千人にひとりのビジネス

日本には中小企業が多い。多すぎるとも言われている。その割合はなんと99.6%。スケールメリットで勝負できる会社は0.4%しかないのである。ここに円安による原材料費アップと少子化による人件費高騰が加わってくる。大企業では初任給30万円が当たり前。年単位の育児休暇も当たり前になっていく。

この過酷な環境下で生き残れる中小企業は何%あるのだろうか。これまでと同じ経営をしていたのでは利益が出ない。働き手が確保できない。これは確実な未来予測である。しかも何十年先の話ではない。事業を継続していくのなら一刻も早く経営者は決断しなくてはならない。現状維持は許されないのである。

とことん大きくしていくか。大きな会社に売却するか。あるいは廃業するか。普通に考えればこの3つの選択肢しか残らない。しかし、そのどれでもない新たなカタチの中小企業が増えていくと私は予想する。それは千人にひとりの絞り込みによって生まれる高収益型スモールビジネスである。

まず顧客対象を千人にひとりに絞り込む。百人にひとりでは絞り込みが甘すぎる。1万人にひとりではターゲットが少なすぎる。千人にひとりだけに強烈に刺さる商品やサービス。ここに特化するのである。ここまで絞り込むとターゲットに情報が届きやすくなる。マーケティングコストも最小限に抑えられる。

1億人の1000分の1は10万人。しかしターゲットにならない年齢層もいる。もれなく全員に情報を行き渡らせることも不可能だ。無理なく繋がれるのは10人にひとりというところだろう。つまり繋がるべき人数は10万人の10分の1で1万人となる。こことしっかり繋がることができればビジネスは安泰だ。

1万人の中には顧客、見込み客、そしてコンセプトに共感する大勢の人たちがいる。重要なのはこの共感者の存在である。たとえ顧客にならなくても彼らは情報発信を支えてくれる貴重な存在だ。さらに彼らの中から「ここで働きたい」という人が出てくる。顧客と社員の境目が曖昧になっていくのである。

1000分の1とは周りを見渡しても同種がいないレベルの確率である。だから仲間意識が非常に強い。徹底的にそこに寄り添うことで関係性はさらに強化される。高くてもここで買いたいという人が顧客となり、他と同じ条件でもここで働きたいという人がスタッフとなる。これが千人にひとりのビジネスモデル。

 

 

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