次世代の人材ビジネスは現在の採用ビジネスを消滅させる方向で生まれる。それは採用業界に長く携わるものには予想がつく未来だ。どんなに広告費や紹介料を積まれても、実力以上の人材を採用し定着させることはできない。その根本的な問題を、現場で働く人間は嫌というほど分かっているから。
お金を払ってくれる顧客を究極的に満足させることは出来ない。なぜなら相手は人間だから。無理やり入社させて働かせることなど出来ないのだ。採用業界は昔からこの矛盾を孕んでいる。企業は自社の実力以上の人材を採用したい。そのために高いコストを払っているのだと考えている。
一方で人材側も同じことを考えている。自分の実力以上の会社に就職したい。今の実力のままで、より給料が高く、より快適な職場に移りたい。それを実現してもらいたくて紹介エージェントに会いにいく。だが双方の望みを叶えることは不可能だ。どちらかの願いを叶えればもう一方の願いは叶わない。
ベストマッチングがゼロだとは言わない。採用力100点の素晴らしい会社と就職力100点の素晴らしい人材。この組み合わせならベストマッチングが実現する。だがそこには紹介会社や求人広告が入り込む隙がない。ベストとベストは相思相愛なので放っておいてもマッチングするのである。
採用ビジネスはギャップによって成り立っている。実力以上の人材が採用できるから企業は金を払うのだ。だがそれは人材側が納得できる話ではない。入社後にギャップが見つかれば離職を考える。転職を繰り返してもらうことで求人マーケットは拡大していく。この矛盾に現場の人間は疲れ果てている。
では次世代の人材ビジネスとはどういうものだろう。まず採用力を極限まで高めるサポート。次に仕事とベストマッチする人材像の明確化。この二つは定着と活躍という目的から逆算すれば必須なのである。そしてこの二つが実現できれば採用コストはどんどんゼロに近づいていく。
AI時代には自分のスキルや嗜好に最も適した仕事、その中で最も待遇のいい会社が見つけやすくなる。企業は見つけてもらいやすくなる。採用会社にお金を払った順番ではなくマッチング度合いの高い順番に企業が表示される。転職は無くならないがミスマッチは激減する。ギャップビジネスは終焉を迎える。
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