顧客をシェアする

同じ地域、同じ業界に属する企業は、
互いに顧客やマーケットを奪い合う。
限られたパイを、どちらがより多く獲得するのか。
生き残るためには、成長せねばならない。
成長するためには、拡大せねばならない。
そして拡大するためには、
他社の顧客やマーケットを、切り崩すしかない。

経営者同士が仲良くしている競合関係もあれば、
社員も含めて全員が、
いがみ合っている競合関係もある。
だが何れにしても、
表面的にどれだけ仲良くしたとしても、
最終的には競い合うしかない。
なぜならば、パイは限られているから。
そして、存続するためには、
成長せねばならないからである。

だがこの図式は、働き方の変化とともに、
劇的に変わる可能性がある。
顧客を奪い合う関係から、顧客をシェアし合う関係へ。
顧客を奪わず、囲い込まず、同業者に気前良く紹介する。
それが新しい社会システムにおける、
成長戦略の柱となるのだ。

システムの変化は、働き方改革によって、もたらされる。
だがそれは、今言われているような改革ではない。
残業を減らしても、生産性は上がらない。
単に、従業員の報酬が減るだけだ。
無理に報酬を増やそうとすれば、
企業の側が保たなくなる。
もはや効率化は、限界まで来ているのである。

望む、望まないに関わらず、
会社と従業員の関係は、変わらざるを得なくなる。
終身雇用も、年功序列も、固定報酬も、社会保障も、
維持出来なくなる事は明白だ。
結果、優秀な人材は、どんどんフリーランスになる。

得意なことだけを仕事とし、複数の会社と契約する。
どう考えても、それが自然な流れなのである。
得意なことに特化すればするほど、
生産性は上がり、報酬は増える。
これが本当の、働き方改革なのだ。
そしてその時、同業者との関係性は、
競争からシェアに変わる。

企業と違い、個人で受けられる仕事量には限界がある。
そして、こなせる仕事の範囲は、ぐっと狭くなる。
そこで重要なのは、顧客の数ではなく、質なのだ。
より自分が得意な、
よりニッチな仕事を依頼してくれる顧客。
では、自分が最も得意とする、
自分ニッチな顧客を増やすには、どうすれば良いのか。

その答えが、顧客のシェアなのである。
顧客を自分だけで囲い込まないこと。
顧客からの依頼を、独占しないこと。
自分の得意分野でない依頼は、
それを得意とする同業者に紹介する。
もちろん、紹介手数料など、取ってはならない。
受け取るべきは手数料ではなく、別の紹介だ。

ひとりで5人の顧客を抱え込むのではなく、
20人で100人の顧客をシェし合う。
それぞれが、最も得意とする仕事に集中する。
そうすることによって、生産性は上がり、
顧客の満足度は高まり、報酬は増える。

全ての始まりは、ギブすることにある。
まず、損得を抜きにして、顧客を紹介する。
ギブする人の周りには、どんどん人が集まって来る。
人が集まり、顧客をシェアし合えば、
より自分ニッチの仕事が、増えていくのである。


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