「日本一高いポスティング代行サービス」を謳う日本ポスティングセンター。依頼が殺到するこのビジネスを作り上げたのは、壮絶な幼少期を過ごし、15歳でママになった中辻麗(なかつじ・うらら)。その実業家ストーリーに安田佳生が迫ります。
第79回 経営者自ら求人を書くから、狙いどおりの人がくる
マメノキカンパニーさんって、本当に採用に困りごとがないですよね。募集をかければ人が大勢集まるって。この採用難の時代に「なんでそんなことが可能なの?」って羨ましく思う経営者さんも多いと思いますよ(笑)。
あはは(笑)。ありがたいことですね。
だから今日は、中辻さんがどうやって採用をしているのか、その秘密に迫らせていただきます!(笑) そもそも中辻さんはどのように求人を出していらっしゃるんですか?
ウチは毎回『Indeed』で出しているんですが、求人広告の内容は全部私が書いています。
ほう。広告会社にお任せではないんですね。フォーマットに合わせて書いていく感じですか?
いえ、完全に自作です。というのもフォーマットって「職種」「時間」「給料」「勤務地」みたいな「概要」しか書けないじゃないですか。
採用条件ですね。でも求人広告ってほとんどそんなもんですよ?
ええ。でもそれだと応募する側も「条件」でしか判断できませんよね。「この会社はどんな会社なんだろう」って知りたくても、条件しか書いていなければ比較検討の余地すらないんですよ。
あぁ、なるほど。だから紙媒体の求人広告だと、大きな枠で目立つ広告を出している企業にばかり応募が殺到するのかもしれないですね。会社で選んだというより「目に留まったから」応募した、というように。
そうなんですよ。でもIndeedって文章をたくさん書けるから、条件だけじゃなくて「どんな人を募集しているか」とか「会社の強み」とか、伝えたいことが全部書けるんです。しかも広告費は自分で設定できるので、5,000円からでも配信できるんです。
そんなに安いんですか! 求人の代行会社に頼むと1ヶ月7〜8万円はかかりますよ。
ええ。しかもほとんどの場合「パッケージ販売」なので、もしすぐに採用できたとしたら、その後の広告費は無駄になっちゃうんですよね。
あ、Indeedだと採用が決まったら求人広告も下げられるんですか?
そうですそうです。そうやってウチではだいたい1万円以内の広告費で、採用できています。
それは素晴らしいですよ。やっぱり中辻さんは「自分の会社のカラーに合う人」の解像度が高いんだと思います。そしてそれをきっちりと相手に伝える努力をされていらっしゃるからこそ、確実な採用につながるんでしょうね。
ありがとうございます。でも普通に考えたら、条件だけ並べられている求人広告を見ても会社の雰囲気なんて全くわからないですよね。私自身も過去に、片っ端から応募してようやく面接にこぎつけて、いざ会社に行ってみたら「思ってたんと違うな…」って経験、たくさんありますし(笑)。
「面接あるある」ですね(笑)。じゃあ中辻さんは応募者にそういう思いをさせないために、どんなことを求人広告に書くようにしているんです?
とにかく「どんな会社なのか」をしっかり伝えるようにしています。例えば「ウチはチームワークや輪を大切にしています。だから協力してお仕事できない方や、陰口を言うような方には向いていません」とか。
どういう人が「向いていない」のかがわかるのはいいですね。少しでも心当たりがあれば応募しづらいですもんね(笑)。
そうそう(笑)。あとは「社長の顔が見える会社です」ってことも絶対書きます。「まだ発展途上の会社だからこそ社長と距離も近く、みんなで会社を作り上げているところなので、ぜひその仲間に入ってください」みたいな感じで。
なるほど。ちなみに給与面とか福利厚生とか、そういう部分については大々的にアピールしない方がいいんでしょうか?
職種によると思います。資格が必要なお仕事だったら「経験年数があれば給料アップします」とか「資格手当はこれだけつけます」とか言った方がいい場合もありますよね。ただウチの場合、会社の雰囲気に合うかどうかを最重視しているので、そういうことの方が詳しく書いていますね。
どういう人が多く働いていますよ、みたいなことを知らせるんですね。
ええ。特にウチの場合は女性ばかり採用しているじゃないですか。だから応募前に「女ばっかりの職場っていじめとかありそう…」なんて思われる可能性も無きにしもあらずなので(笑)。そういう不安を払拭できるようなことは、できるだけ細かく書くようにしています。
「我が社に派閥はありません」って?(笑)
そうそう(笑)。「全員仲良く和気あいあいとしています」みたいな(笑)。とにかく「この求人は経営者自身が書いている」ということをしっかり伝えることで、「経営者がこういう考えなんだったら、きっと会社も大丈夫だろうな」って感じていただきたいと思っています。
ははぁ…やっぱり「経営者が求人を書く」のがいいんですね。だから採用に困っている会社は、社長自身が筆を執り、自分の会社にはどんな人が向いていて、どんな魅力があるのかということを書いて、Indeedで安く出してみればいいと。
仰るとおりです。なんなら無料でも出せますから。絶対オススメ(笑)。しかもそれをすると、面接に来てくれる人の大半が「会社として求めている人材」ばかりになりますよ。
素晴らしい。でも思い返してみたら、中辻さんは最初から求人の書き方がうまかったですもんね。
私がまだペイント王にいた頃に書いた求人ですよね? 試しに書いたものを安田さんに褒めていただけてめっちゃ嬉しかったのを覚えてますよ(笑)。
本当にお上手でしたからね。しかもあの求人もしっかり結果が出て、ちゃんと採用できましたもんね?
ええ、狙い通りの人たちからの応募がいっぱいきました。私、あれで自信がついたっていうのもあるかもしれないです(笑)。それで、そこからずっと求人は全部自分で出して、自分で管理するようにしています。
いやぁ、素晴らしい! 広告会社の言いなりになって求人広告を出している経営者の方がいらっしゃいましたら、ぜひ中辻さんを見習って、「自分で書いた求人広告」を出してみるといいかもしれませんよ。
対談している二人
中辻 麗(なかつじ うらら)
株式会社MAMENOKI COMPANY 専務取締役
1989年生まれ、大阪府泉大津市出身。12歳で不良の道を歩み始め、14歳から不登校になり15歳で長女を妊娠、出産。17歳で離婚しシングルマザーになる。2017年、株式会社ペイント王入社。チラシデザイン・広告の知識を活かして広告部門全般のディレクションを担当し、入社半年で広告効果を5倍に。その実績が認められ、2018年に広告(ポスティング)会社 (株)マメノキカンパニー設立に伴い専務取締役に就任。現在は【日本イチ高いポスティング代行サービス】のキャッチコピーで日本ポスティングセンターを運営。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。