年収1000万円の壁

ラーメンには1,000円の壁があると言われている。1,000円を超える価格設定にすると顧客が激減してしまう。しかし1,000円以下だと原料費や人件費アップに耐えられず倒産してしまう。つまり1,000円を超えても集客できるラーメン屋だけが生き残るという境目。それが1,000円の壁なのである。

同様に中小企業の前には1,000万円の壁が現れつつある。初任給が30万円を超え、新入社員の年収が500万円に迫りつつある中で、社員の平均年収が1,000万円に近づいていくのである。「平均年収1,000万円?そんな給料を払える中小企業があるものか」と多くの経営者はそこに取り組む事さえしないだろう。

だが1,000万円の壁は必ずやってくる。ラーメンに1,000円の壁が訪れたように。その兆候は2025年に現れ始めるだろう。人が辞める、新たな人材を採用できなくなる。これが2024年までの傾向。2025年になると「人が消える」という現象があちこちで起こり始める。そしてあっという間に広まっていく。

想像してみてほしい。今抱えている社員の7〜8割が一斉にいなくなることを。これは脅しではなく現実である。言ったことを真面目にこなしてくれるレベルの20〜30代は、転職しただけで数百万単位の報酬アップが実現する。どの業種どの地方でも関係なく。労働者には業界や地域の壁などないのである。

人を雇うのであれば1,000万円の報酬が前提となる。ここから逆算して組織づくりをしない限り、中小企業の経営は成り立たなくなるだろう。妥協して人を採り、仕方なく報酬をアップする、などという対処療法はもう通用しない。やるべきはこの真逆の戦略だ。人を雇用するなら絶対に妥協しないと決めること。

商品開発、ブランディング、集客、SNS広報など、得意分野で突出したスキルを持つ人材。ここだけを狙って採用する。報酬提示額は1,200万円以上。ひとり採用することで業績が2〜3倍になるような人材。それ以外は雇用してはいけない。すぐに辞める400〜500万円人材では投資が回収できないのである。

「ひとり当たりの利益×社員数」という発想を捨てる。人数を極限まで絞り、業績を飛躍させる可能性を秘めた人材だけを採る。3人分の人件費をかけて飛び抜けた1人のスペシャリストを雇用するのだ。1,000万円払う価値を感じない社員は決して雇用しないこと。この壁を死守した中小企業だけが生き残る。

 

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