第290回「中小企業は役職定年を狙うべし」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第289回「大卒はブルーカラーを目指すべし」

 第290回「中小企業は役職定年を狙うべし」 


安田

60歳を過ぎても働かざるを得ない状態になってきましたね。

石塚

そこはもう間違いないでしょう。50歳からちゃんと次のキャリアを考えていかないと。

安田

50代の会社員って実際にはどういう状況なんですか? 

石塚

50代サラリーマンが全員直面するのは役職定年ですね。役職定年で給料が半分になる。役職給や管理職手当が0円になるから。

安田

全員がそうなるんですか。

石塚

ほぼ全員。役職定年になって半分になるか、子会社に出向・転籍させてそこの給与水準に合わせるか。どちらにしても給与を下げるわけです。

安田

そのとき彼らはどうするんですか。転職するのか。自分で起業するのか。

石塚

99%は我慢して「とにかく耐える」という選択なんですよ。

安田

なんと。定年まで耐えてしがみつこうと。

石塚

その通りです。

安田

それは収入が半分になっても?

石塚

そうです。

安田

減った収入分はどうやってカバーするんですか。奥さんが働きに行くとか?

石塚

お子さんが何歳かによりますね。

安田

そうか。子供が自立していれば半分でも生活できるから。

石塚

ところが今は結婚も出産も遅いじゃないですか。

安田

確かに。50代で高校生の子供がいたりして。

石塚

いやいや。中学生いるでしょ。

安田

いますか。

石塚

いますいます。下手したら小学校6年生ですよ。

安田

となると、どうやってその差額を埋めるんですか。

石塚

現実的には奥さんが働いて埋めることになるでしょうね。

安田

生活レベルを下げるのは難しいですか。

石塚

住宅ローンがどうなっているかによりますよね。

安田

日本人はマイホームを買うの好きですからね。

石塚

好きですから。みんなローンを組んで家を買うんですよ。

安田

返済期間も長いし。

石塚

だからローンがまだまだ残ってる。売って郊外に行くという選択もあるけど。あんまり聞いたことないですね。

安田

転職しても収入が増えるとは限らないし。

石塚

いや、転職して成功する事例は増えてきてますよ。

安田

元の報酬まで戻るってことですか?

石塚

そこまではなかなかいきませんけど。会社に残っても面白くないわけですよ。モチベーションもないし。だったら自分の強みを買ってくれるところに転職をしようと。

安田

やっぱり元の報酬まで戻すのは難しいですよね。

石塚

そこにこだわっていると難しいですね。それよりも自分の持っている能力を使って異業種に挑戦するとか。そういう事例がだんだん増えてきてます。

安田

それって60歳を過ぎた人の話じゃないんですか。50代だと子供の学費もローンも残っているし。

石塚

そこは早期退職の割り増しがありますから。「安田さん、今やめてくれたら、退職金1.5倍にします」「2倍にします」って言われたら考えるでしょう。

安田

それは考えますね。家のローンもそれでなんとかなるかも。

石塚

家のローンは多分それで消えるんですよ。当座の学費も出せて。あとは夫婦2人でどうやって食っていくのって話ですよ。

安田

なるほど。その時にやりがいみたいなものが出てくると。

石塚

そこから何十年もあるから。人生は。

安田

確かに。

石塚

役職定年を迎えて「割り増しが出るなら検討する」という層は増えてます。

安田

なるほど。じゃあ役職定年で辞める50代は狙い目ですね。

石塚

はい。狙い目です。55前後で酸いも甘いも知ってるような人がいちばん狙い目。いい人材が採れますよ。

安田

今なら選んで採用できるかも。

石塚

だって1学年210万人の世代ですよ。その人の得意なことをちゃんと見てあげて「うちとしては精一杯これぐらいでオファーします」って言われたら嬉しいと思います。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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