「新ビジネスを始める前に必ず考えたいこと」〜お医者さんは、なやんでる。 第84回〜

第84回 「新ビジネスを始める前に必ず考えたいこと」

お医者さん
お医者さん
自由診療を導入して半年、だいぶ売上が伸びてきたな。やはり保険診療とは違う。
お医者さん
お医者さん
この調子で、新しい事業をスタートしてみるのもよさそうだ。「皆が保険診療から抜け出せていないうちにいろいろチャレンジするのが重要だ」と、あのコンサルさんも言っていたし。
そのコンサルさんとは、もしかして私のことでしょうか。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
あ、噂をすれば! 確かお名前は……
ご無沙汰しております、ドクターアバターの絹川です。お医者さんの様々な相談に乗りながら、「アバター(分身)」としてお手伝いをしている者です。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
そうだそうだ、ドクターアバターの絹川さんだ。いや、あなたにお礼を言いたかったんです。いただいたアドバイスに従って自由診療を取り入れてみたんですが、これがなかなか当たってまして。
そのようですね。なんだか先生ご自身も、先日お会いしたときより生き生きされているような。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
わかります?笑 そうなんです。売上がよくなっただけじゃなくて、なんと言うんでしょうね、毎日の仕事が以前より楽しくて。保険診療のような誰かが作ったルールの中でやりくりするのではなく、自分自身で商品開発や値付けを行ったからかもしれません。
いいですねえ。長期的に見れば売上よりその「楽しさ」の方がずっと重要ですよ。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
そうですよね! なのでもっと楽しくするために、また別の事業を始めてみようかなと思っているんです。
なるほど……でもそれはちょっと待ったほうがいいかもしれませんよ。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
え!? だって絹川さんが言っていたんですよ、いろんなことにどんどんチャレンジしたほうがいいって。
確かに言いましたね。そしてその考えに嘘はありません。ただ一方で、事業が増えることの「デメリット」も考えた上で判断しないといけません。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
デメリット? そんなのありますかね。事業が増えれば売上も増えるし、絹川さんの言っていた「楽しさ」だって倍増しそうなものですが。
単純にそうだとは言えないんです。端的に言えば、事業が増えるとそれだけ先生が忙しくなっちゃうんです。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
なんだ、そんなことか。もちろんそれはわかってますよ。でも、まだまだ働き盛りですし、バリバリ頑張るつもりです。
いえ、そういった体力的なことではなく、どちらかというと「意識が分散」することが心配なんです。
絹川
絹川
事業が1つのときは、先生はその事業に100%注力できます。だからこそクオリティの高い商品やサービスが作り出せ、結果それが売上にもつながってくる。しかしこれが2つになればどうでしょう。単純に割れば、それぞれの事業に対して50%ずつの力しかかけれなくなる。すると、どういう事が起こるでしょうか。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
そうか……新しく始める事業は50%のクオリティにしかならない。それだけじゃなく、成功していたもともとの事業も50%のクオリティに下がってしまう可能性がある、と。
仰るとおりです! ですからもうしばらくは、半年前に始めた事業をより盤石なものにしていく方向性がいいのではないかと思います。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
より盤石なものに? 例えばどんなことですか?
そうですね。もちろん、商品やサービスのクオリティをもっと上げていくのも一つです。ですが個人的には、「いまのクオリティを保ったまま、先生の手間を減らしていく」というのがオススメですね。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
! なるほど! それを続けていけばつまり……
はい、新しいビジネスに100%注力できる状況に近づいていくんです。基本的にはこんな風に、新事業立ち上げ→かかる手間を減らしていく→それによって生まれた時間的・精神的余裕を新ビジネスの企画や準備に充てる、というサイクルが理想的かなと思います。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
うん、確かにその通りだ!
逆に言えば、手間を減らすことをしないまま新しいことをどんどん始めてしまうと、先ほどの先生の話のように、すべての事業が同時に崩壊してしまう可能性も出てきます。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
うーん、怖い。でも確かに、事業計画は既存事業への影響も考えながらやらないといけませんね。
そういうことです。それぞれ担当者を置ける大企業とかならまだいいんですけどね。先生のようにご自身ですべて見ている場合は特に注意が必要です。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
そうだね。経営の面でも「医者の不養生」にならないよう気をつけなくちゃ(笑)

医療エンジニアとして多くの病院に関わり、お医者さんのなやみを聞きまくってきた絹川裕康によるコラム。


著者:ドクターアバター 絹川 裕康

株式会社ザイデフロス代表取締役。電子カルテ導入のスペシャリストとして、大規模総合病院から個人クリニックまでを幅広く担当。エンジニアには珍しく大の「お喋り好き」で、いつの間にかお医者さんの相談相手になってしまう。2020年、なやめるお医者さんたちを”分身”としてサポートする「ドクターアバター」としての活動をスタート。

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