私(安田佳生)が終わりを意識し始めたのは、まさに終わった時。すなわち会社が潰れた時です。終わると思っていなかったことが終わる。そのとき痛感したのは「終わりを想定していなかった愚かさ」です。会社にも、人生にも、あらゆるものに終わりはあります。終わることが問題なのではなく、自覚がないままに終わっていくことが問題なのです。この対談は、ご葬儀というまさに「人生の終わり」を仕事にしている鈴木社長に、私の率直な疑問をぶつけたものです。社長の終わり、社員の終わり、夫婦や友達の終わり、そして人生の終わりについて。終わりから考えた二人の対談をぜひご一読ください。
『夫婦の絆は必ず終わる』


たとえば?




なるほど。

子どもは親から離れていくのが正しい姿だし、親は必ず死ぬものだし。


はいはい。医者を呼んで母親を蘇生させようとした人ですよね。断った医者を散弾銃で殺しちゃった。

あれも根っこは同じでしょうね。

同じだと思います。彼の中では親が終わってないんですよ。ちゃんと親離れできてなかった。



蘇生したって、もう長いことないじゃんって思うけど。

もはや天命ですよ。

受け入れられないんでしょうね。

でも受け入れるしかない。順調にいけば親は必ず死ぬんです。





答えられないでしょうね。

はい。きっと答えられない。

「ずっと生きてて欲しい」って言うんじゃないですか。

べつに「親を殺せ」と言ってるわけじゃなく。死んでもいいように準備しておくべきだと言いたいわけです。

まさに親離れですね。

親も同じですよ。子離れしなくちゃいけない。自分の元からいなくなることを考えておくべき。終わりは必ずあるんです。

子離れはできてる自信ありますね。子どもが3人とも高校生の時に留学してるので。その時点で何か吹っ切れた。


「いなくなるってこういうことか」って経験できた。だから、いつかそうなるという覚悟ができました。奥さんもそう。どっちが先に死ぬか分からないけど。覚悟してます。

すごいですね。


夫婦の場合は「別れる」という終わりもありますよ。


あるんですか(笑)



そうですよね。

私は両親がすごく仲がよくて。「生まれ変わってもまた一緒になるんだ」って、いつもふたりで言ってましたね。

幸せな家庭ですね。

だから自分も離婚なんて考えたことなかったんです。子供も3人いましたし。だけど結婚してすぐに奥さんに「別れたい」って言われた。








でも今はちょっとだけ、彼女の気持ちがわかるようになりました。










どんなに仲良くても「必ず夫婦は破たんする」という前提で考えるべきだ、と思ってまして。




一緒ですね。私は1回目の離婚でそれを学習しました(笑)


相手のせいにしたり、相性の問題だと思ってる人は、何度も同じ失敗をすると思う。「相手が変わったから今度は大丈夫」みたいに。

それは転職と一緒じゃないですか。




なんと。8ですか。



ひとり友だちを増やそうと思ったら、ひとりお断りしないといけない(笑)





その年の人の順位を決めてる。





友達という名の下に、ダラダラ関係をつづけるのはよくない。たとえば「本を年間に1,000冊読む」みたいな人いるじゃないですか。

いますね。

ああいうのはどうも好きじゃないんですよ。Googleの計算によると世界には1億4000万冊ぐらい本があって。

へえ〜。

毎年1000冊読んだって50年で5万冊。つまり0.04%も読めない。

なるほど。

時間は限られてるじゃないですか。だから人生で読める本の数もとうぜん決まってる。手当たり次第に毎年1000冊なんて読んじゃいけないんです。

流行りの本にすぐ手を出しちゃいけないと。

そういうことです。たとえば「人生で10冊しか読めない」という決まりがあったら、「自分はこの本を読むんだろうか?」って真剣に考えるじゃないですか。

なるほどねえ。

映画でも、生涯で10本しか観られないってなったときに、この映画を観るのか。それでも観たいってものを選ぶべきかなと。人生は限りがあるので。

どういう基準で選んでいくかってのが、すごく大事になってきますね。

選ぶってこと自体が大事ですよ。終わりを考えないと選ばないんです。きのうと同じことをダラダラ繰り返してしまう。ダラダラ本を読んだり、ダラダラ人とつき合ったり、ダラダラ仕事をつづけちゃったり。

確かに。

やっぱりエンドを考えるってのがすごく大事な気がします。鈴木社長もぜひ友だちを5人に決めていただいて。

そうなると利害関係じゃないなあ。

ちがいますよね。利害関係ってそんなに上位には来ないんです。

やっぱり「好き嫌い」になるなと思います。というか、なるべきです。

本も同じで「これ読んだら営業力が身につく」みたいな本じゃなく、心が欲する本とか好奇心をそそられる本を読むべき。

直感を信じることは大事ですよね。
- 第1話「社長は自ら終わりを決める」
- 第2話「会社員も終わりから考える」
- 第3話「夫婦の絆は必ず終わる」←本記事
- 第4話「生きるとは死ぬこと」
対談相手:鈴木 哲馬
株式会社濃飛葬祭(本社:岐阜県美濃加茂市)代表取締役
昭和58年創業。現在は7つの自社式場を運営。