無駄と余計なことの境目

ビジネスに効率を求められる時代が長らく続いた。
無駄なく、安く、早く。
ここさえ押さえておけば確実に儲かるという時代。
だがその終焉を肌で感じている経営者は多いはずだ。

これ以上のコスト削減は難しい。
質を落とすしかない。
しかし、それでは仕事にならない。
人件費もギリギリだ。

今でも人は集まらない。
苦労して採用したスタッフもすぐに辞めてしまう。
納期も厳しくなる一方だし
追加費用を貰えるわけでもない。

やればやるほどしんどくなっていく。
この先どうすればいいのか分からない。
次なる一手はどうすればいいのか。

小さな会社に限って言えば、その答えは明白である。
余計なことをする。それしかない。
そのためにまず無駄と余計なことの境目を
明確にすることである。

「無駄なく、安く、早く」が
利益に直結した時代は終わり。
向かうべきは正反対の方向である。
すなわち「余計なことを、高く、遅く」。

これ以外に小さな会社が生き残る道はない。
では無駄と余計なことは何が違うのか。
ひと言で表現するならそれは目的である。

何のために遅くするのか。
なぜ高くなってしまうのか。
それは〇〇を実現するためである、という目的。
これがあるかないか。

目的がない遅延やミスは単なる無駄である。
無駄はロスしか生まないが、
余計なことは付加価値を生み出す。

私にとってその目的はとても共感できるものである。
そこにこだわるなら時間がかかるのは当然だ。
コストが高くなることにも納得がいく。
高くても、待ってでも、その商品を買いたい。
という付加価値。

無駄なく、安く、早くは、
消費者の損得に訴えかける手法だ。
大量生産・大量消費の時代にはとてもマッチしていた。
大企業が大きな流れを作り、
中堅・中小企業はその流れに乗って利益を上げていく。

だが残念ながらその時代は終わりつつある。
上流の水量が減れば下流には行き届かない。
もはや中小企業は下流ビジネスでは食えない時代なのだ。

余計なことを、高く、遅く。
それは消費者の好き嫌いに訴えかけるビジネスだ。
マーケットはこれまでのように大きくはない。
だが小さな会社が食べていくには十分な大きさだ。

経営者に求められるのは決断である。
気をつけるべきは中途半端な決断だ。
中途半端なこだわりに中途半端な値下げ。
これは最もやってはいけない戦略である。

思い切り安くするか。
徹底的にこだわるか。
分かれ道の真ん中に道はないのである。

 

この著者の他の記事を見る


尚、同日配信のメールマガジンでは、コラムと同じテーマで、より安田の人柄がにじみ出たエッセイ「ところで話は変わりますが…」と、
ミニコラム「本日の境目」を配信しています。安田佳生メールマガジンは、以下よりご登録ください。全て無料でご覧いただけます。
※今すぐ続きを読みたい方は、メールアドレスコラムタイトルをお送りください。
宛先:info●brand-farmers.jp (●を@にご変更ください。)

 

1件のコメントがあります

  1. 故人業主(1人起業経営)の私は、無駄なく、安く、早く。→
    「余計なことを、高く、遅く」。で行きたいと感じました。

    コラム、ありがとうございます。

感想・著者への質問はこちらから