極に向かう未来

ひとつの会社をとことん大きくする。
仲間と共にそこに人生を賭ける。
素晴らしいことだと思う。
だがそれはすべての経営者にとっての正解ではない。
成長=拡大という一辺倒な思考はもはや前時代のものだ。

何のために経営するのか。
どこに向かって進んでいくのか。
成長とはどのような状態を指すのか。
経営者一人ひとりがその答えに
向き合わなくてはならない。
私たちは今、大きな曲がり角を超えようとしているのだ。

では曲がった先にはどのような景色が広がっているのか。
もちろん未来は曲がってみなければわからない。
だが経営者たるもの運任せというわけにはいかない。
周知を集め、五感を研ぎ澄まし、
自分なりの未来予想図を描いてみる。
私に見えるのは2極化していく未来だ。

北極と南極のように極が二つある。
片方はこれまで通り、
成長&拡大路線を突き進んでいく会社。

すべての人類がスマホを手にし、
インターネットに接続され、
あらゆる情報検索が可能になる。
そのような豊かさを実現するには
スケールすることが不可欠だ。

もう一方の極には、
真逆の価値観を持った会社が集まっていく。
決して大きくせず、すべての人を対象にせず、
特定の人にとっての豊かさだけを、
ひたすら追い求める会社。

どちらの極も豊かさを提供することに変わりはない。
違いは豊かさの種類だ。
「すべての人に共通する豊かさ」と
「特定の人のみが求める豊かさ」。
全体と個。これが両極となる。

経営者はそのどちらかを目指すことになるだろう。
これは単に規模だけの問題ではない。

たとえば同じ規模の小さな会社。
方や大きくなることを目指している、
「今はまだ小さな会社」。
方や深くなることを目指している、
「ずっと小さいままの会社」。

サイズもやっていることも似ていて、
今現在の姿を見ただけでは見分けがつかない。
だがそれは似て非なる会社なのだ。

「まだ小さな会社」が生き残るには、
大きくなっていくことが必要だ。
「ずっと小さな会社」が生き残るには、
より深くなっていくことが必要だ。

つまり目的も、向かう方向も、成長の定義も、
全く違うのである。
重要なのは自分の会社がどちらを目指しているのか、
ここをきちんと自覚していること。

広く大きく成長させ、
大陸がしのぎを削る極を目指すのか。
深く小さく成長させ、
無数の小島が集まる極を目指すのか。
いずれかの極に向かって進むことになる。
極をめざさない会社に未来はない。

 

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1件のコメントがあります

  1. いつもコラム、興味深く楽しく拝読しています。
    私は大企業に勤めた(サラリーマン)時代はスケール追求の時代、今は一人起業(+家族)での極を深める時代と認識しました。人生100年時代で一度切り、どちらも、またはハイブリッドも体験したらいいのではと感じました。
    コラム、ありがとうございます。

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