もしも「お前なんてみんなの笑いものだ」と言われたら。
当然のことながら言われた方はいい気がしない。
どう考えてもそれは褒め言葉ではないからだ。
笑われるのはレベルが低い人。出来が悪い人。
それが一般的な認識ではなかろうか。
そもそも日本では笑いに対する評価が低い。
お笑い芸人がステータスのある人として
認められたのは、つい最近の話である。
一方、欧米ではユーモアのセンスは知的さの象徴である。
就任演説で見事な笑いをとる大統領を見ていると、
我が国の政治家とのセンスの違いを痛感させられる。
もちろん「笑わせること」と
「笑われること」は同義ではない。
その決定的な違いは笑いの裏に計算があるかどうか。
笑いとは高度なコミュニケーションスキルなのである。
たとえば会社説明会という場で
社長が学生をどっと笑わせる。
それだけで学生と会社の距離はぐっと縮まる。
人当たりのいい社長、雰囲気のいい会社、
気軽に話ができる社風、というイメージが
出来上がるからだ。
たとえば初めての食事の席で
一緒にいる女性をコロコロと笑わせる。
すると女性との距離がぐっと縮まる。
一緒にいて楽しい人、すごく面白い人、
というイメージが出来上がるからだ。
笑には人の心を開く特殊な効果がある。
笑いの絶えない会社、
笑いの絶えない家庭という言葉を聞いて、
人間関係の悪さをイメージする人はいないだろう。
人は笑うことで心を開き、笑わせてくれた人に心を許し、
その相手を信用するのである。
この笑いの効用を経営に取り込んでいく。
たとえば方針発表のつかみで笑いを取る。
すると社員の心がちょっと開く。
社長の言葉にも耳を傾け出す。
小難しい話や、ありがたい話を聞かせたいのなら、
まずは笑いを取るぐらいのサービス精神が必要だ。
単なる説教話は脳みそをスルーしてしまう。
仕事の中での何気ない笑いも大事だ。
たとえばドジな仕草で社員を笑わせる。
この場合は笑われるに近い感覚だろう。
笑われることによって、
「この人も同じ人間なんだ」と親近感がわく。
そこに計算があれば「笑われる」ことも、
また笑わせるスキルだ。
社員だけではない。
顧客を笑わせれば会社に好感を持ってもらえる。
見込み客の笑いのツボを刺激すれば、
その面白さはリツイートされて拡散されていく。
笑いのセンスは採用力や集客力に直結しているのである。
笑いのない会社からはどんどん人が離れていく。
笑いが取れない会社の未来は暗い。
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