2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
前回は 第126回「ぬるい会社の境目」
第127回「知的付加価値ビジネスの変貌」
地方の弁護士さんの仕事が、都市部の同業者に奪われてるそうです。
そうなりますよね。
「起こって当たり前」って事ですか。リモートワークの影響で。
まさにそうだと思います。僕は新潟出身なんですけど「裁判でやり合うんだったら、東京から弁護士呼べ」って言われますから。
有能な人は都心部に集まってると?
地方では“法曹三者”といわれる、弁護士・検察官・裁判官が、しょっちゅう顔を合わせるわけですよ。裁判所で。
狭い社会ですもんね。
メンバーが固定しちゃう。そうすると、やっぱり「このへんで」みたいな感じになるわけです。
お互いに忖度しちゃうと。
それは当然あると思う。だから本気でやり合う場合は「東京から関係ない人を呼んでガリガリやれ」って話になる。
じゃあ今までも東京の弁護士は地方に来てたわけですね。
そういう特殊なケースだけです。東京から呼べば日当も出さなきゃいけないし、交通費もかかる。コストがかさむわけですよ。
そりゃそうですね。
打ち合わせのたびに、新潟に来てもらわなきゃいけないから。
はい。
でもリモートで打ち合わせが済むのであれば、そんなに費用はかからない。
それは大きいですね。
だから顧問弁護士の仕事がどんどん都心に流れていく。
裁判以外でもニーズがあるんですか?
そりゃありますよ。そもそも優秀な人って打ち合わせの時間が短いじゃないですか。
間違いないです。料理人と同じで手際がいいというか。
リモートで30分話すだけで問題が解決したり。
都心には専門性の高い弁護士もいますからね。
そうなんですよ。それに優秀な人ならいろんなアイデアもくれるし。
一度相談したら、もう元には戻せないかもしれませんね。地元の弁護士さんでは物足りなくて。
「いままでの弁護士は何だったんだ?」ってことになりますよ。
ですよね。
もちろん優秀な方もいらっしゃるんですけど。多くの弁護士はこれまで殿様商売でやってきたはずだから。
これって都心の弁護士さんが積極的に攻めてるんですか?
うーん。「攻め込んでる」ってほどには感じませんね。
じゃあ自発的に。
ネットで調べれば、いくらでも優秀な弁護士さんは見つかるから。
そうですよね。
YouTubeでノウハウを提供してる弁護士さんもいますし。
YouTubeなんて見ますか?地方の経営者さん。
地方ほどSNSの影響は強いと思います。
そうなんですか。
地元以外の人と知り合う機会はどんどん増えてます。
じゃあ、今の弁護士さんに不満があるわけではない?
不満があるというより、悩みごとがあるんですよ。解決の糸口を知りたくて、いろいろ相談してるうちに繋がっていく。
「呼んだらすぐ来てくれる」みたいな地の利では、もうダメだと。
だってそもそもコロナで会えないじゃないですか。
確かに。近くにいてもリモートですからね。
だったら「別にこの人じゃなくていいんじゃないの?」ってなりませんか。
なりますね。
コロナで一気に経営者の感覚が変わっちゃったんですよ。
これは弁護士さんに限らず、あらゆるところで起きる現象ですか?
じっさい起こってます。たとえば経営コンサルの世界で。
コンサルって、足繁く通ってる人が多いですからね。
多かったんですけど。今はもう行けないじゃないですか。
来るなって言われちゃいます。
リモートになったら選択肢が一気に広がるわけですよ。
ちなみに求人の世界ではどうですか?
同じですね。私のところにも地方の方から相談が入ってきます。
へえ。採用なんて地の利が大きい気がするんですけど。「地元のメディアをよく知ってる」とか。
「もはや媒体の問題じゃない」って考え始めてる経営者が増えてます。
なるほど。
いままでの延長線じゃない答えを求めたときに、地元にはなかなか答えてくれる人がいない。選択肢がそもそも乏しいんですよ。地元って。
「リモートでいいや」となったら、選択肢は一気に増えますもんね。
新しい選択肢を「試しやすくなった」ってことじゃないでしょうか。
リモートは試しやすいですよね。わざわざ行かなくていいし、ダメならすぐ断ればいい。
そうなんですよ。ハードルがめちゃくちゃ低い。
地方の弁護士さんは大変ですね。
知的付加価値の提供型ビジネスは、もう距離の差がなくなってます。
情報やノウハウに距離は関係ないですもんね。
これからもっと激しくなりますよ。
まだまだ、これからだと。
今はリモートでやってみたら「解決できちゃった」って人が出てきてる段階。今後は爆発的に増える。
地方の仕事がなくなっていくと。
もちろん全部がそっちに行くわけではないです。自然は真空を嫌うから。
そのフレーズ好きですね。
そういう法則なんですよ。どんな分野でも必ず一定のマーケットは残ります。
地方は地方で生き残る人はいると。
でも「自分は生き残れる」とは思わないほうがいいです。
そんなに甘くないぞってことですか。
マーケットが半分になるってことは、それだけの競争が生まれるってことですから。
地方は地方で取り合いになるわけですね。
間違いなく。早く動いた人が勝ち残っていきます。
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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。