さよなら採用ビジネス 第88回「狙うべきターゲットを見極めよう」

この記事について

7年前に採用ビジネスやめた安田佳生と、今年に入って採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第87回『営業という職種の未来』

 第88回「狙うべきターゲットを見極めよう」 


安田

いま高卒が大人気みたいですね。「金の卵」に逆戻りって感じなんですけど、大卒が採れないからでしょうか?

石塚

 高卒が大人気なのは裏があって。高校生って基本的に「ひとり1社しか受けられない」って安田さんご存じですか?

安田

決まってるんでしたっけ?

石塚

はい。高卒の新卒採用って、そういう決まりなんですよ。

安田

3者面談みたいなのがありますよね。親と先生と。

石塚

「どこ行く?」みたいは話はまず親とするんですけど。基本的に学校の進路指導部は高校生ひとりに対して1社しか紹介しないんです。

安田

それは法律ですか?

石塚

慣例と言ったほうがいいと思います。

安田

へぇ。ちなみに「プロ野球選手になるか大学に進学するか」で、希望届けを出すじゃないですか。あれも一緒ですか?

石塚

一緒です。

安田

へぇ。なるほど。

石塚

どこが決めてるかというと、高校の進路指導部が決めてるんですよ。進路指導部が高校生という労働力をいわば配分してるんです。

安田

すごい既得権ですね。

石塚

で、これも慣例で、おそらく教育委員会から圧力というか指導があると思うんですけど、「基本、県内にしてくれ」って言うんですよ。

安田

県内?

石塚

はい。本人が「東京に行きたい」って言っても、「いや、だめだめ。地元だよ」って。基本的にはそれが大原則。もうひとつは「なるべく製造業に」って。

安田

なるべく製造業?今でも?

石塚

はい。

安田

へぇ。なんと時代遅れな。

石塚

基本的にそれを最終決定するのは進路指導部の先生なので。

安田

とんでもないですね。

石塚

はい。本当は複数を受けて本人に決めさせればいいんだけど。

安田

そりゃそうですよ。私だったら絶対にそんな決まりには従いませんね。

石塚

「まだ高校生なので判断能力が不十分だから」「高校の進路指導がちゃんとそれを補います」という建前で。

安田

じゃあ高校生の求人誌に広告を出したとしても、結局は学校に話を通さなきゃ採用できないってことですか?

石塚

そうなんですよ。

安田

だったら学校に直接頼んだほうが早いですね。

石塚

だから進路指導部にみんな群がる。高校生の求人倍率が高くなるカラクリはそれ。

安田

なるほど。ちなみに就職課に行けば採用は無料でできるんですか?

石塚

はい、一応建前は。

安田

建前は?

石塚

さっき言ったように、実際には優先順位が決まってるんですよ。

安田

地元の製造業でしたっけ。

石塚

はい。あとは1年生2年生のとき、インターンシップにちゃんと付き合ってくれる企業。

安田

高校生もインターンシップなんてやってるんですか?

石塚

やってます。

安田

へぇ。じゃあ企業はまずそれを引き受けないといけない。

石塚

なるべく職業体験とかインターンシップを引き受けなくちゃいけない。

安田

大学生のインターンシップとはまた別です?

石塚

別ですね。もっと現実的な職場や仕事を体験させるインターン。朝からその職場に行かせて、それを1週間2週間続けるので。

安田

そんなことしたら入る気がなくなりませんか。

石塚

たぶん、あると思いますよ(笑)

安田

じゃあ普通の中小企業が「大卒が採れないから高卒で」って言っても、そう簡単ではないよと。

石塚

そうです。結論から言うと、高校の進路指導の先生に心証をよくしてもらわないと採用できない。

安田

大卒採用より大変そうですね。

石塚

しかも今たくさん来てるから。倍率がものすごく高い。

安田

高校生が自分の意思で決めることは不可能なんですか?

石塚

いや、安田さんみたいな子もいます。「申し訳ないけど、先生が言うのはちょっと違うと思うんです」とか言って、「じゃあ、おまえ勝手にやれ」って。

安田

そういう人もいると。

石塚

滅多にいませんけど。

安田

そういう場合は「私はここに決めました」って、先生に報告に行くんですか?

石塚

おっしゃるとおり。

安田

でもそんな高校生は滅多にいない。

石塚

いません。

安田

ちなみに石塚さんは「大学の中退者」をよく勧めてるじゃないですか。それは何か理由があるんですか?

石塚

すごく狙い目なんですよ。大学の中退者ってあまり日の目を浴びていないので。「大学卒じゃないと嫌だ」みたいな企業が多いから。

安田

日本企業って、そういうところにこだわりますもんね。

石塚

はい。「中退した」って言うと、なんか中途半端、遊んでたようなイメージをもつから。

安田

そもそも中退者ってそんなにいるんですか?

石塚

中退者って想像してるよりもはるかに多い。どんどん増えてますし。

安田

へえ。でも確かに中退って「不真面目な人」というイメージがあります。実際は違うんですか?

石塚

はい。たまに「バンド活動に熱中しすぎて」とか「アルバイトにはまって」って人もいますけど。

安田

ほとんどは違う?

石塚

ほとんどの場合は大学の学費が払えなくなった人。もしくは日本学生支援機構のローンが「これ以上増えちゃうと返せないから、やめます」っていうケース。

安田

ということは、経済的な理由で中退してるけど「じつは真面目な人たち」だと。

石塚

はい。

安田

まあ能力的にいうと卒業よりは入学ですもんね。日本の場合。

石塚

そうです。基本的には卒業してなかろうが能力は同じ。

安田

早稲田や東大に入る能力があればポテンシャルは高いと。

石塚

にも関わらず大学を中退するといい正社員求人がない。アルバイトを転々としてるけど、なかなかチャンスが回ってこない。

安田

そこが狙い目だと?

石塚

とくに中小企業は20代前半の中退者にフォーカスするべき。ちょうどいい具合にハングリーさもあり、正社員で頑張りたいっていうのもあり。

安田

なるほど。いい大学に「入った」けど辞めざるを得なかった人。そこが狙い目だと。

石塚

はい。上位校でも15〜20%いますから。大企業はまずここを採らない。

安田

中小企業が中退者を採るにはどうしたらいいんですか?

石塚

採用ターゲットとして明確にすること。「大学をこんな事情で中退した人を弊社は歓迎します」「弊社は大学卒業扱いとして人事処遇します」って。ターゲットに喜ばれますよ。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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