依存と自立の境目

会社に所属しないと稼ぐことができない社員。
社員が所属してくれないと稼ぐことができない会社。
この共依存状態が戦後の日本社会を支えてきたのである。

共に会社を大きくし、共に会社の利益を増やし、
共に社員の生活を豊かにする。
完璧な共依存関係がそこに出来上がっていた。
だがそれも終わりつつある。

真面目に仕事をする社員の数を増やしても
会社は大きくならない。
それどころか一人当たりの利益はどんどん減っていく。
真面目に会社の言う通りに働いても給料は増えない。
税金や社会保険料だけが増えて
手取りはどんどん減っていく。

給料を増やせば利益は下がる。
利益を増やせば給料は下がる。
利害関係はもう一致していない。
まずこの事実をお互いに認めるべきではなかろうか。

ここから始まるのは自立である。
会社は社員に依存せず利益を増やす仕組みを考える。
外注、非雇用、オートメーションなどの省人化である。
社員も会社に依存せず稼ぐ方法を考える。
起業、副業、フリーランスなどの事業主化である。

お互いに距離を置き依存状態を脱しようとする試み。
それがどんどん加速していくだろう。
社員を抱えて給料を増やし続けることの限界。
会社に人生を丸投げすることの限界。
お互いがそれを感じているからである。

とはいえ双方の関係は
ひと昔前とは少し違ったものになる。
会社を辞めればもう他人。
二度とうちの敷居は跨ぐな。
そのような慣習はこれからの時代にはそぐわない。
依存しないとはいえ関係は続く。
それがお互いのメリットとなるから。

優秀な人材ほど自立してくことは明白である。
省人化によって外注ニーズが
増えていくことも明白である。
ここに新たなマッチングが生まれる。
フリーになった元社員への外注。
それは完全な雇用ではなく、
完全な外注でもない新たな関係となる。

フリーになった人には慣れた仕事での安定収入となる。
会社にとっては安心して任せられる外注先となる。
お互い完全な依存ではなく、完全な自立でもない、
その中間に位置する新たな関係。
このグレーゾーンがどんどん広がっていくだろう。

もちろん、これまでと同じ完璧な依存関係も残る。
それは即ち100%の雇用関係だ。
そこに雇用70%+外注30%、雇用50%+外注50%、
雇用20%+外注80%などのグレーゾーンが
混在していく。程よい依存と程よい自立の割合を
お互いが見つけ出す。
新たな関係がここに始まる。

 

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