2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第290回「中小企業は役職定年を狙うべし」
60歳を過ぎても働かざるを得ない状態になってきましたね。
そこはもう間違いないでしょう。50歳からちゃんと次のキャリアを考えていかないと。
50代の会社員って実際にはどういう状況なんですか?
50代サラリーマンが全員直面するのは役職定年ですね。役職定年で給料が半分になる。役職給や管理職手当が0円になるから。
全員がそうなるんですか。
ほぼ全員。役職定年になって半分になるか、子会社に出向・転籍させてそこの給与水準に合わせるか。どちらにしても給与を下げるわけです。
そのとき彼らはどうするんですか。転職するのか。自分で起業するのか。
99%は我慢して「とにかく耐える」という選択なんですよ。
なんと。定年まで耐えてしがみつこうと。
その通りです。
それは収入が半分になっても?
そうです。
減った収入分はどうやってカバーするんですか。奥さんが働きに行くとか?
お子さんが何歳かによりますね。
そうか。子供が自立していれば半分でも生活できるから。
ところが今は結婚も出産も遅いじゃないですか。
確かに。50代で高校生の子供がいたりして。
いやいや。中学生いるでしょ。
いますか。
いますいます。下手したら小学校6年生ですよ。
となると、どうやってその差額を埋めるんですか。
現実的には奥さんが働いて埋めることになるでしょうね。
生活レベルを下げるのは難しいですか。
住宅ローンがどうなっているかによりますよね。
日本人はマイホームを買うの好きですからね。
好きですから。みんなローンを組んで家を買うんですよ。
返済期間も長いし。
だからローンがまだまだ残ってる。売って郊外に行くという選択もあるけど。あんまり聞いたことないですね。
転職しても収入が増えるとは限らないし。
いや、転職して成功する事例は増えてきてますよ。
元の報酬まで戻るってことですか?
そこまではなかなかいきませんけど。会社に残っても面白くないわけですよ。モチベーションもないし。だったら自分の強みを買ってくれるところに転職をしようと。
やっぱり元の報酬まで戻すのは難しいですよね。
そこにこだわっていると難しいですね。それよりも自分の持っている能力を使って異業種に挑戦するとか。そういう事例がだんだん増えてきてます。
それって60歳を過ぎた人の話じゃないんですか。50代だと子供の学費もローンも残っているし。
そこは早期退職の割り増しがありますから。「安田さん、今やめてくれたら、退職金1.5倍にします」「2倍にします」って言われたら考えるでしょう。
それは考えますね。家のローンもそれでなんとかなるかも。
家のローンは多分それで消えるんですよ。当座の学費も出せて。あとは夫婦2人でどうやって食っていくのって話ですよ。
なるほど。その時にやりがいみたいなものが出てくると。
そこから何十年もあるから。人生は。
確かに。
役職定年を迎えて「割り増しが出るなら検討する」という層は増えてます。
なるほど。じゃあ役職定年で辞める50代は狙い目ですね。
はい。狙い目です。55前後で酸いも甘いも知ってるような人がいちばん狙い目。いい人材が採れますよ。
今なら選んで採用できるかも。
だって1学年210万人の世代ですよ。その人の得意なことをちゃんと見てあげて「うちとしては精一杯これぐらいでオファーします」って言われたら嬉しいと思います。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。