第69回 業務委託だからこそ築ける「ウェットな関係」

この対談について

住宅業界(新築・リフォーム・不動産)の「課題何でも解決屋」として20年以上のキャリアを持つ株式会社ランリグが、その過程で出会った優秀な人材を他社に活用してもらう新サービス『その道のプロ』をスタートしました。2000名以上のスペシャリストと繋がる渡邉社長に、『その道のプロ』の活用方法を伺う対談企画。

第69回 業務委託だからこそ築ける「ウェットな関係」

安田

私は随分前から「雇わない経営」を提唱しているんですけど、やっぱり多くの社長さんは「社員を雇う」ということが大好きなんだなと感じていて。


渡邉

そうですねぇ。僕も「その道のプロ」事業でプロ人材を紹介してますけど、まだまだ社員を中心に考える社長さんが多い印象です。

安田

そうですよね。で、どんな社員が好きかというと、厳しいことを言われても辞めたりしない人とか、事情があってクビにしても黙って受け入れる人とか(笑)。


渡邉

確かに本音はそうかもしれませんね(笑)。今どきそんな人いるのかっていう感じですが、経営者からすると「いる気がしてしまう」んでしょうね。

安田

そうそう。でも実際にそんな社員なんてそうそういない。一方で、業務委託はそっちのイメージに近いんですよ。


渡邉

ん? 業務委託でやっている人の方が、社員よりさらにドライな気がしますけど。

安田

本人目線ではそうなんですけど、彼らに仕事を頼む経営者目線だとどうですか? 例えば社員って基本的には時間で給与が決まっていますよね。月◯万円というように。


渡邉

そうですね。歩合とかは別途あるかもしれませんけど、基本的には定額なことが多いですね。

安田

そう。それって言い換えると、仕事を進めるのに時間がかかればかかるほどたくさんお金を払わなきゃいけないってことです。一方で業務委託は基本的に、時間で金額は変わらないじゃないですか。


渡邉

あ〜、確かに。業務委託は時間じゃなく成果に対して報酬を払ってますからね。

安田

そうなんですよ。そして仕事があるときだけ頼めばいいので、無駄なランニングコストもかからない。これってさっき出ていた「理想の社員像」そのものじゃないですか。


渡邉

うーん、言われてみればそうですね。厳しいことを言っても別にパワハラで訴えられるわけでもないし(笑)。

安田

そうそう。でもなぜか経営者は業務委託より社員が好きなんですよね。これが不思議だなぁと思っていて。

渡邉

おもしろい視点ですね。僕が思うに「業務委託の使い方がわからない」ということが大きい気がします。会社の業務のどこをどうやって任せたらいいのか見えないというか。

安田

なるほど。とはいえ、じゃあ社員の使い方はわかっているのかというと、そちらも怪しい気がします。社員として契約した途端に、家族のような感覚になる経営者ってまだまだ多いじゃないですか。


渡邉

確かにそうかもしれません。いきなりプライベートな話をしたり、飲みに誘えば手放しに喜ばれると思っていたり。

安田

そうそう。「社員なら皆社長の夢についてくるもんだ」と思っていたりね。業務委託に対してはハナからそんなことを考えないのに。


渡邉

確かにそういう意味では、業務委託だけじゃなく社員の使い方もわかっていないのかもしれませんね。もっとも社員と業務委託の違いは「契約形態が違う」ということだけなんですけどね。社員は時間で契約していて、業務委託は成果で契約しているという。

安田

ええ。まさにそうなんです。だから業務委託の使い方がわからないというより、「雇用契約を過信している」んじゃないかと思っていて。


渡邉

ああ、なるほど。それはあるかもしれませんね。最近でこそ労働者側も「もらった給料分だけ働きます」というドライな人が増えてきましたけど、昔はもっと「会社に人生捧げます」みたいな感じでしたもんね。

安田

そうそう。現代の方が世界のスタンダードに近づいてきているわけですが、経営者側にはまだ「社員=身内」「外注=身内以外」という感覚が根強く残ってるんじゃないかなぁ。


渡邉

確かに「社員とは利害関係が一致しているはずだ」という期待がありそうですよね。「皆が会社という同じ船に乗っている」とつい考えてしまう。

安田

実際のところは、船が沈みそうなら皆さっさといなくなっちゃうんですけどね(笑)。社員は2週間前に言えば、どんな重要なポジションの人でも辞める権利があるわけで。一方の業務委託は3年でも5年でも、契約してしまえば途中で辞められることはない。

渡邉

成果も契約で定めることができますしね。そういう意味でも業務委託の方が、経営者のイメージしている「理想の社員」に近いのかもしれませんねぇ。

安田

そうそう。まぁ、昔は先ほど出ていたような「一蓮托生」のような雰囲気が確かにありましたから、経営者さんの気持ちもわからなくはないんですけど。とはいえ今は働く側の価値観が完全に変わっているので。

渡邉

ええ。仕事だと割り切って考える人が増えましたよね。辞める時も迷いがないし。一方で経営者の方は、社員に辞められると家族に裏切られたかのように悲しんでいる。

安田

社員がドライになったわけではなく、もともとそういう契約だっただけなんですけどねぇ。

渡邉

経営者側だけにウェットな部分が残ってますよね。でも日々プロ人材と接していると、実は「ウェットな部分を持ってる業務委託」ってけっこういるんですよね。

安田

ああ、そうですよね。そういう人って意外と多いんじゃないですか? きちんとスキルがあって、スペシャリストとしてのプライドを持って仕事をしてる人って、そこまで合理的じゃないというか。もちろん成果を上げることにコミットはしますけど。

渡邉

まさにそうなんです。「この社長のために!」とすごく入れ込むこともありますし。身内のような感覚で関わってくれる人もいます。

安田

うんうん。逆に社員の方がドライだったりするのかもしれませんよね。社長のいないところでは全然態度が違ったり(笑)。

渡邉

確かに(笑)。社員という働き方を選ぶ人のモチベーションが変わってきているのかもしれませんね。仕事そのものにコミットするというよりは、「仕事と一定の距離を保ちたい」というように。

安田

8時間仕事をしたらその分の給料がもらえて、社会保険にも入れて、万が一辞めた時も失業保険が出る。そういうことが社員という立場を選ぶ理由になっているんでしょうね。

渡邉

もちろんそれは間違っていませんし、一つの考え方なのでいいと思いますけどね。

安田

単なる志向の違いですからね。時間ではなく「成果にコミットしたい」という人が業務委託を選ぶんでしょう。どのくらい時間をかけるかは自分で決めて、できるだけ短い時間で大きな成果を上げたいとか。

渡邉

経営者が求める人材と正しくマッチングするためにも、もっと業務委託という働き方が浸透していくといいですよね。


対談している二人

渡邉 昇一(わたなべ しょういち)
株式会社ランリグ 代表取締役

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1975年、大阪市に生まれる。大学卒業後、採用コンサルティング会社ワイキューブに入社。同社の営業、マーケティングのマネージャー、社長室長及び、福岡などの支店立上げを担当し、同社の売上40億達成に貢献した。29歳の年に株式会社ラン・リグを設立し、今期20期目。述べ900社以上の住宅会社のマーケティング、人材コンサルティング支援と並行し、500店舗以上が加盟するボランタリーチェーン「センリョク」など、VC、FC構築にも多数携わる。また、自身が司会を務め、住宅業界の経営者をゲストに招き送る自社のラジオ番組は、6年間で、延べ300回以上の配信を経て、毎月2万人以上の業界関係者が視聴する番組に成長した。今年5月には、2000人以上のプロ人材とのネットワークを生かした~社長の右腕派遣サービス~【その道のプロ】を本格リリース。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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