変と不変の取説 第26回「50年かかる変化」

「変化だ、変化だ、変化が大事だ」とみなさんおっしゃいますが、会社も商品も人生も、「変えなくてはならないもの」があるのと同様、「変わらないもの」「変えてはならないもの」もあるのです。ではその境目は一体どこにあるのか。境目研究家の安田が泉先生にあれやこれや聞いていきます。

 第26回「50年かかる変化」

前回第25回は「下がるべくして下がった生産性」

安田

労働法の改正で、企業の生産性を上げようって話ですけど。

はい。

安田

企業を変えるんだったら、経営者だけじゃなくて、労働者の側も変えないといけないですよね。

当然そうなるでしょうね。

安田

となると、根本である義務教育を変えないと、変わらないと思うんですけど。

いま変えようとしてますよね。

安田

それは、どのように?

センター試験は、マークシートをやめて「筆記式にする」という話であったり。

安田

それだけでは、変わりませんよね。もっと根本的な教え方を変えないと。

そうなんですけど。そういう教え方ができる先生がいないので。

安田

じゃあ結局、変わらない。

変わらないんじゃないですか。

安田

でも、変えないと。

安田さんだったら、どうやって変えるんですか?

安田

たとえば今、生産性の低い会社を強制的に退場させようとしてますよね。

はい。労働法の改正ですね。

安田

同じように、教育現場でも「できない先生」は退場してもらって、できる人と入れ替える。

先生は公務員なのでクビ切れないですね。

安田

民間ではクビを切らせても、公務員はクビ切らないってことですか?

そうです。クビは切れないので、自然減を待つしかない。

安田

私立の学校はどうなんですか?自分たちの判断で、教え方とか変えてもいいんですか?

小中は義務教育なので、カリキュラムが決まってます。小学校1年生で習う漢字とか。

安田

そのカリキュラムは変えてもいいんですか?

いや、ダメです。私立の学校にも税金入ってますので。

安田

税金入ってるから、文部省には逆らえないと。

そうです。

安田

でも、国公立よりは、まだ私立のほうが変えやすい気がしますけど。

それは、そうでしょうね。

安田

北欧の先進国とかでは、教育内容も教え方もどんどん変わってますよね。

宿題が廃止されたり。

安田

ですよね。日本はなぜ変わらないんですか。

まず、親が変わらないと、ダメですね。

安田

親ですか。

はい。親が「いい大学行けよ」って、塾に行かせてるうちは変わらないですね。

安田

大学の入試基準が「記憶して点を取る」ことから変わったら、塾の教え方も変わるんじゃないですか。

受験を根本的に変えるには、大学の存在価値を変えていく必要があります。「何のために大学があるのか」みたいなこと。

安田

順番からいったら、どこが最初に変わるんですか?もし日本の教育が変わるとしたら。

私は企業だと思います。今はまだ、そこをゴールに勉強しているので。

安田

じゃあ、まず生産性高い会社しか残らなくなって、採用する人員も変わって、それに合わせて大学も変わる。

はい。就職の優位性がないと、大学に生徒が集まりませんから。

安田

なるほど。じゃあ、企業が変わり、大学が変わり、高校が変わり……っていう順番ですか?

順番的にはそうなるでしょうね。

安田

じゃあ、小学校までいくの、だいぶ先ですね。

だいぶ先です(笑)

安田

そんなに先で大丈夫なんですか?

その間に外国から優秀な人材が、いっぱい入ってくるでしょうね。

安田

いまこの時代でも「ひたすら暗記する」っていう授業はあるんですか?

普通にありますよ。必修科目として。

安田

歴史の年表を覚えるとか、そういうのも?

小中学校はもちろんあります。基本なので。

安田

最低限の知識が必要のは分かるんですけど。年号とかを覚えても、あんまり意味ないような気がします。

その通りですね。本当はテストもiPadみたいなのを持ち込み可にするべきなんですよ。

安田

それは斬新ですね。

たとえば「江戸時代の特徴的な文化にこういうものがあります。なぜできたのかを検索してまとめなさい」みたいな。

安田

年表を覚えるよりは、ずっと実用的なスキルですよね。

はい。

安田

社会に出てもiPadとかを使って、検索しながら仕事しますからね。

そうなんです。iPadがあるのを前提で授業をやったほうが、理にかなってるんです。

安田

海外ではどうなんですか? iPadを使った授業。

普通にありますよ。

安田

やっぱり、あるんですか。

だって、ある方が自然じゃないですか。

安田

検索できるってことが?

はい。「検索して解を求めよ」とか、「検索して論文書け」とか。

安田

そうですよね。iPad使って答え導き出すのも、立派な能力ですからね。

そうです。

安田

日本はまだ、ぜんぜん遠いですね。

中学までは、とにかく禁止が多いですよ。

安田

そうなんですか。

うちの息子の行ってる中学なんて、昭和の校則がまだ残ってますから。

安田

どんな校則ですか?

「三つ編みをしてはならない」とか。

安田

なぜ、だめなんですか?三つ編み。

いや、わからないですね。

安田

「三つ編みだめ」って、訳わからないですよね。

あとは「携帯を学校に持ってきてはならない」とか、修学旅行も「これを持っていってはならない」とか。

安田

まあ、ルールは必要なんでしょうけど。あまり考えてない感じがしますよね。

考えてないですよ。単なる慣習みたいな。

安田

あるべき教育って、泉さんはどう考えてるんですか?

私は「全体像を教える教育」が必要だと思ってます。

安田

全体像?

大局的なことをしっかり教えてあげる。で「あと細かいことは自分で調べなさい」と。

安田

「覚える必要があれば自分で覚えろ」と。

そうです。いちばん大事なのは、大局を教えること。

安田

大局的なものの見方ってことですか?

そうです。何が大事なのかが分かる能力。

安田

確かに。それ大事ですよね。

知識より思考力のほうが大事ってことは、みんな分かってるわけですよ。

安田

政治家とか文科省の人とかも、分かってるんですか?

分かってるでしょうね。

安田

分かってるけど、変えたくないってことですか。

いや、変えるのがものすごく大変だということです。

安田

変えるためには、何が必要なんですか?

法律を変えないといけない、雇用のことも考えないといけない、先生たちの教育をやらなくちゃいけない、教科書も作り直さなくちゃいけない、などなど。

安田

なるほど。

膨大なる作業が待ってるわけです。

安田

いきなり教育革命みたいなことは起こらない?

今の体制では不可能ですね。

安田

じゃあ、教育の根本が変わるには、かなりの時間がかかると。

このままだったら50年ぐらいかかります。

…次回へ続く…


場活師/泉一也と、境目研究家/安田佳生
変人同士の対談


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第1回:「変わるもの・変わらないもの」
長い間、時間をかけて構築された、感覚や価値観について問い直します。

ブルー・オーシャン戦略は、未知の新大陸を探しだす作業ではありません。
新たなブルー・オーシャンは今いるレッド・オーシャンの中に無数に存在するのです。

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