Uber Eatsとエンジニア? そこに共通点があると。
はい。Uberの自転車配達員とITエンジニア。どちらも基本、業務委託じゃないですか。
そうですね。
だから基本的には何の保障もないですよね。
社会保険に関してはそうですね。
労災保険って普通、従業員じゃないと入れないので。そこが変更になりますよという話で。
Uberの自転車配達員でも労災保険に入れるようになると。
自分で入らなきゃいけないんですけど。入れるようになります。
それはいつから?
この9月から改正されます。
労災保険って、そんなにメリットあるんですか。
日本の労災ってめちゃくちゃすごいんですよ。安田さんは入ってないと思いますけど。
労災って経営者は入れないですよね。
私、社長なのに入ってるんです。
え!入れるんですか?
入れるんです。これは裏技がありまして。
裏技?教えてください。
中小企業主の特別加入というもので、社長でも入れる。
失業保険にも入れるんですか?
失業保険は入れない。
ですよね。
社長って、失業してるかしてないか分からない状態じゃないですか。
確かに。給料が出ないことなんて日常茶飯事ですからね。だけど労災には入れると。
たとえば一人親方って呼ばれる建設業の人がいますよね。
はい。
親方さんは労災に入れるんです。だから仕事中に事故にあうと大きな補償が受けられる。今回はそれが自転車配達員とフリーのITエンジニアさんに拡大されます。
それは個人がお金を払って入るんですか。
はい。個人がお金払って入るんです。
じゃ、Uberが配達員を社保に入れなきゃいけないという話ではない。
違います。
個人は強制的に入らなくちゃいけないんですか。
いえ、入らなくてもいいんですけど。保険料もめちゃくちゃ安いので、変な保険に入るよりもずっといいです。
民間の保険よりいい?
「これだけ入っておけば大丈夫じゃないか」というレベル。特にITエンジニアさんなんて仕事の期間が長いから、保険に入ってないのは不安じゃないですか。
どこが保険をまとめてるんですか。
厚生労働省が管轄で、組合みたいなところが管理してます。
みんなから集めたお金を、組合が運用してるってことですか。
いえ。組合が集めて加入者に戻してるだけ。会社員が入ってる労災と同じです。
国に預けておくと、いつの間にかいらない建物造ってたりしますけど。
それはまた別の問題ですね。
久野さんは「民間の保険に入るより条件がいい」って言うじゃないですか。
そこは間違いないです。
民間の保険会社って資金を運用して増やしてますよね。彼らは金融のプロだし、結果的にこちらの方がリターンは大きそうに見えるんですけど。
そこは安田さん、認識が間違ってます。
間違ってますか。
そもそも保険会社の手数料が含まれてるので。
営業マンの報酬とかですか?
それもありますね。当然、企業の利益も含まれてます。
運用して増やすより、何もしない方がリターンは大きいってことですか。
労災はカバーしてる範囲が非常に狭いんです。逆に言うと絞り込んでいて。相互扶助の考えなので。
銀行借り入れの団信みたいなものですか。
そうです。国民全員から集めて、仕事中に亡くなった人だけに大量に補償するという制度。だから資金効率はめちゃくちゃいいです。
利害関係はなしだと。
誰も儲けようとは思ってなくて。国民団体からプールしてるだけ。だから何もなければ返ってこないです。
つまり掛け捨てってことですか。
掛け捨てですね。
掛け金はいくらぐらいなんですか?
補償額は自分で選べるんです。たとえば日額1万円の補償をもらうとすると、ITエンジニアだと年間1万950円。
月1000円弱ですね。
そうです。死んだら奥さんに年間153万円、奥さんが死ぬまでずっと払われます。
年間153万円で生活できますか、奥さん。
それは年間で1万ちょっとしか保険料を払ってないケース。2万円払ったら、その2倍もらえます。
ということは年間3万円払っておけば、奥さんは死ぬまで459万円もらえるってことですか?
いえ。2万5000円までしか払えないので。
上限があるんですね。
はい。マックスの掛け金が年間2万7375円で、死んだら奥さんが382万5000円受け取れます。
それが死ぬまでずっと続くと。すごいですね。
障害はもっとすごいですよ。障害1級だと782万5000円。
そうか。生きてる方がお金かかるから。
はい。782万5000円が死ぬまで払われるんです。
なぜ運用もしていないのにそんなに払えるんですか?
皆さんが思うほど人は死なないんですよ。
なるほど。変に運用するより、集めたものをきちんと分配した方がいいと。
はい。
営業マンの報酬も保険会社の利益も持っていかれないし。
そうなんですよ。
ITエンジニアやUber Eatsやるんだったら入っておけと。
入れる労災には絶対に入った方がいいです。
久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/
安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。