第185回「テレビと一蓮托生の運命」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第184回「社長と社員は男女の関係!」

 第185回「テレビと一蓮托生の運命」 


安田

電通や博報堂がもう通用しない?

石塚

はい。

安田

広告の効果が落ちてるってことですか。

石塚

デバイスが変わってきてるじゃないですか。

安田

デバイス?

石塚

要するに何で広告を見るのか。

安田

テレビからパソコンになり、スマホにってことですね。

石塚

一言でいうと「ヨコ」が「タテ」になってしまったってこと。

安田

スマホでタテになっちゃったと。

石塚

2008年はリーマンショックなんですけど。あの頃のテレビ市場って3.3兆円あったんです。それが今は半分ぐらいになってしまった。

安田

半分ですか。

石塚

じつはスマホが日本に登場したのって2008年10月なんですよ。

安田

すごい偶然ですね。

石塚

SNS広告って2008年にはまだ存在してないんです。デバイスがないから。それがわずか10年で5,500億円市場にまでなってる。

安田

今やテレビでもYouTubeを見たり。

石塚

おっしゃる通りなんですけど、テレビでYouTubeを見る世代って、ちょっと上なんですよ。

安田

若い子は見ないんですか。

石塚

うちは高校生2人と中学生が1人いるけど、誰もテレビで見てないです。

安田

スマホでマンガや映画を見てもあまり迫力ないですけどね。

石塚

結局は育ったときのデバイスなんですよ。どれが身近だったかってこと。

安田

なるほど。若い子はスマホでもまったく違和感ないわけですね。

石塚

われわれの世代は、ちょうどテレビとスマホの間ぐらいで、意外にパソコンで見てません?

安田

見てます。パソコンでYouTubeとか。

石塚

僕もテレビよりも、スマホよりも、パソコンで動画を見てる時間が長いです。

安田

動画を見るときはスマホじゃなくてパソコンですね。

石塚

その方がしっくりするじゃないですか。

安田

します、します。

石塚

それって縦横が関係してると思う。

安田

スマホで動画を見るとしても横向きにしちゃいます。

石塚

安田さんはTikTok見ませんか?うちは大画面テレビの前で、子どもたちがスマホでTikTokを見てます。

安田

見ます、見ます。TikTokは縦ですね。確かに。

石塚

高校1年生の次女なんてTikTok見まくりですよ。

安田

あれは見ちゃいますね。

石塚

たまに嫌がられながら見せてもらうんですけど(笑)よくできてますよ。

安田

ずいぶん前から言われてますけど、テレビの時代は終わるんでしょうか。じっさいテレビタレントもYouTubeに行ったり。

石塚

時の流れですね。

安田

一方で「やっぱりテレビに出たい」って人もいて。ユーチューバーがテレビに出たり。

石塚

テレビはゼロにはならないけど、限りなく小さくなるでしょうね。タレントもさっきのデバイスと一緒。

安田

変わっていくってことですか。

石塚

我々は職業タレントしかイメージできないですけど。たとえばグリコのポッキーってあるじゃないですか。

安田

はい。

石塚

我々世代のポッキーって、田原俊彦とか松田聖子でしょ?

安田

そうですね。

石塚

で、ちょっと前までは新垣結衣。ところが今はそういうタレントを立てるんじゃなく、素人が動画を上げてどんどん参加する。

安田

そんなので売れるんですか。

石塚

私も知らなかったんですけど、TikTokで成立している素人タレントって山ほどいるんですよ。

安田

へえ〜。

石塚

タレントというものの概念も、もはや「テレビで認知された人」じゃない。そういう世界が急速に広がってます。

安田

ネットからテレビに進出する人もいますよね。ヒカキンとかフワちゃんとか。

石塚

素人と玄人の境界線というか、もうタレントの定義が変わってきてる。

安田

確かにどこまでが素人か分からなくなってます。

石塚

そうなんですよ。

安田

一方で、今でもポッキーのテレビCMは続いてるじゃないですか。売れるからやってるわけですよね。

石塚

40代から上の層がまだテレビを見て買ってくれるから。

安田

今のテレビ局は全体の視聴率より「若者が何%見てるか」を重視してるそうです。

石塚

そういう流れですね。

安田

年配の人に向けてCMをやったほうが儲かると思うんですけど。

石塚

これまでの番組作りがまさにそうだったんですよ。

安田

それで若者が離れていって。

石塚

おっしゃる通り。テレビ局は若者をもう一回テレビに取り戻したい。

安田

若者を取り込むならネット広告の方が効率いいですけど。

石塚

ナショナルクライアントといわれる有名大企業は、まだTikTokみたいなSNS広告に懐疑的だから。

安田

まだ懐疑的なんですか。ここまできて。

石塚

電通・博報堂の影響があると思います。「炎上リスクがあります」「15秒ぐらいじゃなにもプロモーションできません」って。古い枠組みを維持したいんですよ。

安田

ネットじゃ大して広告費が取れないからでしょうね。

石塚

おっしゃる通り。桁が飛んじゃいます。

安田

自分達に不利な提案はしないと。

石塚

だから電通・博報堂のデジタルマーケティング部門、ネットマーケティング部門の優秀な人は、ぜんぶ出ていってしまう。

安田

末期的ですね。

石塚

ネットクリエイティブで優秀な人は本流にはなれないんです。電通も博報堂も本流はテレビだから。

安田

いまだに本流はテレビなんですか。

石塚

だって本流がSNSって言った瞬間に、組織人事ぜんぶ壊れますから。

安田

テレビ業界と一蓮托生になってるわけですね。

石塚

テレビ局は山ほど不動産を持ってるから、最後は不動産収入で食えるわけです。

安田

社員もそんなに多くないし。

石塚

おっしゃる通り。だけど広告代理店はそれだときつい。社員もたくさん抱えてるし人件費も高い。

安田

大手広告代理店はどうなっていくんですか。

石塚

日本の65歳から上の世代が死んだら終わりだと思います。

\ これまでの対談を見る /

石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

感想・著者への質問はこちらから