業種・職種の終焉

ネットの普及によって業種の壁は事実上崩壊した。Googleが新聞社の仕事を奪い、Amazonがあらゆる物販の競合となり、メルカリはリユースショップの存在意義を失わせてしまった。異業種から競合が現れてくることはもう常識と言ってもいい。では経営者はこの現実にどう向き合えばいいのだろうか。

多くの経営者は守りの発想になりがちである。未知なる競合に対してどのような手を打っていけばいいのか。どうやってマーケットを死守するのか。ネット環境を整え、ネット物販にも着手し、自社の事業もオンライン化できないかと模索する。顧客とのつながりを強化するためサービスにも力を入れる。

これらの対応が間違っているとは思わない。だがこの延長線上に安定したビジネスが生み出されるとは考えにくい。AIを主とするテクノロジーの進化は凄まじく、どこからどのような競合が現れてくるのか、どうやって業界そのものが終わりを迎えるのか、予測することすら不可能だからである。

ではどうすればいいのか。守りに入らず自ら黒船になっていく。これしかないと思う。とはいえGoogleやAmazonのような会社を目指そうというわけではない。業種・職種という壁を自ら壊してしまうのだ。私たちの会社は〇〇業である。私の仕事は〇〇である。この括りをなくしてしまうのである。

では自らの仕事をどう定義するのか。明確にするべきは商品価値とターゲットである。私たちは〇〇な人(会社)に〇〇という価値を提供する企業である。次にその根拠とプロフィールを提示する。なぜそのような価値を約束できるのか。どうやってその価値を生み出したのか。自分たちは何者なのか。

その会社が何業に属していようが、誰がどのような肩書きであろうが、顧客にはどうでもいいのである。私にどのような価値をもたらしてくれるのか。なぜそれを約束できるのか。あなたは何者なのか。知りたいのはそこだ。

明確なターゲットと提供できる価値。それを約束できる理由。これを発信し続けることで人が集まり顧客が増えていく。顧客と商品があれば商売は成立する。それを何業と名乗るのかは自分たちの自由である。顧客にも共感してもらえる名前をつけて共にコミュニティを育てていく。顧客とスタッフが入り混じったコミュニティがあること。それが業界を超えた次世代企業の証。
 

 

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