楽しむセンス

タイム・イズ・マネー(時は金なり)。
この言葉にどこか違和感を覚えないだろうか。
「時間を無駄にしてはいけない」
という主張には賛同する。
だがその基準がマネーであることに違和感を覚える。
そういう人が増えていると感じる。

これは時代の空気のようなものである。
大きいことはいいことだ。24時間働けますか。
このような言葉に違和感を覚えるのも時代の流れだ。
今の時代に合わせるならタイム・イズ・ライフ
といったところだろうか。時は人生なり。時は命なり。
こちらの方がしっくりくる。

つまり空気が入れ替わったのである。
経営者はこの変化に敏感でなければならない。
なぜなら私たちは人間を相手に商売をしているからだ。
空気の変化はそれを呼吸する人間にも変化をもたらす。

時間がもったいない。
だから無駄にしてはならない。
こう考える経営者は多い。
問題はその対処法である。
たとえば歩く速度。

「もたもた歩くのは時間の無駄だ」と感じるなら
タイム・イズ・マネーの空気で生きている。
タイム・イズ・ライフの空気なら
歩いている時間を楽しもうとする。
なぜなら歩いている時間も人生の一部だからである。
それを楽しまないのは時間の無駄だ。

旅先でもこの差は顕著に現れる。
時間がもったいないからと分単位で予定を詰め込む人と、
ゆったりと過ごす時間を大切にする人。
呼吸する空気が違うから無駄の定義も違う。

なぜ若者は車を欲しがらないのか。
なぜブランドを身につけないのか。
なぜもっと稼ごうとしないのか。
それは彼らにとって無駄だからである。

もっと頑張れ。もっと上を目指せ。
そう言われてもやる気が出ない。
もっと欲しがれ。もっといいものを身につけろ。
そう言われても購買意欲がわかない。
そんなことのために貴重な時間を費やしたくない。
これが今の時代の空気なのである。

なぜもっと頑張らないのか。
なぜもっと欲しがらないのか。
そう嘆いてみてもしょうがない。
頑張って働いてほしいのなら、
何かを買ってほしいのなら、
彼らと同じ空気を吸ってみることである。

まずはゆっくり歩いてみてはどうだろう。
規模を拡大することをやめ、
売上を増やすことをやめ、
社員を管理することをやめる。

じゃあ何をすればいいのか。
楽しめばいいのである。
業績アップではなく仕事そのものを楽しむ。
目的地に到達する速さではなくそこに至る景色を愛でる。
人生を楽しむセンスがビジネスの成否を分ける。

 

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1件のコメントがあります

  1. 上記の通りだと思います。楽しく仕事を取り組んでいます。
    タイム イズ ライフ&マネーというところでしょうか!

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