第58回 顧客がお店を離れた後も良好な関係性が続く秘密

この対談について

「遊んでいるかのように働きたい」をモットーに、毎日アロハシャツ姿で働く“アロハ美容師”こと岩上巧さん。自身が経営するヘアサロン「mahaloco(マハロコ)」には、岩上さんしか実現できない<ココロオドル髪型>を求め多くのお客様が訪れます。その卓越したビジネスセンスの秘密に、ブランディングの専門家・安田佳生が迫る対談企画です。

第58回 顧客がお店を離れた後も良好な関係性が続く秘密

安田

以前の対談で、お客さんに「信頼関係を築くためのコミュニケーション」と「課題を解決するためのコミュニケーション」を、うまく切り替えながらやっていくのが大事だと仰ってましたよね。


岩上

そうでしたね。のんびり天気の話をしていたのに、突然営業モードになって商品を売り込んでもうまくいかないですよ、と(笑)。

安田

そうそう(笑)。岩上さんはそこの切り替えがお上手なんだと思うんですが、なにかコツってあるんでしょうか?


岩上

うーん、答えになるかはわかりませんが、お客様やスタッフとコミュニケーションがうまく取れていたかどうかがわかるのって、実は「お店を離れた後」だと思っていまして。

安田

ほう。つまり、スタッフが辞めた後や、お客さんがお店に来なくなった後ということですか?


岩上

そうです。その後の関係性こそが答え合わせになるんですよ。変わらず良好な関係が続いたなら、それは「コミュニケーションがうまくいった証」だと思っていて。

安田

へぇ〜。でも普通に考えて、雇用関係がなくなった社員や、別のお店に通うようになったお客さんと、変わらず付き合いが続くことなんてあります? 普通は途切れてしまうでしょ。


岩上

そういうケースが多いんでしょうけどね。でもウチって辞めていった人がとにかく集まるお店なんです(笑)。毎年12月になると、僕の母の誕生日会をするために、昔働いていたスタッフがみんな集結したりする(笑)。

安田

そうなんですか! それはすごい(笑)。


岩上

そういう風景を見ていると、彼らとは商売やビジネスを超えて人間関係が作れていたんだなぁと嬉しくなります。

安田

なるほどなぁ。でもお客さんはどうです? さすがに他店に移ったお客さんはお店に来ないでしょ?


岩上

いえいえ、実はそんなこともなくて。遊びに来てくださる「元お客さん」も大勢いますよ。

安田

そうなんですか! でもそれってちょっと微妙な気分じゃないですか? 「どうせウチに来るならそのままお客さんでいてよ」ってなりそうなもんですけど(笑)。


岩上

笑。例えば、カラーやカットは別のお店だけどハウオリだけをウチでやっているお客様とか、最初は親子揃っていらしていたけど、今はお子さんだけ通っているとかも多いんですよ。

安田

あ〜なるほど。そういうケースもあるわけか。でも、本人も家族も誰一人お店には来なくなった場合は、さすがにもう繋がりも切れるでしょ?


岩上

いや、それがそうでもないんですよ。ちょうどこの前もショッピングモールのフードコートで、昔のお客様に「タクミさん、お久しぶりです!」って声をかけられまして。そういうことは割と頻繁にあるんです。

安田

へぇ〜、すごい。印象が悪かったらわざわざ自分から声をかけたりはしませんもんね。


岩上

ありがたいですよね。ただ大変失礼ながら、僕がその方のことを覚えていなくて…(笑)。「誰が担当でしたか?」ってお聞きしたら「タクミさんですよ」って言われちゃいました(笑)。

安田

なんと(笑)。


岩上

なんとも不躾なことをしてしまったんですけど、その方は笑顔で「またそのうちお店に行きますね」なんて言ってくれて。どうしてそんなにナイスに接してくれるんだろうと考えたら、きっと僕はそのお客様といいコミュニケーションが取れていたんだなと。

安田

なるほどなぁ。でもどうやったらそんな関係性が作れるんですか? 答え合わせは「離れた後」だとしても、やっぱり付き合い方に何かコツがあると思うんですよ。


岩上

そうだなぁ。たぶん「お客様としてのコミュニケーションだけ」を取っていたら、こういう関係性は築けないのかなと思うんです。最初の話で言えば、「課題を解決するためのコミュニケーション」ばかりでは、やっぱりどこかで関係性は終わってしまう気がしますね。

安田

そうか。きっと岩上さんは、単なる「客」ではなく「1人の人間」としてコミュニケーションをとっているからこそ、そこに信頼関係が生まれるんでしょうね。つまり「お客さんとしての関係性」が終わっても「人同士の関係性」が続くと。


岩上

ああ、まさにそういう感じなんだと思います。スタッフにしろお客様にしろ、まずは人と人との関係性。そこを理解することが、もしかしたら「コツ」なのかもしれないですね。

安田

なるほどなぁ。岩上さんのコミュニケーション論、とても興味深いです!


対談している二人

岩上 巧(いわかみ たくみ)
アロハ美容師/頭髪改善特許技術発明者/パーソナルブランディングプロデューサー/株式会社 OHANA 代表

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美容専門学校卒業後、都内のサロンに就職するも、オーナーと価値観の違いから大喧嘩し即クビに。出身地である水戸に戻り実家の美容室で勤務しながら技術を磨き、2008年自身のヘアサロン「mahaloco(マハロコ) 」をオープン。結婚式のプロデュースやイベント企画なども行うパーソナルブランディングプロデュースサロンとして人気を博す。2014 年、髪質改善技術「美髪矯正 hauoli®(2021 年特許取得)」を開発。「まるでハワイで暮らしているように」をテーマに、毎日アロハシャツを着、家族・仲間・お客様と共にハワイアンライフを満喫中。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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