7年前に採用ビジネスやめた安田佳生と、今年に入って採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第100回「肉というビジネス」
コロナで外食が大打撃を受けてますね。
もう大変なことになってます。
ケンタッキーやマクドナルドは健闘してますけど、いきなり!ステーキは大変そうです。
かわいそう(笑)
同じように肉を扱う飲食業なのに、どうしてこんな差が出るんですか?
ケンタッキーやマクドナルドは飲食店でもあるけど、製造業でもある。つまり、もともとテイクアウトするお客さんが一定数いる。
確かに。
製造小売業みたいな業態は、こういう事態には強いんでしょうね。
“いきなり!ステーキ”だってテイクアウトはやれるでしょ?
できなくはないけど、ぜんぜん別のビジネスモデルですからね。その分野に関しては素人だし。
やっても採算が取れないと?
本業を補うのはまず無理でしょう。もともと「いきなり!ステーキ弁当」みたいなものをやってたら、こういうときにカバーできたかもしれません。
なるほど。テイクアウトはそんなに甘くないぞと。
そもそもステーキって、おいしい肉を買って自分で焼いたほうがコスパが高い。
いや、そのとおりですね。
安田さんが“いきなり!ステーキ”食べても「なんじゃこりゃ」って感じでしょ?
「なんじゃこりゃ」とまでは言わないですけど。もう1回行こうとは思いません。おっしゃるとおり自分で焼いたほうがうまい。
そうですよね、やっぱり。率直に「この味だったらちょっと高くね?」って思う。
もうちょいおいしいんだったら行ってもいいですけど。お金出してまで食べるもんじゃないなって感じ。
たぶん安田さんは、あれが安くなっても行かないと思う。
行かないですね。
そうでしょ。「一律500円下げますよ」なんて言っても「俺をバカにするな」と。
「バカにするな」とは思わないですけど(笑)
「俺をうならせるようなA5の肉を持ってこい」みたいな。でも、そうするとお金がもっとかかっちゃうから。「それだったら自分で買って焼くわ」って。
まあそうなりますよね。
今は個人でもいろんないいお肉が買えるでしょ?
ネットで手軽に。ちょうどいい大きさに切り分けられて真空パックされてたり。
自分でちょっと料理できる人ならそうしますよ。
じゃあ“いきなりステーキ”のターゲットは自分で肉を焼けない人?
炭水化物を抜くダイエットに最適なメニューなんですよ。ライザップの追い風もあったでしょうし。ただ何百店舗も出すような業態じゃない。
店を出し過ぎたと。
前にも言いましたけど「いきなり!ステーキ」という業態をつくりすぎた。
それでいうとケンタッキーも相当偏ったメニューだと思うんですけど。
でもたまに行きません?
行きますね。なぜでしょう。フライドチキンはコンビニでも買えますけど「ケンタッキーのフライドチキン」がどうしても食べたくなる。
うん。わかる。
たまに、すごく食べたくなって、食べちゃうんです。
わかります。僕でいうコカコーラと一緒ですよ。
へぇ~。
たまに飲みたくなるんですよ。
すごくよくできてるなと思う。しょっちゅう食べたいわけじゃないけど、たまにあの味を思い出して食べたくなる。
あれはやっぱり持ち帰りに意味があるんですよ。
そうですね。最近だとウーバーイーツとか。
そうそう。「パーティーバーレル」ってわかります?
はい。あのバケツみたいな。
いまでもあれは「うわぁー!」って盛り上がる。
わかります(笑)
でも決して安くないじゃないですか。
結構高いですよね。なんだかんだ買ったら4〜5,000円になったり。
します、します。しますけど、ちょっと食卓が「おーっ!」と盛り上がる。
確かにワクワクしますね。マクドナルドにはそういうのがなくなりました。
マクドナルドは非常用というか。本当に食べる場所がなくて時間もなければ、消極的な選択としてマクドナルドを使う。
でもケンタッキーよりマクドナルドの方がはるかに店は多いです。
そこがケンタッキーの適正規模なんですよ。
ああ、なるほど。そこをきちんと守ってると。
はい。
いきなり!ステーキは適正規模を超えちゃった?
とっくに超えてますね。
沖縄には「やっぱりステーキ」という、いきなり!ステーキの偽物があるらしいです。でもそっちのほうが人気らしくて。
おいしかったりして(笑)
おいしくて安いそうです。まだ関東には来てないらしいですけど。
沖縄はステーキ文化の歴史もありますから。
たしかに沖縄でステーキ食べたらおいしい。沖縄に行ったら食べたくなります。
肉のルートがあるんでしょうね。
確かにステーキって肉を仕入れて焼いてるだけだし。
そのとおり。ケンタッキーみたいに「うちでしか出せない味」ってわけじゃない。
いきなり!は「立ち食いで低価格」ってのがよかったんでしょうか?簡単に真似できそうですけど。
いきなり!のビジネスコアは某商社の仕入れルートです。
じゃあ「仕入れが安いって」ことがすべて?
そのとおり。他じゃ絶対に契約できない仕入れルートを独占的に契約してる。だから社長は「いける」と踏んだんでしょうね。
へえ。でもいけなかった。
飲食業の経営の公式からいうとそれは正解なんですよ。「このレベルをこの値段で安定的に調達できる」から「勝った!」と思った。
なぜダメだったんですか?
一瀬さんが見誤ったのは、消費者は「もっとおいしいものを日頃からいっぱい食べてる」ってこと。ステーキばっかり食べに行かない。
たまに食べるんだったら、美味しい洋食屋さんのステーキもありますし。
そっちのほうがゆっくりできるし、美味しいし。
ソースにもこだわりあるし。つけ合わせやサラダも美味しいし。
そうなってくるんですよ。だから結局、焼肉と同じ。設備とか仕組みでは飲食業って制覇できないんです。
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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。