2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第185回「テレビと一蓮托生の運命」
電通や博報堂がもう通用しない?
はい。
広告の効果が落ちてるってことですか。
デバイスが変わってきてるじゃないですか。
デバイス?
要するに何で広告を見るのか。
テレビからパソコンになり、スマホにってことですね。
一言でいうと「ヨコ」が「タテ」になってしまったってこと。
スマホでタテになっちゃったと。
2008年はリーマンショックなんですけど。あの頃のテレビ市場って3.3兆円あったんです。それが今は半分ぐらいになってしまった。
半分ですか。
じつはスマホが日本に登場したのって2008年10月なんですよ。
すごい偶然ですね。
SNS広告って2008年にはまだ存在してないんです。デバイスがないから。それがわずか10年で5,500億円市場にまでなってる。
今やテレビでもYouTubeを見たり。
おっしゃる通りなんですけど、テレビでYouTubeを見る世代って、ちょっと上なんですよ。
若い子は見ないんですか。
うちは高校生2人と中学生が1人いるけど、誰もテレビで見てないです。
スマホでマンガや映画を見てもあまり迫力ないですけどね。
結局は育ったときのデバイスなんですよ。どれが身近だったかってこと。
なるほど。若い子はスマホでもまったく違和感ないわけですね。
われわれの世代は、ちょうどテレビとスマホの間ぐらいで、意外にパソコンで見てません?
見てます。パソコンでYouTubeとか。
僕もテレビよりも、スマホよりも、パソコンで動画を見てる時間が長いです。
動画を見るときはスマホじゃなくてパソコンですね。
その方がしっくりするじゃないですか。
します、します。
それって縦横が関係してると思う。
スマホで動画を見るとしても横向きにしちゃいます。
安田さんはTikTok見ませんか?うちは大画面テレビの前で、子どもたちがスマホでTikTokを見てます。
見ます、見ます。TikTokは縦ですね。確かに。
高校1年生の次女なんてTikTok見まくりですよ。
あれは見ちゃいますね。
たまに嫌がられながら見せてもらうんですけど(笑)よくできてますよ。
ずいぶん前から言われてますけど、テレビの時代は終わるんでしょうか。じっさいテレビタレントもYouTubeに行ったり。
時の流れですね。
一方で「やっぱりテレビに出たい」って人もいて。ユーチューバーがテレビに出たり。
テレビはゼロにはならないけど、限りなく小さくなるでしょうね。タレントもさっきのデバイスと一緒。
変わっていくってことですか。
我々は職業タレントしかイメージできないですけど。たとえばグリコのポッキーってあるじゃないですか。
はい。
我々世代のポッキーって、田原俊彦とか松田聖子でしょ?
そうですね。
で、ちょっと前までは新垣結衣。ところが今はそういうタレントを立てるんじゃなく、素人が動画を上げてどんどん参加する。
そんなので売れるんですか。
私も知らなかったんですけど、TikTokで成立している素人タレントって山ほどいるんですよ。
へえ〜。
タレントというものの概念も、もはや「テレビで認知された人」じゃない。そういう世界が急速に広がってます。
ネットからテレビに進出する人もいますよね。ヒカキンとかフワちゃんとか。
素人と玄人の境界線というか、もうタレントの定義が変わってきてる。
確かにどこまでが素人か分からなくなってます。
そうなんですよ。
一方で、今でもポッキーのテレビCMは続いてるじゃないですか。売れるからやってるわけですよね。
40代から上の層がまだテレビを見て買ってくれるから。
今のテレビ局は全体の視聴率より「若者が何%見てるか」を重視してるそうです。
そういう流れですね。
年配の人に向けてCMをやったほうが儲かると思うんですけど。
これまでの番組作りがまさにそうだったんですよ。
それで若者が離れていって。
おっしゃる通り。テレビ局は若者をもう一回テレビに取り戻したい。
若者を取り込むならネット広告の方が効率いいですけど。
ナショナルクライアントといわれる有名大企業は、まだTikTokみたいなSNS広告に懐疑的だから。
まだ懐疑的なんですか。ここまできて。
電通・博報堂の影響があると思います。「炎上リスクがあります」「15秒ぐらいじゃなにもプロモーションできません」って。古い枠組みを維持したいんですよ。
ネットじゃ大して広告費が取れないからでしょうね。
おっしゃる通り。桁が飛んじゃいます。
自分達に不利な提案はしないと。
だから電通・博報堂のデジタルマーケティング部門、ネットマーケティング部門の優秀な人は、ぜんぶ出ていってしまう。
末期的ですね。
ネットクリエイティブで優秀な人は本流にはなれないんです。電通も博報堂も本流はテレビだから。
いまだに本流はテレビなんですか。
だって本流がSNSって言った瞬間に、組織人事ぜんぶ壊れますから。
テレビ業界と一蓮托生になってるわけですね。
テレビ局は山ほど不動産を持ってるから、最後は不動産収入で食えるわけです。
社員もそんなに多くないし。
おっしゃる通り。だけど広告代理店はそれだときつい。社員もたくさん抱えてるし人件費も高い。
大手広告代理店はどうなっていくんですか。
日本の65歳から上の世代が死んだら終わりだと思います。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。