プレイングマネージャーの終焉

大谷翔平の活躍で二刀流が脚光を浴びるようになった。
だがプロ野球における二刀流の元祖は野村克也である。
彼はかつて捕手という激務をこなしながら、
同時に監督も務めるというあり得ない二刀流をやった。

口だけ出すのではなく自らやってみせる。
現場+管理職という二刀流は日本人の心に響くのだろう。
だが残念ながら、企業に大量発生している
プレイングマネージャーは見るに耐えない姿だ。

現場の激務をこなし、部下の育成と管理も任され、
両方の労働責任を負わされる。
にも関わらず現場との報酬差は微々たるものだ。
最近は管理職になることを望まず、
現場仕事を続けたがる若者が増えている。
ある意味当然ではなかろうか。

プレイングマネージャーという制度が
成り立っているのは、
上の世代にまだ管理職信仰が残っているからだ。
部下がいる。名刺に肩書きがつく。
自分のチームが持てる。
出来るビジネスマンになったかのような錯覚。
それが通用する最後の世代なのである。

だがそれも限界だ。
これから雪崩を打つように、
プレイングマネージャーは崩壊していくだろう。
どう考えても働く側の割に合わないからである。
遠からず大量の人材が離脱していくことになる。
向かう先はふたつだ。

9割以上は報酬を下げて現場に徹するようになるだろう。
残りは本物のマネージャーへと進化する。
本物のマネージャーとは現場から離れ、
現場のパフォーマンスをアップさせるプロだ。
その人がいるだけで組織のパフォーマンスは
何倍にもアップする。

経営者は決断を迫られるだろう。
プレイングマネージャーという中途半端な役職を廃し、
本物のマネージャーと現場だけの組織をつくること。
これが出来ない企業は生き残っていけない。
まず現場が崩壊する。現場をこなしながら
まともな部下のマネジメントなど出来ないからである。

次に中間層が崩壊する。
次々に部下が辞め、その責任まで負わされ、
精神的肉体的負担が限界を超える。
こうなったらもう元へは戻せない。
ここまで崩壊する前に、経営者は手を打つ必要がある。
現場とマネジメントの仕事を明確に分けるのである。

ただし分ければいいというものではない。
必要なのは本物のスキルを持ったマネージャーだ。
常識的に考えてそのような人材を
1千万円以下で雇用することは不可能だ。
ゆえに私は外部人材の活用を強く勧めている。
優秀な人材を自社だけで囲い込む時代は
もう終わったのである。

 

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