給料を増やしたら「税金が最大40％控除」される制度ができました。

じつは前からあった制度なんです。要は法人税額の控除を引き上げるということで。

社員の給料を上げた分だけ安くなるんですか。

前年の給与との比較です。賃上げ税制って個々のチェックは無理なので。全体的に給与水準が伸びてる会社に法人税額の控除をする。

前からあったんですか。

はい。「給与等の支給が増加した場合の法人税額の特別控除」と言います。

長い（笑）たとえば利益が1億出てる企業は40％の4000万円が免税になる？

違います。最終的な法人税の控除ですね。ざっくりいうと30％が法人税ですよね。そこから一定額を控除してくれるってことです。

社員の給料を増やしたら控除してくれるってことですか。

規定を満たしたら決まった金額を控除してくれます。

決まった金額っていくらなんですか。

従業員全体を対象に給与やボーナスの総額が前の年度より1.5％以上増えた場合、「増加額」の15％を法人税から差し引き、2.5％以上増えていれば30％まで拡大、さらに、上乗せ措置として従業員の教育訓練費を前の年度より10％以上増やした場合には控除率をさらに10％追加して最大40％です。

う〜ん。よく分からないですが、一回だけ？

はい。

ってことは、翌年からは全額会社負担で払い続けなくちゃいけない。

翌年またさらに増えれば、その増えた分は控除されますけど。

前年度に増やした分は単年の控除だけで終わりだと。

終わりです。

そんな制度で、どう考えても企業は給料を増やさないでしょ。

ほとんど意味ないんじゃないかって言われてます。

そりゃそうですよ。後で苦しくなることは目に見えてるわけで。

これを目当てに賃上げする会社は1社も見たことないです。

やっぱり。

使えるものは使うけど、これを目的に賃上げするっていう会社は見たことない。

大企業でもやりませんよね。

大企業でも一緒です。だって控除より出ていく金額の方が大きいじゃないですか。1回上げてしまったらもう戻せないわけで。

つまり「賃上げを促進するための政策」にはなってないってことですね。

なってないでしょうね。ただ、そういう雰囲気はありますよ。上げようっていう。

本気で上げたいなら、もっとちゃんとした仕組みを作らないと。たとえば賃上げした分が丸々税金控除になって永久に続くとか。

それだったら上げまくるんじゃないんですか。

税金払うのと同じなら上げると思うんですけど。なぜそうしないんでしょう。

基本的にこういう制度ってパフォーマンスに近いんですよ。

パフォーマンス？

インパクトあるじゃないですか。国は企業に「増やせ増やせ」って言ってくれてるみたいな。

そういう雰囲気を出すため？

そう思います。

せめて国の負担の方が多いとか。7割ぐらいは国が負担してくれるとか。最大70％が3年は続くとか。それならまだ考えると思う。

あるいは社会保険を5％減らすとか。

ほとんどが企業負担でしかも控除は1年だけって。どう考えてもこれで給料が増えるわけがない。

財源とかを考えなければ、所得税を下げるのがいちばん効きますけど。可処分所得が大事なので。

なぜそうしないんですか。

まず社会保険は手がつけられない。

所得税は？

そこはアンタッチャブルです。

ぜんぶアンタッチャブルじゃないですか（笑）

そうなんです。

つまり国は出す気がなくて、会社に出せってことですか。

基本的に賃上げ税制というのは、頑張ってる会社に対して報いてるだけですから。

本当に賃金を増やすにはどうしたらいいんですか。

最低賃金を上げることでしょうね。

消費税をなくしたら「消費が増えて給料が上がる」と言ってる人もいます。

消費税はじつは平等な税制なんです。お金をたくさん使ってる人はたくさん消費税を払ってるので。

じゃあ所得税を減らすとか。

所得税って下のほうの人はほとんど払ってないんですよ。

つまり最低賃金を上げるしかないと。

はい。下を上げると上も上げざるを得ないですから。

「あいつと一緒なのか」みたいになりますもんね。

キャリアのある人が辞めちゃいます。だから最低賃金が50円上がるとみんな一気に50円上がっていきます。

だったら最低賃金を1500円ぐらいに上げればいいのに。

それだと地方がもたないです。島根県とか。

島根だけ安くするとか。

島根から人がいなくなっちゃいます（笑）