安い理由・高い理由

ユニクロは安くて良い商品である。
だから日本全国で売れた。
全国で売れたことによって価格あたりの品質が高まり、
世界でも戦える“安くて良い商品”になった。

今やユニクロは世界中で売れる
ファストファッションである。
世界で売れれば価格あたりの品質はさらに高くなり、
その地位は不動のものとなっていくだろう。
素晴らしいことである。

だが見方を変えるなら
世界のトップにならざるを得なかったとも言える。
安くて良い商品を売るビジネスは
それほどまでに過酷なのである。

マクドナルドしかり、Amazonしかり、
トヨタ自動車しかり。
世界一を維持することがその使命とも言える。
マーケットシェアを失った瞬間に
事業は立ち行かなくなってしまうのだ。

私が言いたいことはただひとつ。
ユニクロを目指してはならないということ。
ユニクロは買うものであって商うものではない。
すなわち“安くて良い商品”など
売ってはならないのである。

本物の“安くて良い商品”とは
ユニクロレベルの商品だけ。
それ以外は「そこそこ安くて、
そこそこ質の良い商品」でしかない。
半端な商品は売りにくく儲からない。
しかも従業員に安い報酬での過酷な労働を強いる。
いいことなどひとつもないのである。

何度も申し上げているが、
世界一を目指さないのであれば
“売るべき商品”はひとつしかない。
高くて質の良い商品だ。
もちろん高ければいいというものではない。

売れ続ける高い商品とは単なる高い商品ではない。
ある意味それは安い商品なのである。
この品質、この労力、
このこだわりを加味すれば、安いぐらいだ。
他社の商品よりは高いけど決して高くない。
特定の顧客がそう思ってくれる商品。

重要なのは「なぜ高いのか」
その理由を明確にすることである。
私たちはこの部分に徹底的にこだわる。
そのためにはスキルと情熱を持ったスタッフが必要だ。
彼らに適正な報酬と安心して働ける労働環境を
用意することで、この品質は保たれている。
だからこの価格なのだという説明。

残念ながら経営者の99%はこれをやらない。
高いと宣言することで顧客を失うことが怖いからである。
結果、安くてそこそこの商品を売るために、
従業員に過酷な労働を強いるのである。

高いと言えない経営者は、
いずれ従業員から見限られることになるだろう。
社員の努力とこだわりを
きちんとマーケットに伝えること。
それは紛れもなく経営者がやるべき仕事なのである。

 

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