人間の本質

人間は他の動物よりも頭がいい。
食物連鎖の頂点にいる。
空も飛べるし、原爆も作れるし、
宇宙にだって行ける。
こんな動物は人間だけである。

人間の次に頭がいいとい言われている
クジラやイルカ、チンパンジーや
オランウータンと比べてみて欲しい。
その差はあまりにも歴然である。

クジラは陸に上がることすら出来ないし、
チンパンジーは下着すら身につけていない。
なぜこれ程までの差がついてしまうのか。
進化という言葉では説明のつかない、
それこそ人智を超えた理由が
そこにはあるのかもしれない。

とは言うものの、境目研究家の私としては
その理由を深堀しないわけにはいかない。
なぜ人間だけがこれほどの進化を
遂げることができたのか。
そこには人間の本質が隠されている。

頭がいい、文化的である、宇宙にも行ける。
凄いことではあるが、それは人間の本質ではない。
それらは前提や結果に過ぎない。
では人間の本質とは何か。
それは苦手と得意の交換である。

自然界にも似たようなケースはある。
たとえば花とミツバチ。
蜜をあげる代わりに受粉を手伝ってもらう。
食べ物が欲しいミツバチと
動けない植物との共依存である。

だが人間の共依存はレベルが違う。
人間は同種同士でこれを行う。
しかもとんでもなく複雑かつ細かいレベルで。
笑わせてくれる代わりに家を建ててあげる。
ご飯を作ってもらう代わりに野球を見せてあげる。

こんな交換をするのは人間だけである。
もちろん最初からこんな交換があったわけではない。
進化の中でそれは複雑になっていったのだ。

たとえば力が強い人間と手先が器用な人間。
木を切ってもらう代わりに弓矢を作ってあげる。
始まりはこういうところだったのだろう。
ここに貨幣というものが加わり、得意と不得意の
交換はとんでもない数と種類になっていく。

力の強さにも手先の器用さにもいろんな種類がある。
より細分化された得意に自分の能力を磨いていく。
苦手なものはできる限り他の人間に依存していく。
こうやって人間は空を飛び、
ついには月にまで到達したのである。

月に行く専門の個体。
こんなものは人間以外からは絶対に生まれてこない。
その根本は苦手と得意の徹底的な交換なのである。
ネットの普及はさらにこの流れを加速していくだろう。

苦手なことを我慢する。
得意なことを放棄する。
それは人間の本質を理解しない行為だ。
不安や息苦しさの原因はそこにあるのかもしれない。

 

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1件のコメントがあります

  1. 苦手と得意の交換、なるほどと思いました。人々の存在意義の交換とも読み換えました。
    いつものコラム、楽しく拝読しております。
    ありがとうございます。

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