さよなら採用ビジネス 第2回「ハローワークこそがブルーオーシャン」

このコラムについて

7年前に採用ビジネスやめた安田佳生と、今年に入って採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回のおさらい ①転職市場の変化、②組織における人材構成の偏り 第1回「人材の供給構造は完全に変化した」


安田

バブルの頃も人材不足でしたが、当時は採用にお金をかける事が出来ました。文系なら200万、理系なら300万はかかるよね、ということで企業は納得してお金を払っていました。当時は一人の社員がそれだけの利益を生み出せたんです。今は、高い採用コストに見合うほど利益を生み出してくれない。雇うことのうま味がなくなっていると思うんですよね。

石塚

その通りだと思います。

安田

採用できず求人広告を出し続ける会社は、未来がないんじゃないのかなという気もしていて。ずっと採用ビジネスしていた私がこんなこと言うのも何ですが。

石塚

安田さんの口からそういった言葉が出る、ということが象徴的だと思うんです。採用だけを切り離して考えられる時代は終わったと思います。

安田

そうかもしれませんね。

石塚

採り方を工夫することでは、もはや採用課題を解決できないんです。

安田

なるほど。

石塚

新卒の一括採用を否定はしませんが、新卒純潔主義を貫いている会社で良い会社をあまり知らない。

安田

変わって来ましたよね。

石塚

多様な人材、多様な採用手法を、受け入れたほうがいいです。

安田

というと?

石塚

新卒の採用方法を少し変えたぐらいで、会社の事業課題は何も解決しないんですよ。アサインを考えても社内に人材がいない。人材がいないとスキームが組めない。採用にお金をかけて絶対数をそろえれば売上が上がる、という時代は終わりましたね。

安田

ですよね。人を集めればいいという話でもないんですよね。その反面、人がいないと組織が成り立たないというのも事実で。

石塚

そうですね。

安田

とは言え、これまでの採用手法は限界に来ています。成果報酬型は、どんどん報酬が上がって行く割にいい人が来ない。求人広告型は、採れなければ採れないほど広告料をたくさん払わなくてはならない。

石塚

非常に逆説的ですね。

安田

にも関わらず、多くの経営者は求人広告費を払い続けています。何故なんでしょう?

石塚

かつての求人メディアはブランド化していたんですよ。そこに集まってくる人の質が比例していた。だから経営者は金を出す価値があった。

安田

昔はリクナビを使っていた人は優秀だったと。

石塚

そうです。それが今は、スマホの普及によって求人メディアのブランド力とその質が終焉しました。

安田

なるほど。その事実を多くの経営者は知らないと。

石塚

はい、その通りです。

安田

では、求人メディアに頼れない経営者は、今後どうすればいいのでしょうか?

石塚

私のお薦めはハローワークです。

安田

ハローワークですか?職安・・・ですよね。求人メディアよりもさらに人材の質が下がる気がするのですが。

石塚

失礼ながら、安田さんの感覚は古いです。ハローワークは今、一部の会社にとってのブルーオーシャンになっています。その背景にはスマホ普及の後押しがあるのです。安田さんは何か調べるときにスマホを使いませんか?

安田

はい、使います。若者がスマホを使って職探しをしていることも、もちろん知っています。

石塚

ですよね。今スマホで「求人」と入力すると、ハローワークの案件もたくさん上位表示されます。その求人情報が自分にとってグッとくる求人なのか、マッチする情報なのか。重要なのは、ただそれだけなのです。

安田

リクナビもハローワークも関係ないと?

石塚

リクナビネクストに載っているから、というのは企業側の問題。そういえば、安田さんはハローワークで仕事探したことあります?

安田

ないですね。

石塚

ハローワーク=職業紹介安定所。どこにも行けない人が集まる場所、というイメージが強いですよね。でも、皆さんは最近のハローワークを知らない。ハローワークには今、莫大な予算がかけられています。昔のような失業者救済というイメージではなく、現職者が積極的に転職に活用する場になりつつあるのです。

安田

それは知りませんでした。ハローワークに求人を出せば質の良い人材が採用できるようになったんですか?

石塚

ただ出しておくだけでは難しいです。ハローワークという求人インフラを、いかに上手く活用するかが重要です。

安田

確かに、考えてみれば国家規模の予算が投入されているわけですからね。市場という意味では莫大な数の魚がいるはずですよね。

石塚

はい。今のハローワークは求職者にとても手厚い。だからたくさんの魚が集まって来ます。ただし、求人企業側にとっては、ハローワークはとても使いにくい。そこが大きなネックになっています。

安田

求職者には優しいけど、求人企業には冷たい。ということですか?

石塚

はい。その最たるものが求人票への記載です。一番大事な部分に何を何文字書けばいいのか、案内もアドバイスもないんですよ。結果、単語が並んでいるだけの求人もあって、私はそれを「スカスカ求人票」と呼んでいます。

安田

スマホでその求人情報がヒットしても、魅力的でなければ応募しないですよね?

石塚

おっしゃる通りです。ハローワークの求人情報は上位表示されているのですが、せっかく上位表示されても無意味です。

安田

では魅力的な求人票を作ることが出来れば、媒体にお金をかけなくても応募者は集まると?

石塚

検索結果に何が表示されるかが重要であって、リクナビネクストに載っていること自体は何の魅力にもなりません。

安田

私は昔、採用コンサルという仕事をしていたのですが、どんなに素晴らしいアイデアを出しても、結局は広告掲載費が必要でした。でもハローワークであれば掲載費は無料ですよね。

石塚

掲載費が無料なだけでなく、掲載期間も無期限です。もちろん、ハローワークだけで全ての採用が完結するとは言いません。でも、ハローワークを活用しないのは、あまりにも勿体無い話です。ハローワークは日本最大の無料求人媒体であり、日本最大の無料人材紹介所でもあるのです。

 


石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

 

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