「遊んでいるかのように働きたい」をモットーに、毎日アロハシャツ姿で働く“アロハ美容師”こと岩上巧さん。自身が経営するヘアサロン「mahaloco(マハロコ)」には、岩上さんしか実現できない<ココロオドル髪型>を求め多くのお客様が訪れます。その卓越したビジネスセンスの秘密に、ブランディングの専門家・安田佳生が迫る対談企画です。
第50回 美容師の最新独立事情とは

確かに美容師は、他のお仕事と比べても独立する人の割合は比較的高いですね。もちろんそれぞれ理由は違ったりするんでしょうが、前提としてこの業界自体が「生涯雇用」をそもそも想定していないんですよね。

そうそう。その上で評価制度とかキャリアプランとかもしっかり考えられていて、要するに「できるだけ長く働ける」システムが整っているわけです。それに部署異動とか転勤とかで付き合う人間の変化もあるから、なんというか定期的にリフレッシュできるじゃないですか。

そうそう。もちろん店ごとに差はあるでしょうけどね。でも基本的に美容師って同じお店・同じスタッフ・ほぼ変わらない固定客、という環境の中で働いていて、あまり変化を感じられない。それは待遇面でもそうで、目に見える昇格や昇給がないんですよ。

もちろんアシスタントの状態からどんどんスキルをあげていって、お客様を担当できるようになって…というステージの変化はあります。でも、一旦スタイリストになってしまえば、それ以降は劇的な変化ってなかなか起こらない。これは本人の努力云々ではなく、構造的にそうなんです。

ふ〜む、なるほど。確かにアシスタント時代は「スタイリストデビューする」というわかりやすい目標がありますもんね。でもいざそれを達成してしまうと、次の目標は見つけづらい。仮に見つかっても、その受け皿がないと。

そうなんです。もちろん「もっと売上をあげたい」とか「客数をアップしたい」というモチベーションで頑張る人はいるんです。でも、そういう思考の人ほど、「じゃあもう自分でやった方がよくないか」となるわけですよ。

ああ、そりゃそうだ。同じお店で雇用されながらやるより、自分で全部やった方がいいですもんね。ちなみに独立後の働き方はどういったものがあるんですか? やはり皆さん、自分のサロンを構えるんでしょうか?

最近だと「シェアサロン」で働く方が爆発的に増えていますね。

ああ、聞いたことがあります。それっていわゆる「面貸し」みたいなものですか?

そういう見方もできますが、フリーランスになったことで「お店に拘束されなくなる」というメリットはありますね。自分が施術する時だけ行けばいいので、時間も休みも比較的自由になります。その日に予約されているお客様が終われば帰っていいし、休みたい日には予約を入れなければいいので。

いや…実はそうでもないんです。手に入る額面は大きくなりますが、そこから場所代だ材料費だといろいろ引かれていくんですよね。だから「結局社員時代の手取りとあまり変わらない」って言う話もよく聞きます。

なるほど〜なかなか難しいですね。ちなみにお店としては、美容師が独立していってしまうことはどう考えているんでしょう? 例えば独立できるほどの実力がある美容師さんって、言ってみればそのサロンの稼ぎ頭なわけでしょう?

そうですねぇ。特に最近は顕著です。そもそも美容師側が、「いつかは管理職になって、次に出す店舗の店長になるぞ!」みたいなことを思わなくなっている。わかりやすい言い方をすれば、出世を目指す若い子がほとんどいないんですよ。
対談している二人
岩上 巧(いわかみ たくみ)
アロハ美容師/頭髪改善特許技術発明者/パーソナルブランディングプロデューサー/株式会社 OHANA 代表
美容専門学校卒業後、都内のサロンに就職するも、オーナーと価値観の違いから大喧嘩し即クビに。出身地である水戸に戻り実家の美容室で勤務しながら技術を磨き、2008年自身のヘアサロン「mahaloco(マハロコ) 」をオープン。結婚式のプロデュースやイベント企画なども行うパーソナルブランディングプロデュースサロンとして人気を博す。2014 年、髪質改善技術「美髪矯正 hauoli®(2021 年特許取得)」を開発。「まるでハワイで暮らしているように」をテーマに、毎日アロハシャツを着、家族・仲間・お客様と共にハワイアンライフを満喫中。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。