2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第214回「大人気！新卒ドライバー？」
え！四大卒タクシードライバーが増えてる？
少しずつ人口が増えてきています。
それはアプリが影響してるんですか？
間違いなく影響していますね。流しで拾わなくてもアプリ取るだけで成り立つし、乗務員が極端に不足しているから丁寧に育ててくれる。しかも給料は高い。
そんなに給料高いんですか。
高いです。おそらく基本給だけでも年収500万は下らないはず。
えっ！タクシーってそんなに稼げるんですか！？
はい。プラス歩合が乗るから、ちょっと頑張ると年収700万以上いけるはず。
なんと。それは新卒でも？
そうです。
そんなに稼げるんですか！
安田さんのリアクションを見てもわかるとおり、「えっ、そんなにもらえるんだったら、僕も私もやりたいな」という層が出てきているわけです。
とはいえドライバーじゃないですか。「高い学費を払って大学を卒業して、タクシーの運転手なのか」みたいに思わないんですか？
「人からどう見られるか」を意識しないのであれば、理に適った選択ですよ。
重労働そうですけど。
「1日勤務すると丸1日休んで、また丸1日」みたいな感じ。
1回の勤務時間が長いイメージですけど。
勤務時間は長い。けど平均すると、月の勤務日数は19.5日ぐらいなんですよ。
そうなんですか。
はい。
それは8時間計算で？
そうです。
ということは、給料をもらう側としては生産性が高い。
高いんですよ。「今日は仕事だ！がんばるぞ！」で、終わったら帰って寝て、次の日は1日休みという生活って、悪くないと思いません？
悪くはないですけど。私のイメージではタクシーってすごく景気に左右される気がして。日本は今めちゃくちゃ景気が悪いじゃないですか。
おっしゃる通り。
タクシーの売上も落ちてるでしょ。「タクシーは稼げない」ってずーっと言われてた気がします。いつの間に、こんな稼げる仕事になっちゃったんですか。
まず、タクシー会社が減ったせいですよね。
それは淘汰されて。
合併・吸収で。
そうなんですか。なるほど。
それから、タクシーの台数も減りましたよ。
都心にいるとタクシーだらけなので、ぜんぜん分からないです。
けどタクシーに乗る人は一定数いるから、なくなりはしない。
まあそうですね。
アプリもあるから、新たな需要も取れるし。
タクシーって「乗りたいときにはぜんぜん来ない」「いらないときにはたくさん来る」みたいなイメージです（笑）
そうそう。だからアプリなんですよ。
たしかに、勘で街を流しながら客を拾うって、曲芸みたいな仕事ですもんね。
おっしゃる通り。昔はナビゲーションシステムもないから、道も覚えなきゃいけなかったし。
今はナビもありますからね。
ナビがあってアプリがある。だからやる気があれば誰でもできる。
たしかに。
つまり「職人から仕事を奪った」ということが、大卒タクシードライバーが可能になったということでもあるわけですよ。
乗る側からしたら、変なおじいちゃんドライバーより、若くてちゃんとコミュニケーションできる人の方が嬉しいですよ。
おっしゃる通り。ついこの間も入社2年目23歳の男性ドライバーで。もう本当に「チップを渡そうかな」というぐらい気持ちがいい。「がんばって！」って言いたくなる。
タクシーの運転手って、極端に愛想悪いか、やたら話しかけてきて面倒くさいか。あとはヨレヨレのジャケットで清潔感がなかったり。
今はぜんぜん違いますよ。とくに新型の、ほら、背が高い台形型のタクシーあるじゃないですか。ドアがスライド式の。
あれが来るとうれしいです（笑）
うれしいですよね。あれには空気清浄機も相当なものがついていて。
へぇ～。
タクシーといえば、おじさんの加齢臭が充満してるイメージでしょ。
おじさん臭いタクシーに当たると、かなり凹みます。自分もおじさんのくせに（笑）
分かります。僕だって乗りたくないですもん。すぐに窓を開けたくなっちゃう。
「GO」だとタクシーを選べるんですか？
「GO」だと新型かどうかわかります。
すばらしいですね。もう古いタクシーには誰も乗らなくなっちゃいますね。
どんどん淘汰が進みますよ。
大卒の若くてコミュニケーション力のある子がちゃんと稼げて。考えてみたらいい仕事ですよね。
そうなんですよ。それをわかって実を取り始めている。卒業するときに借金を背負って出てくる学生が多いことも背景にあります。
奨学金ってことですか？
そう。400万〜600万規模の学資ローンを背負って出てくる。年収600万〜700万だったら返せるじゃないですか。
たしかに。
返せたら、次に結婚もできるじゃないですか。
20代で普通に就職したら、下手したら年収300万円台ですもんね。
そんなのぜんぜん珍しくないです。下手したら200万台とかですよ。
みんな合理的に選んでいるということなんですね。
とくに女性のドライバーが多いんですよ。四大卒で新卒ドライバーで女性の比率がけっこう高い。
そうなんですか。
「女性が選ぶものは続く」というふうに僕はみています。
女性が選ぶ仕事というイメージではないですけど。
今は大きく変わってきてます。
たとえば？
1台のタクシーを2人でシェアするんですけど、それも女性同士で組ませるんですよ。
なるほど！確かにおじさんとシェアするのは嫌ですよね。
そうなんです。休憩も昔は「石塚、おまえ休みすぎだぞ！どこ行ってんだ！」みたいだったけど、「いいよいいよ！おつかれさん！」みたいな。
女性が選ぶ仕事としてこの先も伸びていきそうですね。
20代採用の、ひとつの答えがここにあるような気がします。
石塚毅
（いしづか たけし）
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
（やすだ よしお）
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。
