2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第300回「在宅リモートワークの活用法」
石塚さん最近よくおっしゃいますよね。在宅リモートを取り入れたら良い人が採れるって。
そうなんですよ。今まで在宅だった人が週5出社になると辞めちゃうケースが多くて。
コロナ前まで出社してたんだから「出社できるだろう」って言われるそうです。でも出社できない側の言い分もあるでしょうね。
せっかく在宅リモートでうまく回っていたものを、出社しろと言われても困るわけですよ。仕事ができる人ほど在宅リモートで回っちゃうから。
ですよね。新入社員とか自分で管理できない人に出社させるならまだしも。
僕も同じ意見ですけど、基本的には週1は全員リモートワークを認めた方がいいと思う。
ほう。仕事ができる人だけじゃなく、全員?
そこを切り分けるのが大変だし、「週1日でもあれば助かる」って人が多いから。
とくに子育て世代は厳しいみたいですね。フル出社というのは。
そうなんですよ。フル出社と言われた瞬間に辞めざるを得ない。だからまず週1日の在宅リモートを全員に導入して、その次のステップで仕事の評価をして、できる人はどんどんリモートを増やしていいことにする。
それはわかりやすくて良いですね。
分かりやすいですよ。「安田さんはすごく仕事ができるから、もう月曜日だけちょこっと来てくれればいいですよ」って。
とても理にかなってます。だけど実際には「能力に関係なく全員週5出社に戻す」という会社が増えてます。それでは子育て世帯は回らないですよね。
無理ですね。だから優秀な人ほど辞めていきます。
企業としても優秀な人が辞めるのは困るわけで。なぜそんな無茶をするんですか。
リモートだと管理が不行き届きで生産性が上がらないと思っているわけですよ。
社員を信じてないってことでしょうか。
信じてないというより仕事の習慣ですね。ほとんどの仕事が単なる業務だから。細かくマネジメントをする必要がある、常に横でチェックする必要がある、という思い込み。
なるほど。
本当は仕事によってチェックの仕方って色々あると思うんですけどね。
私は人によると思いますね。自己管理できる人には移動の時間が無駄だし、在宅リモートを認めるだけで優秀な人が確保できそう。
実際そうなんですよ。
だけどリモートだと成果の上がらない人がいることも事実で。そっちの方が多いかも。
だから、そこをちゃんと評価する仕組みが重要で。評価制度を作って、評価に応じてリモートワークを増やしていけばいいんじゃないかと思うわけです。
出世して管理職になることを望まない人も増えてるし。仕事ができるようになったら昇進ではなくリモートが認められるようになると。
そう。在宅リモートOKで収入も増えていくとなったら、みんな頑張りますよ。
子育て時期に在宅リモートを増やしたいなら「それまでに頑張ってスキルをつけてください」という制度ですね。
その通り。
そういう制度を取り入れてる会社はあるんですか。
ないでしょう。例外を作ると全部いじらなきゃいけないから。やるなら丸ごと変えていくしかない。
なるほど。
僕は人事制度をかっちり作るのは昔から反対なんですよ。こういう例外に対応できないじゃないですか。「安田さんばかりリモートで不公平じゃないですか」とか言われて。
どうすればいいんでしょうか。
まずは一国二制度みたいな柔軟な考え方を取ればいいんですよ。
一国二制度?
1つの会社に2つ制度があって、どちらにでもスイッチングできる。うちの部署はこっち使うけど、向こうの部署はこっち使うみたいな。
なかなか画期的ですね(笑)
職種とか場面によって厳格な管理をするか自主型にするか。スイッチングすればいいだけ。
もはや在宅リモートは避けて通れないですか。
と思います。僕が聞いている中でいちばん多いのは週2在宅希望。これができるかどうかで人材の質は相当変わるでしょうね。
フル出社で仕事ができない社員を採るよりよっぽどいいと思います。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。