第16回 怖がりな経営者こそ、借金をするべき?

この対談について

大阪・兵庫を中心に展開する、高価買取・激安販売がモットーの『電材買取センター』。​​創業者である株式会社フジデン代表・藤村泰宏さんの経営に対する想いや人生観に安田佳生が迫ります。

第16回 怖がりな経営者こそ、借金をするべき?

安田

藤村さんからは第1回目の対談の時に「安田の影響で多額の借金をした」というお話を聞かせていただきましたよね(笑)。私の言ったままにお金を借りて事業を始めた方なんて、現実にはいなかったので驚きましたよ(笑)。


藤村

いやいや…僕は純粋に安田さんのお話がストンと腑に落ちたので、素直に借金をしただけで(笑)。

安田

なるほど。ちなみに藤村さんは「経営における借金」ってどういうものだと捉えています?


藤村

安田さんの話を聞いてからは、積極的に借金するべきだと思うようになりました。でもやっぱり周りの10人に聞いたら10人全員が「借金なんてしたらあかん。借金は悪やぞ」って言うんですよね。

安田

まぁ、好き好んで借金する人はいないですからね。特に日本人は「借金がないことが重要だ」という感覚が強いですし。


藤村

ええ。実際いろんな人に「そんなに借金してたらダメだよ」と言われ続けましたから。でも僕は安田さんの言葉を信じて、銀行から借りられるだけ借りようと(笑)。

安田

確か、当時の売上2億円に対してトータル1億円の借金をしたんですよね?


藤村

そうそう。最終的にはそれくらいになりましたね。最初に借りたのは500万円くらいでしたけど。

安田

500万円なんて、すぐ使い切っちゃいませんでした?


藤村

そうなんです。3ヶ月もしないうちになくなってしまう。だからまた銀行に借りに行くと「またですか?この前も貸したじゃないですか」って怒られてしまって。そうか、ちょこちょこ借りると怒られるんだなと学びまして(笑)。

安田

それで一度に大金を借りようとしたわけですか(笑)。


藤村

はい(笑)。それで「とにかく銀行から借りられるだけ借りよう。もし怖くなったら返せばいいだけの話や!」と某メガバンクから一気に5000万円借りたんです。

安田

そこが驚きなんですよ。よくそんな大金をポンと貸してくれましたね。


藤村

そこには実はちょっとカラクリがあったんです。その融資、ちょっといわくつきだったというか…。

安田

え、どういうことですか…?


藤村

中小企業に5000万円まで貸す代わりに、特定の金融商品も一緒に買わせる、という融資方法だったんですよ。当時、新聞やテレビなんかでも問題提起されていたんで、もしかするとご存知かもしれませんが…。

安田

あぁ、要は抱き合わせ商法みたいなものですね。じゃあ藤村さんは金融商品も買ったわけですか?


藤村

そうですそうです。だから金利とは別に、ヘッジした損の部分として年間600万円×5年で合計3000万円の損失もかぶりました(笑)。

安田

それはなんというか…ひどいですね(笑)。それでも借金した方が良かったですか?


藤村

はい、それはもう完全に。だって破産寸前だったところに5000万円という大金が入ってくるわけですよ。心にもかなり余裕ができて、社員にもすごく寛容になれましたからね。

安田

そういえば以前の対談でも「お金を借りるまでは、社員を指導しているつもりで実際は憎くて怒っていた」って仰っていましたっけ(笑)。


藤村

ええ、お恥ずかしながら(笑)。自分の不満を爆発させているようなものだったので、当然社内の雰囲気も悪いし、人もどんどん去っていきました。ところが、まとまったお金が入ってきた瞬間に性格まで変わりまして。

安田

藤村さんは借金をしたことで、結果的にすべてが好転し始めたわけですね。では、若い経営者やこれからまさに新事業を始めようと思っている人には借金を薦めますか?


藤村

うーん…そこは人によりけりではありますが、「怖がりな人」は借金してみてもいいかもしれない。

安田

ほぅ、怖がりな人ですか。


藤村

僕自身も怖がりなんですよ。だから最初は「こんな大金借りてしまってどうしよう」と怖くて仕方がなかった。でもだんだんと「そうか、あまりに怖ければ返してしまえばいいんや」ということに体感的に気付くようになる。つまり、実際に借金してみることで、むしろ恐怖を克服できた感じなんです。

安田

なるほどなるほど。確かにその感覚は経営においてすごく重要なことですもんね。


藤村

そう思いますね。でも逆に、大金を手にした瞬間、調子に乗って自分のことに使っちゃうような人はダメでしょうね。全然怖がれない人は、借金なんてしない方がいいんです。

安田

なるほどなるほど、おもしろいですね。ちなみに藤村さんは、今はもう借金はされていないんですか?


藤村

いやいや、今でも借金していますよ。やっぱりキャッシュの力はものすごく大きいと思っているので、できるだけたくさん持つようにしています。

安田

資金があるからこそ、それを商品やサービスに変えることができて、利益も生み出せるわけですもんね。実際、会社経営を上手く回すには、この順番しかないんですよ。まずは資金。それがないと始まらない。


藤村

同感です。何か新しい事業を始めようと決めてから銀行に借りに行っても、必ずしも貸してくれるとは限らないので。まずは「お金を使える権利」を手に入れておいて、そこから事業を練るのもいいのかなと。

安田

なるほど、素晴らしいです。ぜひこれからも積極的に借金をして事業をどんどん大きくする攻めの経営をしていってください。今の日本はまだまだ金利も安いですし。


藤村

頑張ります! ただこれが「金利7%」とかになれば、すぐに返しますけどね(笑)。

 

 


対談している二人

藤村 泰宏(ふじむら やすひろ)
株式会社フジデンホールディングス 代表取締役

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1966(昭和41)年、東京都生まれ。高校卒業後、友禅職人で経験を積み、1993(平成5)年に京都府八幡市にて「藤村電機設備」を個人創業。1999(平成11)年に株式会社へ組織変更し、社名も「株式会社フジデン」に変更。代表取締役に就任し、現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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