に株式会社ラン・リグを設立し、今期20期目。述べ900社以上の住宅会社のマーケティング、人材コンサルティング支援と並行し、500店舗以上が加盟するボランタリーチェーン「センリョク」など、VC、FC構築にも多数携わる。また、自身が司会を務め、住宅業界の経営者をゲストに招き送る自社のラジオ番組は、6年間で、延べ300回以上の配信を経て、毎月2万人以上の業界関係者が視聴する番組に成長した。今年5月には、2000人以上のプロ人材とのネットワークを生かした~社長の右腕派遣サービス~【その道のプロ】を本格リリース。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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