泉一也の『日本人の取扱説明書』第28回「依存の国」

泉一也の『日本人の取扱説明書』第28回「依存の国」
著者:泉一也

このコラムについて

日本でビジネスを行う。それは「日本人相手に物やサービスを売る」という事。日本人を知らずして、この国でのビジネスは成功しません。知ってそうで、みんな知らない、日本人のこと。歴史を読み解き、科学を駆使し、日本人とは何か?を私、泉一也が解き明かします。

「拗ねる(すねる)」は天照大神が天岩戸に引きこもったころから、日本独特の文化である。ドラえもんにスネ夫は欠かせない存在だがこのドラえもん、米国では全然売れない。のび太がドラえもんにいつも依存的で、米国が大切にする自立とは逆だからだ。子供の教育上良くないということだろう。

のび太はドラえもんに「甘える」。甘えを聞いてもらえないとのび太は拗ねる。拗ねるとドラえもんはかまってくれるので、甘えが成就される。甘えると拗ねるはセットとなり、日本における人間関係のベースになっている。その詳細は「甘えの構造」(土居健郎、1971年出版)に甘えるとして、甘える技術が高いつまり甘えることで相手の気分を良くすることができる人は、日本では人間関係がうまく築ける。

子供の頃に親にうまく甘えたことができた人は、大人になって人といい関係が築けるが、親に甘えたことのない人は、大人になって関係を築くのが苦手という例が多い。この人間関係は依存関係といえるが、米国化した日本では「依存は良くない」というイメージが先行する。果たしてそうだろうか。

自然界を見渡してみると、全ては持ちつ持たれつの関係で世界が動いている。食物連鎖に星の運行に、相互に補完しあって調和が保たれている。これを相互依存といい、日本人はお互い様という言葉で表現し、聖徳太子は「和」と言われた。我々の体には、細菌をはじめ他の生命体が100兆以上住み、それらが私という一つの生命体の存続を維持してくれている。

ということは、この大自然の法則である「相互依存」を使わない手はない。自立心を養うよりも相互依存能力を高める方が大事なのは説明するまでもないだろう。「自立せよ」と教育された人たちが、自ら努力し、勉強し、自力で試験に受かって公務員や会社員になっているが、その人たちほど役所や会社に支配されている。役所では、自分の意など全く介さず部署をたらい回しに異動させられ、会社では業績が悪いとさくっと切られる。これは相互依存ではない。ご恩と奉公の関係にあった封建時代の方がよっぽど相互依存である。現代の自立教育の先にあったのが、支配される世界だったとは皮肉なものである。

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