2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第109回「二極化は進むよ、どこまでも」
求人倍率がオイルショック以来の低水準だそうです。1.2倍。完全失業率もだんだん高くなってまして。
求人自体が消えちゃった業界もありますからね。
求人自体が消滅ですか。
とくに飲食、ホテル、サービス、小売という求人は、軒並み止まりました。
この先、失業者はどんどん増えるんでしょうか。
どうでしょう。コロナの影響を受けてしまった中小企業は控えるでしょうけど。
直接影響を受けてないところも控えはじめましたよ。
中小企業ってマクロに引きずられるので。ドミノ倒しみたいになって、過度に求人を絞る会社もあります。経営感覚がちょっとズレてるわけです。
ズレてますか。
あんまり報道されないけれど、積極的に採用してる会社も増えてるんですよ。
じゃあ失業率が上がってるのは、就職先を選んでるからですか?
そうだと思います。いわゆるエッセンシャルワークと言われる、社会に必要不可欠な職業、たとえば物流の求人はいくらでもある。
日本って、正社員を雇用するとなかなか解雇できないですよね。
はい。そういう法律ですから。
その影響もあって失業率が上がりにくいはずです。アメリカなんて桁違いですから。
アメリカは20%ぐらい行くかもしれない。もう深刻ですよ。
それに比べると日本はまだまだ失業率が低いです。労働法があるから解雇できないだけで、これから失業率がどんどん上がるんじゃないですか。
いやいや、労働人口が減ってるという事実は大きいですよ。求職する人の絶対数が減ってるので、失業率はそんなに上がらないと思います。
コロナといえども?
いまはコロナでこうなってますけど。つい1月までは超人手不足で、あらゆる業界で「人が足りない」って言ってましたから。コロナで少し落ち着いてるだけ。1.2っていう数字はべつに驚くほどじゃない。
この状態でも1を超えてるわけですからね。選ばなきゃあるってことですもんね。
そうです。選ばなければある。仕事自体はあるわけですよ。
まだまだ危機的状況ではないと。
たとえばターミナル駅周辺のホームレスの数とか、河川敷の青テントの数とかって、そんなに増えてないでしょう?
増えてないないですね。たしかに。
失業に関しては、社会不安になるほどの状況ではないと思います。
確かに「職がなくなった」という深刻な話は、あんまり聞かないですね。
派遣社員や契約社員は、企業の防衛策として「いったんすべて終了する」というのはあり得るでしょうけど。
でも派遣って、もともと派遣会社の社員じゃないですか。
そうですね。
だったら派遣会社は切れないでしょ。雇用契約を結んでるので。
おっしゃるとおり。ただ事業が立ちゆかなくなれば話は別ですけど。
じゃあここから、さらに失業率がガンガン上がるなんてことはない?1.2ぐらいでそろそろ止まるんですか。
求職に関して、そんな悲惨なことは起こらないと思います。
へえ。そうですか。
僕の現場感覚ではそうですね。
そろそろ求人案件も増えてくると。
さっきもふれましたが、いま積極採用してる企業さんは多いんですよ。
たとえばどういう業界ですか?
たとえば製造技術系の会社。技術力が商品力に直結するような会社は、積極採用してますね。
なるほど。そういう会社は「優秀な人をどれだけ取り込めるか」が勝負ですもんね。
はい。マスコミが脅かすから、手控える企業が増えてるだけ。積極策で一歩出たところはみんな成功してますよ。
いま採用活動をやれば、ローコストで結構いい人がとれちゃうと。
とれます。
でもそれに気づいてる会社は少ない?
多数派ではないだけ。たとえば新卒でも、理系採用なんかはかなり積極的ですよ。
そうなんですか。
オンライン面接を導入して、地方の理工系学生を狙いにいくとか。普段だったらなかなかとれないけれど、今はチャンスなので。
オンライン面接ですか。その場合は採用した後も「リモート」になるんでしょうか。
新卒でリモート勤務って難しいんですよ。安田さんだって、ゼロイチの人をリモートで教えるって難しいでしょう。
難しいですね。
リモート勤務って経験者じゃないと成り立たないんです。
なるほど。
仕事の土台づくりをリモートでやるのは無理じゃないですか。
ちなみに文系の就職状況ってどうなんですか?
厳しいです。
やっぱり厳しいですよね。
今年からより厳しくなります。
「バブル崩壊後よりひどくなる」とか「氷河期以下になるんじゃないか」って言われてますけど。
文系学生は「技術系の積極採用をやってる会社」にエントリーを変えるべき。
採用してもらえますか?文系でも。
自分次第ですよ。「文系出身だけれど技術や製品に関わる仕事ができます」って、積極的にPRしないと。じゃなきゃ生き残れない。
早めに自分で方向転換したほうがいいと。
実績がない文系学生はそれしかない。
実績のある新卒なんているんですか?
学生時代に起業してB/S・P/Lを回したとことがあるとか。産学プロジェクトで広報やマーケティングをやったことあるとか。新規のマーケットをつくったとか。
結構な実績ですね。
「売上をつくるのに、こういう経験をした」という実績。それがないと、僕だったらコンマ何秒で落としちゃいますね。
厳しいですね。
それが現実ですよ。
昔はゼネラリストとして「バランスの取れた人を育てる」ってことを、企業がやってましたけど。
企業もジョブ型採用にシフトしますから。ゼネラリストなんて役に立たない。
これまで人気のあった「新卒・文系・上位校」というのは、どうですか。
やはりフツーの文系学生は厳しいです。
じゃあ実績がない人はどうすればいいんですか。
エッセンシャルワーカーとして働くことを選ぶ。そうすれば、すぐにでも仕事できますよ。
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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。