赤い出口、青い出口 第15回「溢れかえる社長」

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自覚して生きている人は少ないですが、人生には必ず終わりがやってきます。人生だけではありません。会社にも経営にも必ず終わりはやって来ます。でもそれは不幸なことではありません。不幸なのは終わりがないと信じていること。その結果、想定外の終わりがやって来て、予期せぬ不幸に襲われてしまうのです。どのような終わりを受け入れるのか。終わりに向き合っている人には青い出口が待っています。終わりに向き合えない人には赤い出口が待っています。人生も会社も経営も、終わりから逆算することが何よりも大切なのです。いろんな実例を踏まえながら、そのお話をさせていただきましょう。

第15回 溢れかえる社長

以前は起業する、独立するということに対して、とても高いハードルがあるように見えました。「社長」と言えばお金持ちで、長年やっていると人格者という名誉までもらえるような肩書でした。従業員を雇い、その雇用を守り、人生の道しるべとなり、会社を繁栄させていく。高い収入をもらい、羨望のまなざしで見られる肩書。それが社長でした。
ところが今はどうでしょう?
株式会社をつくるだけなら、30万円もかかりません。毎年10万円も払えば維持できます。すでに、「社長」は買える肩書ですし、独立や起業に対してのハードルは、ほぼ無いと言ってもよいと思います。
誰でも「社長」を名乗れるようになった現在は、社長の相対的地位が下がっています。

【無くなってしまった役割】

中小企業の場合、社長は会社内で「お父さん的な役割」がありました。私は創業60年以上の、中小企業にお世話になっていましたが、70歳前後のお年を召した方が、創業社長(故人)への恩義を懐かしそうに話してくださいました。
このように、何も知らない若者たちを、時には叱咤し、時には褒めながら、一人前の社会人に仕立て上げていく。古き良き人材育成制度が中小企業にはあったのです。

今はどうでしょうか?
古いタイプの熱血社長は、社員からは求められていないような気がします。
ある程度給与をもらえて、付き合いもほどほどに、ストレスを抱えず仕事をしていく。そんな社員に物足りなさを感じている中小企業の社長はたくさんいらっしゃるとは思います。
でも、そんな会社どっぷりの人材は、求めてもなかなかいるものではありません。
おそらく、社員は社長にお父さんを期待しなくなっているのです。

【社長の新しい役割】

社内・社外にかかわらず、社長という権威や存在が小さくなっています。
中小企業の場合、社長はあまり代わりません。なので、その自覚はないのかもしれません。ただ、いつのまにか社長の方が社員に気を遣っている姿をよく見ます。「社長、社長」と同じ呼び方をされていても、社長の意味するところが変わってきているのです。
そしてその姿を見るにつけ、社名や肩書に依存していたのは、社員ではなく、実は社長じゃないかと思うのです。

ゆっくりと時代が変わっていき、肩書が持つ役割も変わっていきます。
「社長だぞ!」と言っても、「はい、社長ね。」と返されてしまう日も近いかもしれません。

その一方で、社長が必要とされていることがあります。
社長じゃなきゃできない仕事があります。新しい役割とも言えます。
それは会社の考え方、方針を広く社会に伝え、自社へのファンを増やすということです。
社長個人のファンを増やすことだと、言い換えることもできます。

【社長(会社)のファンをつくる】

ネットの世界では広告は見向きもされません。企業の主張や宣伝はお客様に届かないのです。そして今、ネット上では、様々な個人が情報を発信しています。
良い人材を採用しようとしても、商品を売ろうとしても、新しいサービスを開発しても、お客様には上手に届かない世の中になってしまいました。
個人の発信する情報の方が、会社の発信する情報より伝わっていく力が強いのです。

中小企業において社長の言葉は、会社の方針であり約束です。会社の情報を個人の情報として発信することができるのは、社長しかいません。

肩書のチカラが弱くなった社長の、青い出口は、社長の考えやビジョンを世に出すことです。新しい仲間をつくることです。新しいお客さんの目に留まることです。ブログでもTwitterでもYouTubeでも構いません。広く、社内外に自身のビジョンを伝え続けることだと思うのです。少しづつ社長のファンが増え、商品が売れ、強い会社になっていくものと考えます。

 


- 著者自己紹介 -

人材会社、ソフトウェア会社、事業会社(トラック会社)と渡り歩き、営業、WEBマーケティング、商品開発と何でも屋さんとして働きました。独立後も、それぞれの会社の、新しい顧客を創り出す仕事をしています。
「自分が商売できないのに、人の商品が売れるはずがない。」と勝手に思い込んで、モロッコから美容オイルを商品化し販売しています。<https://aniajapan.com/>
売ったり買ったり、貸したり借りたり。所有者や利用者の「出口」と「入口」を繰り返して、商材を有効活用していく。そんな新規マーケットの創造をしていきたいと思っています。

出口にこだわるマーケター
松尾聡史

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