小さな変化の起こし方

新たな商品やサービスを考える時、
そしてその商品を売ろうとする時、
考えるべきは相手の変化である。
その商品は「誰にどのような変化」をもたらすのか。

たとえばiPhoneは「便利で未来的なライフスタイル」
への変化を実現した。
その変化を多くの人が望んだ結果、
iPhoneは爆発的に売れ、スマホは必需品となった。

たくさんの人を変化させれば、たくさんの商品が売れる。
これは事実であるが、世界中の人々が望むような
変化を起こすことは簡単ではない。
車がなかった時代、エアコンがなかった時代、
テレビがなかった時代なら、それは難しくなかった。

それらは多くの人にとっての
好ましい変化だったからである。
だが今では、単に機能が優れた商品は
我々の社会に溢れかえっている。

もちろん人間のアイデアは無限である。
ファミコンやスマホなどが発明されたように、
これからも新たな商品は作られていくだろう。
だがこの先、変化の流れは細分化されていく。

数少ない「みんなが求める変化」が起こる一方で、
無数の「私が求める変化」がつくられていくだろう。
どちらを目指すのかは経営者の考えかた次第だ。

みんなが求める変化は当たれば
リターンが桁違いに大きい。
だが当たる確率は低い。
競争も激しいし、莫大な資金も必要となる。

特定の人が求める変化は小中規模のリターンである。
だが当たる確率は高い。
マニアックであればあるほど競争がなく、
大きな資金も必要としない。
日本の中小企業が取り組むべき変化がここにある。
私はそう確信している。

では小さな変化を起こすにはどうすればいいのか。
その答えは自分の中にある。
どんなに一般的な人でも、
すべての個々人はマニアックな存在だからである。

「いや、私はいたって普通だ。マニアではない」
そう反論する人もいるだろう。
だがそれは間違いである。
この世に同じ人間が二人といないように、
それぞれの嗜好はマニアックなのである。

すべての人は個性的なのであるが、
それを発揮できない理由は自分を見ていないからだ。
自分ではなく他人や社会を見て行動してしまう。
これが現代日本人の特徴である。

経営者もまた顧客や市場を見すぎている。
その結果、絞り込んだつもりでも
一般ウケするありふれた商品が溢れてしまう。
他人というマーケットは大きすぎるのである。
向き合うべきは自分自身の変化だ。
私が求める変化の数だけ商品はつくることができる。

 


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