儲かると儲からないの境目

昔は中小企業もそこそこ儲かっていた。
今はなかなか儲からない。
そこに起きたのはどのような変化か。
昔は、そこそこ儲かる仕事が回ってきた。
採用にお金をかけなくてもそこそこ人が集まった。

休みが少なく給料はそこそこでも、
稼ぐために社員はみんな頑張って働いた。
どんどん仕事をとって、どんどん社内で回せば、
そこそこの収益をあげることは出来た。

今は、まったく儲からない仕事ばかりが回ってくる。
莫大な採用コストをかけないと人が集まらない。
休みは取らせなくてはならないし、
残業はさせられないし、
最低賃金はどんどん上がっていく。

社員は昔のように仕事をしたがらない。
ちょっと注意したらパワハラになる。
おまけにすぐに辞めてしまう。
これで儲かるわけがない。

ひとことで言えば、状況が変化したのである。
そこそこ儲かる仕事→まったく儲からない仕事。
人が集まる→人が集まらない。
安い給料で長時間労働→高い給料で短時間労働。

なぜここまで酷くなったのかと言うと、
根本的な解決策を練らなかったからである。
まず、仕事の単価が下がった。
その時、どのような手を打ったか。

報酬を抑えて社員を長時間働かせた。
社員はどんどん疲弊していく。
仕事の単価はどんどん下がる。
辞めていく社員が増えていく。
募集しても人は集まらない。

有給休暇は義務化し、残業規制が行われ、
最低賃金がどんどん上がっていく。
完全な負の連鎖である。
この連鎖を逆転させる方法はひとつしかない。
休みと給料を増やし、残業をなくし、
人が集まる会社にすること。

負の連鎖を正の連鎖に逆転させる正しい一手。
それは値上げしかない。
いかに高く商品を売るか。
この努力をあまりにも長い間サボりすぎたのである。
考えてみれば売上を増やす方法はふたつしかない。
たくさん売るか、単価を上げるか。

大企業はたくさん売るという方向に舵を切った。
ブランド力があり、資金力のある大企業でも、
勝ち残るのが厳しい戦略である。
実際に名だたる大企業がこの戦略で行き詰まっている。
中小企業がこの戦略をとって
生き残れる可能性はゼロである。

つまり中小企業が儲からなくなったのは
当然の帰結なのだ。
向かうべき方向、打つべき戦略を間違えていたのである。
絶対にやってはならないのは
安い仕事を我慢して受け続けること。
断固としてやるべきは高い仕事を生み出す努力。
我慢は努力ではない、
という事実を認めなくてはならない。

 


尚、メールマガジンでは、コラムと同じテーマで、
より安田の人柄がにじみ出たエッセイ「ところで話は変わりますが…」や、
ミニコラム「本日の境目」を配信しています。
毎週水曜日配信の安田佳生メールマガジンは、以下よりご登録ください。

メールマガジン読者登録

感想・著者への質問はこちらから